第6回 「450Mbps対応ルータ」に速度差はあるか──実速度ベンチマークテスト「5GHz帯無線LANルータ」導入のススメ(3/3 ページ)

» 2011年12月01日 14時00分 公開
[坪山博貴,ITmedia]
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実利用時テスト:地点C

photo 地点Cでの実速度テスト

 地点Cは、地点Bよりさらに距離を離した場所での計測となる。こちらは例えば同じマンションでも奥の部屋、あるいは階上の部屋で使用するシーンとなる。

 ここまで親機との距離が離れると、最大値は地点A、Bより落ちる傾向が目立ってくる。ただ、5GHz帯はまだ優位なようだ。ここでもAtermWR9500N×2の組み合わせがトップで、約104.8Mbps(13.1Mバイト/秒)を記録、LAN-WH450N/GR+LAN-W450AN/U2の組み合わせも95.2Mbps(11.9Mバイト/秒)を維持している。

 また、トップ4の値においては、同一メーカー同士の組み合わせがとくに高速だ。こちらは、それぞれメーカーで真っ先に検証するであろう組み合わせのためにある予想できるといえるが、改めて興味深い結果と思う。450Mbps対応モデルを導入するならどうするか、ある程度の指針になるだろう。なお、受信のみ450Mbpsに対応するWN-AG300EAは(同一メーカーの親機がまだ存在せず、かつコンパクトなボディサイズも不利になるのか、)値こそそこそこだが、親機に450Mbpsモデルを用いればこれまでの300Mbps通信より確実に高速になる。AV機器用としてイーサネットコンバータを単体導入したいシーンなどにおいて評価ポイントの1つにしたい。

 一方、2.4GHz帯はここまで距離が離れても、5GHz帯より速度落ち込みの幅が小さい(速度低下が起こりにくい)。こちらは“周波数帯が低いほうが電波が届きやすい”特性が有効に表れており、結果として5GHz帯の値と速度差がかなり縮まっている。また、300Mbpsモデルと450Mbpsモデルの差もはっきりと表れてくる。300Mbps対応のAtermWR8600Nは(有線LANが100BASE-TX準拠という点を差し引いても)、450Mbps対応AtermWR9500Nとの差がかなり開いてしまった。

photophoto AN-WH450N/GR+LAN-W450AN/U、AtermWR8600N+WL300NE-AG

実利用時テスト:地点D

photo 地点Dでの実速度テスト

 地点Dは、もっとも離れ、障害物の多い場所でのテストだ。ここまで離れると、古いIEEE802.11b/g接続では通信自体がもはや不安定になる場所となる。戸建て住宅で、親機は階下のリビングルーム、子機は階上のプライベートルームなどで使うシーンが当てはまる。

 ここでも450Mbps対応モデル同士の組み合わせが上位だったが、最大値はかなり落ち込んだ。とはいえ、IEEE802.11nはアンテナが重要だとあることも印象付ける結果にもなった。良好な値を示したAtermWR9600Nは、親機と子機が同じもので、アンテナ性能・特性も同じと想定できる。アンテナ内蔵型ながら、それぞれの送受信能力の高さが生んだ結果と思われる。

 離れた場所にてメリットが出てくる2.4GHz帯については、平均値でLAN-WH450N/GR、およびWZR-HP-G450Hと組み合わせたテストが良好だった。これらの共通点は大きな外部アンテナを持つこと。これが2.4GHz帯では特に有効に機能したのだろう。電波による無線通信は、周波数が低いほど(波長が長いため)基本的にアンテナを大きく(長く)する必要があり、さらにIEEE802.11nでは(MIMOのため)アンテナ間隔も広く取る必要がある。長距離で使うシーンで(5GHz帯より)有利とされる2.4GHz帯において、大きな外部アンテナが5GHz帯よりも有効に機能した結果と思える。

 ちなみに、5GHz帯/2.4GHz帯ともに最大300Mbps対応のイーサネットコンバータWL300NE-AGは、すべての親機との組み合わせで5GHz帯の親機を用いるほうが値が良好だった。こちらについて、一般に障害物や長距離に対しては2.4GHz帯の方が強いとされ、リンク速度も2.4GHz帯の方が高くなる場合は多い。ただ今回の検証では(ほかの人の、外から入ってくる)スマートフォンや携帯ゲーム機、その他2.4GHz帯を使う家庭機器(電子レンジなど)など、ほかの機器の電波干渉が影響したため、揺らぎが大きかった。これだけユーザー数が増えているとなると、5GHz帯で利用できる機器は「できるだけ5GHz帯を積極活用する」のが、今後のかしこい無線LANの使い方になるといえそうだ。


photophoto WZR-HP-G450H+WLI-UC-G450とWN-AG300EA

パフォーマンス重視でルータを買い換えるなら「5GHz帯+450Mbps対応」がベター

photo  

 結果として、4つの計測地点のすべてで5GHz帯の450Mbps対応モデルの組み合わせで良好な結果が得られた。もちろん、もっと広い住宅で使用するならば少し違う値となる可能性はあるが、距離が離れるとどうなっていくか──の傾向はおおむね変わらないと思われる。300Mbps対応モデルに対してカタログ値1.5倍の差こそ出なかったが、子機に300Mbps対応モデルを用いてもそこそこの差が表れたことから、そのポテンシャルの高さは伺えたといえる。

 やはり、これから買うなら、親機も子機も両方450Mbps対応にするのがベターではないだろうか。もちろん、どちらか一方が450Mbps対応モデルであってもいくらかの通信速度向上が確認できた点にも注目してほしい。450Mbps対応モデルは、3つの電波を処理するためにアンテナの送受信能力や内部処理能力の向上も果たしているはずであり、結果として両方が450Mbps対応出なくてもより高速な通信が可能になっていると想定できる。例えば最高速度が100キロメートル/時のクルマと150キロメートル/時のクルマにおいて、100キロメートル/時で巡航するならどちらが安定して走行できるか、そんな例えが当てはまるだろう。

 この結果から、速度の高さ、安定性を望む層なら、これから買うなら450Mbps対応モデルを──という考え方は正解だ。また、450Mbps対応モデルの組み合わせは、(誤差範囲の結果だったものもあるが)同一メーカー同士のものを選ぶのが無難だと思われ、それならどんな用途向けに選ぶのがいいか、ある程度の指針が見えたと思う。

 次回は、450Mbps対応モデルに向く用途、利用シーンの1つである「テレビ・レコーダー」を含めた家庭内ネットワーク構築のポイントを探る予定だ。





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