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ブラザー「MyMio DCP-J925N」は、本当に“第3の選択肢”なのか?2011年末プリンタ徹底検証(5/5 ページ)

» 2011年12月27日 18時45分 公開
[榊信康(撮影:矢野渉),ITmedia]
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印刷/コピーの速度を測定する

 印刷速度も実測してみた。ここでは、A4モノクロテキスト、A4カラーチャート&テキスト、L判写真、L判写真ダイレクトプリント、A4カラーコピー、自動両面印刷などのプリントを行い、その所要時間を測定している。

 測定方法は、PCからの印刷では用紙を引き込んだ時点で計測を開始し、排紙完了と同時に計測終了とした。これはPCの性能に左右されない純粋なエンジンスピードを知るためだ。一方、ダイレクトプリントやコピーではデータの処理時間も性能のうちなので、スタートボタンを押すと同時に測定を開始している。

印刷/コピー速度のテスト結果
設定 出力時間
A4モノクロ(PCから印刷) 普通紙1枚
高速 4秒2
普通 4秒7
A4カラー(PCから印刷) 普通紙5枚
高速 23秒1
普通 44秒7
L判(PCから印刷/フチなし) 写真光沢紙 1枚
普通 10秒3
高画質 39秒8
最高画質 1分32秒3
L判(メモリカードから直接印刷/フチなし) 写真光沢紙 1枚
標準 16秒3
きれい 52秒8
A4カラーコピー 普通紙1枚
原稿台 16秒1
ADF 16秒6
A4カラー(PCから自動両面印刷) 普通紙5枚
高速 56秒5
普通 1分14秒3

 A4モノクロテキストは原稿にJEITAのプリンタテストパターン「J1.DOC」を使用し、最高速となる「高速」モードと標準設定の「普通」モードを試している。印刷時間は高速モードと普通モードでほぼ変わりがないが、濃度にはそれなりの違いが見られる。よって、普通モードを常用するのがベターだ。標準で4秒7という出力速度はかなり速い。ただし、高速モードでもかすれなどはないので、判読は十分に可能だ。インクの消費を抑えたいならば、普通モードと使い分けるとよい。

 A4カラーチャート&テキストでは原稿にJEITAの「J9.DOC」(5ページ)を使用している。印刷モードは高速モードと普通モードを試した。J9.DOCは複数ページのカラー原稿だけあって、普通モードと高速モードでそれなりの開きが生じた。高速モードでもチャートやイラストに乱れは出ないので、普段使いにはよいと思う。ただし、濃度が低いこと、テキストが少々かすれ気味になることから、配布する原稿の印刷には普通モードの使用をおすすめする。普通モードで44秒7と、こちらの印刷速度も優秀だ。

 L判写真の測定では、最高画質から3段階(最高画質/高画質/普通)の印刷モードでフチなし印刷を行った。用紙はブラザー純正の写真光沢紙(BP71G)を使用している。普通モードは非常に高速だが、粒状や濃度の面からあまりおすすめできない。せっかく写真用紙を用いるならば、高画質モードが最低ラインだろう。高画質モードで39秒8なら、待たされる印象もない。

 L判写真のダイレクトプリントでは、最高画質から2段階(きれい/標準)の印刷モードでフチなし印刷を行った。印刷した用紙はブラザー純正の写真光沢紙(BP71G)だ。速度や画質の面から、PCでの高画質/普通モードに相当すると思われる。やはり、標準モードでは粒状が目立ち、色彩も落ちるので高画質モードを用いるのが妥当だ。

 A4カラーコピーは標準モードでのみテストしている。ただし、DCP-J925NはADFを搭載しているため、こちらの速度も測定した。結果はADFからの給紙でも、原稿台とほぼ遜色(そんしょく)のない速度が得られている。いずれも16秒台と高速だ。原稿台を開けてセットする手間を省けるので、1枚だけコピーする場合でもADFを用いるというのも悪い手ではないだろう。ADFに原稿をセットすると、液晶モニタに「原稿セットOK」という表示が出て、コピー設定メニューに切り替わる。

 自動両面印刷では、高速モードと普通モードを測定した。原稿はA4カラーチャート&テキストと同じJEITAの「J9.DOC」(5枚)を使用しているので、両テストの結果を比較してほしい。

 結果は高速、普通の両モードとも約30秒ほど所要時間が増した。これはいうまでもなく、用紙を再度引き込むための時間がかかるためだが、普通モードは片面印刷を2回(裏/表)行うよりは高速なので使わない手はない。高速モードでは片面×2回よりも時間がかかっているが、その差はわずかだった。現実的には片面×2回だと印刷以外にもセッティングの時間を取られるだろうし、ミスが生じる可能性もあるので、やはりプリンタにすべてまかせるのが無難だ。

L判フチなし写真印刷のコストは1枚あたり約18.8円

 公称のランニングコストは、L判写真印刷で1枚あたり約18.8円(インクと写真用紙のコスト)、普通紙のA4カラー文書印刷で1枚あたり約8.5円(インクのコストのみ)とされている。4色インク搭載機ということもあり、多色インクを用いた他機種に比較して写真印刷のコストは低めだ。

 ちなみに2010年モデルの「DCP-J715N」だと、L判写真印刷で1枚あたり約19.8円、普通紙のA4カラー文書印刷で1枚あたり約7.9円だった。L判写真用紙の印刷コストは少し下がり、普通紙文書の印刷コストは少し上がった格好だ。

静音性は標準的か

 静音性については標準的といったところ。周囲が静かな深夜では気を使うだろうが、ヘッドキャリッジの走査速度が低下するような写真の高品位印刷程度ならば、駆動音が抑えられるので耐えられるかもしれない。逆に普通紙への高速印刷は、ヘッドキャリッジ、ローラー、トレイが大きな音をたてるので注意したいところだ。

 試しに、環境騒音31.5デシベル程度の室内で本体の30センチ手前に騒音計を設置し、A4普通紙カラー印刷中の動作音を測定したところ、標準設定では50〜60デシベル程度だった(給紙や排紙の瞬間は大きな駆動音がする)。他機種が備えているような静音モードは用意していないため、状況に応じて印刷速度を優先するか、静音性を優先するか、といった選択はできない。

まとめ――第3の選択肢以上になりうる進化

 DCP-J925Nはエンジン部の刷新により、印刷速度を大幅に向上させており、ライバル機に体感速度で肩を並べたといえる。ファンプリント的な機能は豊富ではないが、使用頻度や実用性が高いと思われるものは外さずに強化できており、クラウドサービスとの連携については他機種より一歩先にいく部分も見られる。

 操作性や画質などでいくつか課題があるものの、自動両面印刷やADFといった実用面での長所と、フットプリントが小さくて設置しやすいボディ、そして実売価格で1万5000円前後という安さは、こうした弱点を補って余りあるように思える。

 操作の煩雑さはユーザーの慣れでカバーできるし、画質についてもコンパクトデジカメやスマートフォンでスナップ写真を撮って配るくらいなら十分なクオリティと思う人は多いだろう。しかし、両面印刷や複数部の一括スキャンの手間、ボディサイズはそうもいかない。

 DCP-J925Nは画質のよさや機能の多彩さで最高峰を狙った製品ではない。しかし、一般的なユーザーが必要あるいは便利に思うような部分にフォーカスし、うまく性能、機能を取捨選択できており、コストパフォーマンスが実に高い1台といえる。このバランスはほかになかなか見当たらず、画質最優先ではない多くのユーザーにとって、第3の選択肢どころか、それ以上の有力候補になりうるだろう。


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