“2画面”アプリは実用に足るか?――「Sony Tablet P」徹底検証(後編)汎用性と独自性のはざまで(2/5 ページ)

» 2011年12月31日 06時00分 公開

ソニー独自の映像配信サービス「Video Unlimited」に対応

 ソニーが作るタブレットということで、期待したいのはやはりオーディオ&ビジュアルの作り込みではないだろうか。

「Video Unlimited」のトップ画面。タブレットでのタッチ操作を考慮し、シンプルな画面構成になっている

 まずはビジュアル面だが、最大のトピックはソニーの映像配信サービス「Video Unlimited」が10月13日にSony Tablet対応として正式オープンしたことだ。Sony Tablet Pでも単体でVideo Unlimitedにアクセスして映像コンテンツを購入/レンタル、ダウンロードして再生までが行える。

 Sony Tablet用の映像コンテンツはダウンロードのみで提供され、テレビでは可能なストリーミングには対応しない。ダウンロードはWi-Fi接続時のみ可能で、一時停止して後から再開するといったこともできる。コンテンツの解像度はSD(480i)に制限されるが、本体内蔵のストレージ容量や動画の再生能力、ダウンロードの負荷などを考えると現状では妥当な仕様だろう。

 実際、IEEE802.11nの無線LAN接続で2時間程度の映画(約1.5Gバイト)をダウンロードするのに20分近くかかった(速度は通信環境によって左右される)。もっとも、ダウンロードしながら再生できる機能はあるので、購入から視聴までに待たされることはない。購入前のプレビューにも対応している。

 Video Unlimitedでは、50社以上が提供する500作品以上のコンテンツを販売しており、ハリウッド大作をはじめとする洋画、邦画、国内外のドラマ、アニメなどが購入できる。購入はセルかレンタルが選択可能だ。価格はタイトルによって結構違うが、セルで1000円以下、レンタルで100円といったものも見られる。新作の例では映画のセルで2000円以上、レンタルで400円以上といったところ。レンタルは初回の視聴から48時間や72時間といった制限がある。

画面左から「特集&オススメ」などのジャンルを選ぶと、それぞれのメニューに移動する

コンテンツの購入はセルもしくはレンタルとなる(画面=左)。購入したコンテンツはダウンロードしながら再生することも可能だ(画面=中央)。購入したコンテンツは「ダウンロードリスト」に追加され、複数購入してまとめてダウンロードすることもできる(画面=右)

 Sony Tablet PでVideo Unlimitedを利用する場合に問題となるのはストレージの容量だ。ダウンロードしたデータは付属の4GバイトmicroSDメモリーカードに保存することになるが、2時間映画の例で1.5〜2Gバイト程度の容量があるため、すぐにカードの容量がいっぱいになってしまう。日常的に映像コンテンツを利用するならば、16Gバイトや32GバイトのmicroSDメモリーカードを別途調達して4Gバイトカードと付け替えることが必須だ。

Windows PC用のコンテンツ管理アプリ「Media Go」

 ストレージの制限を補う手段としては、Sony Tablet PとPCをUSBで接続し、Windows PC用のコンテンツ管理アプリ「Media Go」を利用するのがよいだろう(USB 2.0 Micro-B/USB Type A変換ケーブルは別売)。これを使えば、セルで購入したコンテンツをPCにコピーしたり、レンタルしたコンテンツをPCにムーブすることが可能で、カード内に入れておく映像コンテンツを管理しやすい。また、Media GoからPS3やPSP、Xperia、WALKMANといった対応機器に転送して再生させる活用も可能だ(Media GoはPS Vita非対応)。

 ただし、Video Unlimited側のコンテンツ管理についてはツメの甘い仕様も見られる。例えば、テレビ向けのVideo Unlimitedで購入した映像コンテンツをSony Tablet Pで視聴したい場合も再び購入する必要があり、スマートさに欠ける。それどころか、購入したばかりで本体内にあるコンテンツを重複して購入できてしまい、無料で再ダウンロードにならないのは残念だ。この辺りの使い勝手は、iTunes StoreやHuluに比べて遅れている。

 今後はVideo Unlimited対応のソニー製品を複数所有している場合、1台の機器で購入したコンテンツは他機器で無料ダウンロードできるなど、より共有しやすい仕組み作りをしてほしい。

