個人向け電子出版のスタンダードへ、「一太郎」「ATOK」最新版EPUB 3.0対応

» 2011年12月09日 12時00分 公開
[ITmedia]
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日本語のあらゆる表現をカバー、EPUB 3.0にも対応

 ジャストシステムは12月8日、日本語ワープロソフトの最新版「一太郎2012 承」と、日本語入力システム「ATOK 2012」を発表した。標準パッケージの価格は順に2万1000円、8400円。2月10日に発売する。

 一太郎シリーズは、2011年版の「創」からバージョンを象徴した1字をつけるという命名規則を採用しているが、2012年版の「承」では「承は受け継ぐという意味を持つ。美しい日本語の文化を未来へと受け継いでいく意志を込めた」とし、ユーザーインタフェースを改良するとともに、日本語表現に関する機能を強化したのが特徴だ。

 具体的には、メイン画面の右側に各種ツールパレットを用意し、目次・索引などを設定できる「文書編集パレット」や、古典文学やなどで使われる特殊な文字を入力するための「文字パレット」、文字数などを基準に文章量を設定して達成度を視覚的に把握する「文字数パレット」などを切り替えて利用できるようになっている。同社コンシューマ事業部企画部の大野統己氏は「日本語独特のドキュメントの特性を検証し、もともと一太郎の持っていた機能を再設計した部分もある。日本語のあらゆる表現をカバーしようと取り組んだ」と最新版のコンセプトを説明する。

メイン画面の右側にツールパレットを用意した新UIを採用(写真=左)。文書編集パレットでは、脚注や索引、章立て用の連番などを設定できる(写真=中央/右)

文章量を文字数や原稿用紙の枚数で設定し、達成度を視覚化する文字数パレット(写真=左)。古典の準仮名や漢文の返り点、異体字などを入力するための「文字パレット」(写真=中央)。原稿用紙のマス目や色をカスタマイズする「原稿用紙カスタマイズ」では、名入れも可能に(写真=右)

 そしてもう1つの目玉がEPUB 3.0のサポートだ。電子書籍用のファイルフォーマットであるEPUBは、バージョン3.0で縦書きやルビ表記に対応するなど日本語向けの表現が拡張されているが、一太郎2012ではメニューからEPUB形式での保存が用意されている。また、これにあわせて、電子書籍の出版・販売サービス「パブ−」を展開するpaperboy&co.と協業し、個人が手軽に電子出版を行える環境を提供していく。「個人向け電子出版のスタンダードを目指す」(大野氏)。

ファイルメニューからEPUB形式で保存できる。非常に簡単(写真=左)。タイトルや著者名、表紙のデザインも設定可能(写真=中央)。EPUB 3.0に対応するビューワーなら縦書きやルビといった日本語の表現も問題なく表示される(写真=右)

paperboy&co.と協業し、個人が手軽に電子出版を行える環境作りを目指す(写真=左)。paperboy&co.取締役副社長の吉田健吾氏。パブーに登録されている書籍数は1万9000冊を数え、ジャンルでは小説が最多。このため縦書きやルビなどの日本語表現に関する要望が多いという。「小説は長文になるため、(EPUB形式の文書作成には)文書作成補助機能がある一太郎を使うのがいいと思う。個人の電子書籍はまだ始まったばかりだが、こうした取り組みを通じて広げていければ」(同氏)。EPUB 3.0で日本語機能拡張に関わった、国際大学グローバル・コミュニケーションセンターの村田真氏もゲストとして登壇した。「EPUBを作成するツールは世界中で競争している状況。Webベースのツールなどもあるが、みなが慣れ親しんでいるワープロの延長からのEPUB対応はEPUBの発展にとって極めて有益だと思う」と語った(写真=右)

新しい推測変換エンジンを搭載、“旬”な単語を配信する機能も

 一方のATOK 2012は、推測変換機能の強化として新たに「ASエンジン」(Advaced Suggestエンジン)を搭載したのがトピックだ。ASエンジンでは語い空間を拡大したほか、人名や地名、四字熟語の推測変換にも対応。さらに、入力確定後も前文節の文字列に応じた推測候補を提示するようになった(例えば、「液晶」を確定後に続けて「ディスプレイ」「テレビ」などが提示される」。この「モバイルをしのぐ予測変換」(同社)はキーボード操作に慣れていない若い世代を考慮したものという。

 また、候補の表示順が従来は単語の長さに依っていたが、最新版では頻度情報を元に表示されるようになったほか、「ここではきものをぬいでください」(ここで履き物を脱いで下さい/ここでは着物を脱いで下さい)のように、文節の区切りで変換候補が変わる場合は、別区切りの候補が0で表示されるようになった。「ATOK 2012はたくさんの言葉を持ち、簡単で、かつ間違いなく入力できる」(同社)。

 クラウドと連携した「ATOKキーワードExpress」も目を引く新機能だ。これは省入力データの拡張プラットフォームで、話題のニュースや新商品の名称、公開予定の映画タイトルといった“旬な”単語が随時配信され、省入力データとして自動登録されていく仕組み。今後は配信される単語のジャンルを順次拡充し、MacやAndroid向けのATOKにも提供する予定としている。

推測変換が人名や地名にも対応。住所は候補を選択していくだけで町名まで入力できる(写真=左/中央)。確定された単語に応じて候補が表示される(写真=右)

誤った慣用句などを指摘する校正支援機能も強化された。これまでは入力を確定しないと指摘しなかったが、最新版では(誤った)読みを入力している途中に正しい候補を表示してくれる(写真=左)。候補の表示順が使用頻度順に代わり、より速く入力できるようになった(写真=中央)。文節を別に区切った候補も「0」に表示される(写真=右)

 一太郎2012 承とATOK 2012の製品ラインアップと価格は以下の通り。「一太郎2012 承 プレミアム」は、文書読み上げソフト「詠太2」や「花子2012」、「Suriken 2012」、各種辞書とヒラギノフォント6書体などを含み、「一太郎2012 承 スーパープレミアム」はさらに、表計算ソフト「JUST Calc」とプレゼンテーションソフト「JUST Slide」およびOCRソフト「一発!OCR Pro7」とモバイルハンディスキャナが付属する。「ATOK 2012 プレミアム」は、ベーシック版の機能に加えて、変換中の単語から8カ国語でリアルタイム翻訳が行える「8カ国語Web翻訳変換 for ATOK」や「ATOKダイレクト for Excel」などが利用できる。

ラインアップと価格
製品名 価格
一太郎2012 承 2万1000円
一太郎2012 承 プレミアム 2万6250円
一太郎2012 承 スーパープレミアム 3万4650円
ATOK 2012[ベーシック] 8400円
ATOK 2012[プレミアム] 1万2600円

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