さて、実際に何度か「公衆無線LAN自動切り替え」の場面に遭遇してみたが、これは“思わずほぉぉと感心し、にやけてしまった”ほど便利だ。
普段の行動範囲は東京23区南部と神奈川・川崎市内が中心。地上ならWiMAXはたいていつながるものの、地下鉄移動時やビルの地下街、地上でも建物の奥まった場所へ行くとWiMAXは残念ながら圏外になることがある。中でも意外に多いのが喫茶店やファストフード店など、入り口付近や窓際ならWiMAXエリア内なのに、奥の席や地下の席へ行くと圏外になるパターンだ。
この場合、筆者はPCを公衆無線LANにつなぎ「Connectify」ソフトでPCを無線ルータとして使っていたりしたのだが、WM3600Rの導入により、特に何もせずに「WiMAXがつながらない/遅い場合は公衆無線LANに」の運用がとてもスマートになった。また、公衆無線LANサービスの1つである“BBモバイルポイント”は行く機会の多い大手ハンバーガーショップの店舗で有効に使うため、BIC WiMAXの付帯サービスと単独契約の2アカウントをわざわざ維持していたのだが、これで単独サービスの方は不要になりそうだ。
また、筆者は無線LAN機能を内蔵するSDカード「Eye-Fi」を愛用しているのだが、WiMAXも公衆無線LANもWM3600Rに集約する(同じSSIDで接続したまま)使い方になるので、公衆無線LAN利用時も気にせず「デジカメ→スマホへ転送」ができるようになった。これも地味〜に便利。Eye-Fiに限らずコンシューマ機器の無線LAN機能は公衆無線LANに非対応だったり、オトナな事情で特定の公衆無線LANサービスしか使えない例もあるのだが、WM3600Rを介せば、少なくとも5つの公衆無線LANサービスを横断して使えるようになる。
……本機のこの機能、万能に思えたが実は弱点もある。
“公衆無線LANとWM3600Rの無線LANアクセスポイントは、同一チャネルを利用する”とマニュアルにある。1つの無線LANチップで、公衆無線LAN側の送受信と端末無線LAN側との送受信を切り替えながら機能を実現する仕様と予想され、こちらだと当然実通信速度にロスが発生する。
これにより、どれだけ実速度が下がるだろうか。実通信速度がかなり高速な某場所のHOTSPOTで、ノートPCの無線LANで直接接続した場合とWM3600Rを経由した場合での実速度を計ってみた。
結果は、おおむね半分程度の実速度になった。
こちらについて、BF-01Bなどのように独立して無線LANチップを積んだ仕様であれば……と思わないこともないが、コストや消費電力、サイズとの兼ね合いもあるだろう。この機能の実現のために高額に、大きく、バッテリー動作時間が短くなるのなら「うーん、それは捨てがたいが、それならこのままでいい」と思ってしまう感じだ。
ともあれ、良電波環境下の最大54Mbps公衆無線LANサービスであれば、WM3600R経由でも10Mbps以上の速度は確保できる。こちらは一応弱点として上げておくが、実利用において、特にスマホ類の利用においてはほぼ気にする必要はない。どうしても速度優先の時だけ直接接続すれば済むことだ。
最後にメリットをもう1つ。公衆無線LAN自動切り替え機能を応用すると、実は「無線LANの中継器」としても使える。
例えば、自宅における庭先やベランダ、浴室など、リビングルームにある無線LANルータの電波が微妙に届かない……そんな家庭はないだろうか。そんなときはWM3600Rだ。バッテリー動作するWM3600Rを自宅ルータの電波が届く適当な場所に置けば、それだけで家庭内の無線LAN利用可能エリアをじわっと拡大・延長できる。工夫により、庭先などでもばっちり利用可能になるだろう。
こちら、厳密にいえばWM3600Rはルータとして動作するため、WAN側になるLANとは異なるサブネットになってしまうのだが、Webサイト表示、メールチェック、一般アプリ利用といった通常のインターネット利用だけあれば特に問題はないはずだ。
(続く)
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