購入したコンテンツを再生する「ビデオプレーヤー」

 購入したコンテンツはSony Tablet Pにプリインストールされたアプリ「ビデオプレーヤー」で再生する仕組みだ。2画面用に最適化されたアプリで、上画面に映像、下画面に再生コントロールパネルを配置している。上画面の映像はノーマル(縦横比を維持して拡大)、フル(縦横比を無視して全画面拡大)、オフ(等倍表示)の表示モードを選択可能だ。初期設定はノーマルだが、Sony Tablet Pの画面は横長(アスペクト比16:7.5)なので、16:9の映像を見ると左右に少し黒帯が表示される。

 実際にVideo Unlimitedで購入したコンテンツをいくつか視聴してみたが、Sony Tablet Pの5.5型ワイド液晶ではSD画質でも解像度の低さが気にならず、十分精細に感じられた。ディスプレイの色域は特に広くはないが、発色に不満はなく、黒の締まりもよい。携帯して外出先でポータブルビデオプレーヤーとして使うには十分な画質という印象だ。2画面折りたたみボディを生かして、ノートPCのように画面をチルトさせた状態で机上に置いておけるので、長時間の視聴も楽にできた。

Sony Tablet Pの「ビデオプレーヤー」は上画面に映像、下画面に操作パネルを配置する(写真=左)。折りたたみボディを生かしてノートPCのように机上に置けば、特にスタンドなどがなくても自立するので、楽な体勢で映像が楽しめる(写真=中央)。動画系のアプリでは「ギャラリー」もあり、こちらでは動画再生のほか、写真のスライドショー表示やトリミングなどが行える(写真=右)

 ちなみにSony Tablet Pで再生可能な動画フォーマットは以下の通りだ。

Sony Tablet Pの動画対応形式
フォーマット プロファイル 最大解像度 最大ビットレート 「ギャラリー」対応形式 「ビデオプレーヤー」対応形式
H.263 Profile0 704×576 4Mbps .mp4、.3gp
MPEG-4 AVC/H.264 Baseline Profile 1920×1080 18Mbps .mp4、.m4v、.3gp .mp4、.m4v、.3gp
MPEG-4 Simple Profile/Advanced Simple Profile 1920×1080 10Mbps .mp4、.3gp .mp4、.m4v、.3gp
WMV Simple Profile/Main Profile 1920×1080 20Mbps .wmv

 Androidタブレットではありがちだが、MPEG-4 AVC/H.264はBaseline Profileのみの対応となる。Sony Tablet Sと同様、ハンディカムで撮影したAVCHD形式やMPEG-2形式の動画は再生できない。実際にHigh ProfileやMain ProfileのH.264動画をいくつか再生しようと試みたが、720pでもコマ落ちが激しく視聴困難だった。Baseline Profileでも1080pはたまにコマ落ちするものも見られる(試した限りでは720pは問題なく再生できた)。ソニーによれば、動画コーデックの対応は今後も順次進めるという。

「Sony Tablet P」の「ビデオプレーヤー」では、上画面に映像コンテンツを、下画面に操作パネルを表示する

 なお、Sony Tablet Pに保存された音楽、写真、動画のコンテンツは、「Throw」機能によってホームネットワーク上のDLNA対応プレーヤー/テレビなどに配信できる。これもSony Tablet Sと同じ機能だ。ただし、Video Unlimitedで購入したDRM付きコンテンツはThrowが行えないので注意したい。

 その逆もしかりで、現状ではDLNA対応機器に保存してあるDRM付きの映像コンテンツをSony Tablet Pに配信して再生することもできない(DRM付きでなければ再生可能)が、ソニーはSony TabletをDTCP-IPに対応させる準備を進めている。レコーダー側で録画した番組をSony Tabletで再生できるようトランスコードして配信する仕組みで、今後の拡張に期待したい。

DLNAの対応によって、Sony Tablet Pに保存された音楽、写真、動画のコンテンツを同一LAN内のDLNA対応プレーヤー/テレビなどに配信したり(画面=左)、DLNA対応プレーヤー/テレビのコンテンツをSony Tablet Pに配信して再生できる(画面=右)。ただし、現状でDRM付きのコンテンツは扱えない

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