基調講演後半は、Windows Storeの情報が中心だった。これは、W8CPで初めてサポートされた機能で、配布開始のタイミングでサービスをスタートした。簡単に説明すれば、AppleがiOSデバイス向けに提供しているApp StoreのWindows版になるが、今後、Windows 8におけるMetroスタイルアプリはWindows Storeでのみ配布することになるため、次期OSにおけるアプリ販売インフラといえる。従来までのパッケージ販売網を通さないことは流通関係者によってはデメリットかもしれないが、中小規模のデベロッパでも少ない資本で世界市場を狙うチャンスが到来するわけで、ビジネスにおける潜在的可能性は高い。ユーザーにとっても、Storeアプリのカタログを参照するだけでアプリが入手できる。Windows Storeは、Windows 8の“要”と呼べる部分かもしれない。
このWindows Storeについて、シノフスキー氏はいくつかのポイントを挙げてメリットを紹介する。このストアで配布するのは、Metroスタイルと呼ばれるアプリで、WinRTと呼ばれる新しいフレームワーク上で動作する。WinRTでは、C/C++からC#、HTML+JavaScriptまで、多様な言語のプログラムが動作するうえ、x86/x64の32ビット、ならびに、64ビット環境、さらには、ARM版Windowsである「Windows RT」まで、すべて共通のコードが動作する。フォームファクタも、タブレットデバイスからデスクトップPC、大画面スクリーンまで、1つのアプリで複数のスクリーンサイズをサポートするので、開発効率が高い。iOSアプリのように「個々のアプリが独立して存在し、連携を想定していない」こともなく、Androidアプリのように「セキュリティや動作上の問題がある」といった部分もある程度管理する点で、Metroスタイルアプリは中間的ソリューションといえる。実際、WinRT上のアプリは、コンテナ化されて独立動作する一方で、Windows App Contractsによるアプリやサービス同士の連携を推奨するなど、iOSともまた異なったアプローチをとっている。Snap Viewの使い方も含め、いろいろチャレンジする余地がある点で面白い。
また、日本市場におけるWindows Storeの潜在的市場規模についても説明しており、iOSと比較して3倍、Androidと比較しても2倍近い(見込み上の)普及台数の差がある。この差はワールドワイドでさらに開くことになり、Windowsをターゲットにアプリを開発し、それを世界に向けて販売することは、非常に大きなビジネスチャンスにつながるというのがシノフスキー氏の意見だ。
これを受けたデモストレーションは、主にアプリ連携と可能性を示すものだった。検索窓からキーワードを入力すると、そのキーワードで連携可能なアプリの一覧を表示し、そこからアプリを呼び出すことで、該当するキーワードに関連づいた状態でアプリが起動する。例えば、地名を入力して天気予報アプリを起動すると、その土地の天気予報が表示されるといった具合だ。この状態でアプリを「共有」しようとすると、その場所の1週間の天気予報をテキストデータとして抽出し、ほかのアプリ(この場合はメール)で利用できるといった具合だ。タブレットデバイスに最適化したインタフェースを採用することで、通常のマウスやキーボードとは異なった操作や利用方法を提供できることも考えられる。ここは、アプリ開発側のアイデア次第だろう。
基調講演の最後にシノフスキー氏は、Windows 8に対応を予定しているデバイスを紹介してスピーチを終了した。海外でのカンファレンスとは異なり、日本ということで紹介したデバイスのほとんどが日本のメーカー製だった。特に、大画面デバイスとして紹介していたシャープの「Big Pad」や、同氏が「ファンであり、自宅にもマシンがある」と述べたソニーのVaio LはWindows 8でどの利用方法が大きく変わることが期待できる。一方、シノフスキー氏は、タワー型の自作PCを「秋葉原スペシャル」と紹介し、ハイエンドユーザーや自作PCユーザーでもWindows 8のメリットを享受できる点を訴えた。
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