インテルが、つくば本社に新設する「ヒューマン・インタラクティブ・テクノロジー・アプリケーション・センター」は、ハードウェアやソフトウェアの開発者とインテルにコラボレーションで新しい技術を生み出す場であるとともに、エンドユーザーを招いて、将来に必要となる技術やユーザーインタフェースを考案する場としても活用する予定だ。
インテルは、4月13日にセンターを関係者に公開したが、その場に同席したインテル代表取締役社長の吉田和正氏は、「技術は片思いでなく両思いでなければならない」という表現で、センターを設立した目的を紹介した。吉田氏は、技術が進化するにつれて、ユーザーは進化した技術を使いこなせない不満や、ついていけずに使えなくなる不安を持つようになり、「これは技術の片思いだ。ユーザーも安心して使えることで両思いにしなければならない」と訴える。
吉田氏は、“両思い”になるために、インテルの持つ技術をどのように組み合わせればよりユーザーが便利になるのかを立案し、その検証をしていく場所として新設したセンターを活用すると説明した。さらに、日本には、優れた技術やサービスを提供するメーカーや企業が数多くあるが、それぞれが独自に“非同期”で開発を進めるのではなく、それぞれが“同期”して連携することで、新しい技術をユーザーに安心して使ってもらうようにする必要があると語り、インテルが新設したセンターが、進化の可能性とアイデアをユーザーに体験してもらう場所としても活用していくとした。
なお、、つくばに設置した理由については、以前からインテルが協力するつくば市における自治体と大学、企業の共同プロジェクトの一環として、大学研究室の成果の検証にも利用するためと述べ、その成果から実用できるものについては、自治体の施設で活用していく予定と語った。
センターでは、インテルの技術とパートナー企業の技術を組み合わせて、より使いやすいシステムを提案する参考展示を常設する。ここでは、その中から注目したいデモを紹介しよう。
視線追跡と視線制御によるユーザーインタフェースを提案するデモでは、シューティングゲームで、“目で狙いを定めて”ターゲットを射撃する操作で、視線によるポインティングカーソルの移動を体験できる。システムは、デスクトップPCと液晶ディスプレイの組み合わせに赤外線で眼球の動きを検知するセンサーをUSBで接続する構成だ。なお、このセンサーを開発するトビー・テクノロジーは、2012 International CESのUnveiledで、Windows 8 Developer Previewを導入したデスクトップPCを操作するデモを紹介していた。
家庭内ネットワークを利用して、スマートフォンやタブレットデバイスとPCでデータを共有する「Common Conectivity Framework」(CCF)のデモでは、その場に持ち寄ったデバイスに保存する画像や動画をPINコードの入力ですぐに共有できるアプリケーションを紹介した。CCFでは、アプリケーションにセキュリティエンジンをコードとして組み込むことで、対応するアプリケーションを起動すれば、PC側で発生するランダムで一度だけ有効なPINコードをデバイスに入力することでデータの共有が可能になる。
インテルの説明では、現在は家庭内で閉じたネットワークでの利用を想定しているので、アプリケーション側の対応でCCFを利用きるが、将来的には、マネージメントエンジン(ME)に実装したセキュリティエンジンも利用することで外に開いたネットワークでもCCFを利用できるようにする計画もあるという。そのような拡張も考慮して、CCFの対応は現時点でインテルアーキテクチャを採用したPCに限定している。
デモでは、PCとiOS、Androidデバイス側で画像を共有できる「Pair & Share」と、PCからメールテキストの入力と送信、SMSの送受信、マップの表示や経路検索など、スマートフォンの操作を行える「TelePort Extender」、そして、AndroidデバイスやiOSデバイスに保存した動画をPC側で編集する「Direct Share」を紹介した。なお、Direct ShareはCCFのAPIを利用してCyberLinkが開発している。
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