今回試した直販モデル(HP ENVY14-3004TU)の基本スペックをおさらいすると、Core i7-2677M(1.8GHz/最大2.9GHz)、4Gバイトメモリ、256GバイトSSD(128Gバイト×2/RAIDなし)、Intel HD Graphics 3000、64ビット版Windows 7 Home Premium(SP1)という内容だ。この構成でベンチマークテストを実施した。
テスト結果のグラフについては、参考までに、同社の13.3型UltrabookであるFolio 13-1000と、SSDを除くスペックが同じ東芝の13.3型Ultrabook「dynabook R631/W1TD」のスコアも併記している。
スペック自体はUltrabookとして目新しいものではないが、ベンチマークテストのスコアは優秀だ。PCMark 7、PCMark VantageともにFolio 13-1000およびdynabook R631/W1TDを上回るスコアをマークした。これはSSDの性能差によるところが大きい(Folio 13-1000に対してはCPUの差もあり)。
CrystalDiskMark 3.0.1のスコアを見ると、ENVY14 SPECTREが搭載するSSDはライト性能、特にランダムライト性能に優れていることが分かる。Windowsエクスペリエンスインデックスのプライマリハードディスクのスコア(7.5)にもそれは現れており、実際のOS操作の使用感もキビキビとしており、スリープ状態からの復帰も高速で大変快適だ。
一方、3Dゲーム系のグラフィックス性能はFolio 13-1000とほぼ同じで、dynabook R631/W1TDのスコアを少し下回っている。いずれもグラフィックス機能にCPU内蔵のIntel HD Graphics 3000を利用しているが、同じスペックでも製品ごとに3D描画性能が異なることが結構あるのが現状だ。放熱やTurbo Boost 2.0の動作が関係していると思われるが、はっきりした理由は分からない。いずれにしてもプレイできるのは描画負荷の低いカジュアルなゲームに限られる。
バッテリー駆動時間は海人氏のBBench 1.01を利用して測定した。無線LANでインターネットに常時接続し、「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」の設定でテストしている。Windows 7の電源プランは標準の「HP推奨(ディスプレイ輝度40%)」を利用した。
この設定で駆動時間は5時間36分(残量5%)だった。約9時間30分という公称値には及ばないが、ディスプレイ輝度40%の常時接続環境でこれだけバッテリーが持つならば、モバイルでも心強い。
薄型のUltrabookでは、静音性と十分な放熱という相反する要素のバランスも重要だ。ENVY14 SPECTREには、設置環境によってパフォーマンスやファンコントロールを細かく制御することで、ボディ表面の温度が上がりすぎないようにする「HP CoolSense」機能も備わっているが、実際に動作音とボディの表面温度を計測してみた。
静音性は優秀だ。排気口は背面にあるが、アイドル時は静かな部屋でなければファンの回転に気付かない程度で、多少の負荷ではほとんど変わらない。CPUにマルチスレッドで負荷がかかったり、3DゲームなどでGPUに負荷がかかるような処理ではファンの音が大きくなるが、変動がゆるやかで音量の割に耳障りに感じない印象だ。
発熱面で気になるところはまったくなかった。超低電圧版Core i7を搭載したモデルとしてはボディが大柄なぶん、熱設計にも余裕があるのだろう。手が触れるパームレストやキーボードはもちろん、底面の発熱も抑えられていた。
今回テストした直販モデル(HP ENVY14-3004TU)の価格は15万9810円だ。CPUがCore i5-2467M(1.6GHz/最大2.3GHz)、SSDが128Gバイトになる量販店モデル(HP ENVY14-3003TU)の実売価格は13万5000円前後と予想される。
いずれも最近のノートPC、特にコストパフォーマンスも注目されるUltrabookとしては高価な部類に入り、日本人のモバイルノートPCユーザーから見ると重量もあるが、デザインや所有欲を満たすという部分に注力した高級志向の製品だけに、一般的なノートPCと同列には比べられない。
1600×900ドット表示の14型ワイド液晶ディスプレイや高速なデュアルSSDの搭載など、スペック面でもプレミアムUltrabookをうたうにふさわしい実力があるが、やはり購入のポイントとなるのは、スペックとは別の部分だ。
製造コストをかけたガラス張りのボディや質感といった部分は、確かにENVY14 SPECTREならではの魅力を強く放っている。その誘惑に乗るかどうかに尽きる製品だろう。
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