“新しいiPad”の液晶は黄色い? それとも正しい色?――測色器で徹底チェック3世代のiPadを横並び比較(2/3 ページ)

» 2012年04月02日 17時30分 公開
[前橋豪,ITmedia]

3世代のiPadで色域を比較

 彩度が44%向上したという新しいiPadだが、実際に初代iPadやiPad 2と色域がどれくらい違うのだろうか。i1Proで作成したICCプロファイル(輝度は120カンデラ/平方メートルに固定した状態)をMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、それぞれの色域を比べてみた。色が付いているのがそのiPadで再現できる色の範囲、グレーで重ねて表示しているのが比較対象で再現できる色の範囲だ。

 結果は以下の通りだ。

新しいiPadとsRGBの比較:i1Proで作成した新しいiPadのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。色が付いている範囲が新しいiPadで再現できる色の範囲、グレーの範囲がsRGBで再現できる色の範囲を示す。画面左は上から、画面中央は左から、画面右は右から見た図だ。かなりsRGBに近い色域を備えていることが分かる

新しいiPadとAdobe RGBの比較:i1Proで作成した新しいiPadのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域はAdobe RGBだ。新しいiPadはsRGBに近い色域なので、さすがにAdobe RGBの色域とは差が大きい

新しいiPadとiPad 2の比較:i1Proで作成した新しいiPadのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域はiPad 2だ。特に青から赤にかけて色域が広くなっている

新しいiPadと初代iPadの比較:i1Proで作成した新しいiPadのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域は初代iPadだ。iPad 2との比較と同様、新しいiPadは青から赤にかけて色域が大きく広がっている

iPad 2とsRGBの比較:i1Proで作成したiPad 2のICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域はsRGBだ。全体的にsRGBより色域は狭いが、青や黄のピークはsRGBの再現域から少し飛び出している

iPad 2と新しいiPadの比較:i1Proで作成したiPad 2のICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域は新しいiPadだ。傾向はsRGBとの比較と同様、新しいiPadの色域が大きく勝る

iPad 2と初代iPadの比較:i1Proで作成したiPad 2のICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域は初代iPadだ。ほとんど同じ色域だが、緑から黄にかけて初代iPadより広い

初代iPadとsRGBの比較:i1Proで作成した初代iPadのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域はsRGBだ。傾向はiPad 2と似ており、全体的にsRGBより色域が狭い一方、青のピークではsRGBの色域を飛び出している

初代iPadと新しいiPadの比較:i1Proで作成した初代iPadのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。下にグレーで重ねて表示している色域は新しいiPadだ。やはり新しいiPadのほうが全体的に色域がかなり広い

初代iPadとiPad 2の比較:i1Proで作成した初代iPadのICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで読み込んだ結果。グレーで重ねて表示している色域はiPad 2だ。青や赤の色域はわずかに初代iPadのほうが広い結果となった

 新しいiPadは、初代iPadはもちろん、iPad 2の色域も大きく上回っており、特に青から赤にかけての広がりが目を引く。つまり、従来機に比べて、より鮮やかな赤や深みのある青、濃い紫を表示できるようになっている。初代iPadとiPad 2の比較では、iPad 2で緑から黄色にかけての色域拡大が見られるが、差は小さく、初代iPadのほうが色域が広い部分も見られた。やはり、新しいiPadでの色域拡大は際立っている。

 そして注目は、新しいiPadがsRGBにかなり近い色域を確保していることだ。初代iPadやiPad 2はsRGBに比べて色域が狭かったため、sRGBプロファイルが適用されているデジカメ写真などの画像の色を正確に再現できず、赤、緑、青の彩度が不足気味だったが、新しいiPadではsRGBの色域をほとんど再現できることになる。

 この色域拡大はさまざまなコンテンツの表示で大きな意味を持つだろう。従来は色にこだわった写真集や画集のようなiPadアプリを作る場合、実際にiPadで画像を表示し、意図した色に近づけるようなカスタマイズが必要だったが、新しいiPadのRetinaディスプレイでの表示を想定するならば、標準的なsRGB環境で作成するだけで済む可能性が出てきた(iOSはICCプロファイルに対応していないが、sRGBプロファイルの画像は特に意図しなくても新しいiPad上でほぼsRGBの色が出るということ)。

 MacやWindows、あるいはインターネットでの表示用とは別に、iPad表示用の特別な色補正をしなくてもいいというのは、コンテンツ提供側にとってメリットになるだろう。また膨大な製品数があり、個々に発色が異なるAndroid搭載機と比べても、制作者の意図した色をユーザーに伝えやすいはずだ。ユーザーにとっても、クリエイターの意図した色と違う色がiPadに表示されてしまう問題が、これまでより抑えられるようになることが期待できる。

CIE XYZ表色系のxy色度図にまとめたiPad 3台の色域。カラーグラデーションで塗られている逆U字形の範囲内が人間の肉眼で判別できるとされる色だ。三角形で囲まれた範囲がAdobe RGBとsRGBの規格、そして今回計測した初代iPad、iPad 2、iPad 3の色域を示す。三角形の面積が大きいほど、表現できる色の範囲が広いことを意味する

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