PCとスマートデバイスの融合の中で繰り広げられる、新たな“OS戦争”本田雅一のクロスオーバーデジタル(2/2 ページ)

» 2012年02月28日 12時30分 公開
[本田雅一,ITmedia]
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Mac OSとiOS、最大の積み残し

 一方、Appleも切り口は異なるものの、Microsoftと同じような問題を抱えている。プロセッサのパフォーマンスやメモリサイズなどの制約から、アーキテクチャを完全に分離してきたMac OSとiOSだが、この2つをどう統合していくか、というテーマだ。

 すでに操作性の面では、全画面アプリケーションやアプリケーションの起動方法など、iOSとMac OSの統合が少しずつ進み始めている。次期Mac OS Xのの「Mountain Lion」では、さらにこの傾向が強まっていく。

 次期iPadは、解像度が大幅に高まり、プロセッサのコア数や搭載メモリが増えると予想されている。あるいはバリエーションモデルが噂通りに登場するのかもしれないが、注目点はハードウェアではない。そのハードウェアで、どのうようなソフトウェアが動くかが焦点になる。

 ご存じのように、スマートフォンやタブレットは、ユーザーインタフェースを担うセンサーがシンプルであり、操作性は追加センサーとソフトウェア(OS)の作り込みに依存する。もちろん、性能が強化されれば速度や応答性は高まり、解像度が高くなると印刷物のような高い精細感を得られる。それは商品としての魅力だが、システム全体を俯瞰すると、やはりOSがどうなるかが一番重要だ。

 そうした意味で、今年最大の注目はMountain Lionである。Mac OS Xなのだから、当然、iPhoneやiPadには関係がない。またメジャーアップデートとされているものの、OSの基礎的な部分は現行版のLionと大きな違いはない。

 しかし、Mountain Lionという名称からも解るとおり、基礎的部分は従来のものを使いながら、より洗練されたOSになる見込みだ。これはLeopardに対するSnow Leopardのような位置付けで、決して完成度が高いとは言えなかったLionの完成度を高めたものと考えられる。

 そして、Mountain Lionで追加される主要機能が、iOSで培ったユーザーインタフェース技術や、クラウド連動機能である。故スティーブ・ジョブズ氏は、iOSの技術をMac OSに持ち込み、統合度を上げようとしていたが、まだ統合の度合いは高くない。ジョブズ氏が製品に関して何からの積み残しをしていたとするなら、Mac OSとiOSとの機能統合だ。Lionでは中途半端だった作業が、この夏リリースの最新版にどこまで盛り込まれているに注目だ。

Photo Mac OS X Mountain Lionは、iCloudとOSレベルで統合された。それによりDocuments in the Cloudをはじめ、様々なiCloudの機能・サービスがOS側から利用できる

 Mac OS X Mountain Lionの開発者向けプレビュー版に関する詳しい話はここではできないが、すでに公開されている情報をまとめると、Mac OSとiOS、それぞれにおける“情報の扱い”は共通化される。またTwitter連動についても同様にアプリケーションの中で扱えるようになり、Mac OSとiOSの間の溝が埋まるのである。

 しかし、これで終わりというわけではない。Mac OSがiOSに歩み寄ったのと同じように、iOSもMacOSに歩み寄るのではないだろうか。両者に使われているOSのコアとなる技術は同じものだが、利用目的の違いによって機能セットや振る舞いは異なる。

 iOSはもともとスマートフォン向けという出自もあって、極力、簡素な機能からスタートした。それがハードウェアの進化とともに、毎回バージョンアップの度に少しずつ複雑性を増してきている。従って次期iPadのハードウェア仕様がどの程度かを見極めれば、iOS 6がどこまでMac OSに近付くのかも明らかになってくるだろう。

 iOSの良さは、その出自からくる動作の軽さとシンプルな操作性にある。そのバランス感覚や長所を生かしたまま、いかにしてPCとの間をつなぐのか。特にPCとスマートフォンの間に入るiPadの適応範囲を拡げるには、OSの機能を統合することが重要になる。

どちらが、より“普遍的な存在”になれるか

 さて、このように切り口を変えてみると、90年代とは異なる側面でのOS戦争が始まっていることが分かる。スマートフォンやタブレットが生まれ、PCとスマートデバイスの境目がなくなってきた。

 MicrosoftはPCの外への進出で失敗し、デジタルワールドでの支配力を失った。逆にAppleはPC対Macの戦いに敗れてデジタル家電の世界へと飛び出すことで、自社OSの支配力を高めることに成功した。

 そして今、PCとスマートデバイスにおいて、さらに統合度を高めていき、機能をシームレスにつなげる“仕込み”をその中に入れていくフェーズに入っている。出発点は異なるが目的地は同じだ。

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