h8-1290jp/CTが採用するCore i7-3770Kについて、オーバークロック状態を含めていくつか興味深いデータを取得できたので紹介しておこう。まずはHWMonitor 1.13で取得したCPUパッケージ温度のグラフだが、Core i7-3770Kは高負荷時にCore i7-2600Kよりも4度ほど高くなっている。
この手の計測ツールが示す温度は、上限温度との差分で算出するため、絶対値はアテにならないこともあるが、処理を終えて温度が下がったときはむしろCore i7-3770KのほうがCore i7-2600Kより低い温度であることを考慮すれば、大きなズレはないと考えられる。つまり、Core i7-3770Kは低負荷時には温度が低く、高負荷時には温度が上がりやすい傾向にあるようだ。また、オーバークロック時(4.2GHz動作時)の高負荷温度は83.5度に達しており、この状態で長時間使い続けるのは冷却の強化なしには難しいだろう。
CINEBENCH R11.5実行中の動作クロックの挙動にも注目してほしい。CINEBENCHの実行中は4コアがフル稼働するが、そのときにCore i7-3770Kは3.7GHz、Core i7-2600Kは3.5GHzで動作していた。両者の定格クロック、Turbo Boost時最高クロックの差は100MHzだが、実際にCINEBENCHを処理している最中のクロックには200MHzの差がある。Core i7-3770Kのマルチスレッド処理性能の高さの大きな理由の1つがこれであり、また高負荷時に発熱しやすい理由の1つの説明にもなるだろう。
ただし、これはIvy Bridgeが温度が低いから大きくターボしているのではなく、実はスペック上の問題だ。Core i7-2600Kはどんなに冷却を強化しようとも、4コアアクティブ時には3.5GHzより上にはターボしないよう上限が決められている(Intelが公開している資料を細かく探せば、見つけることができる)。
一方、Ivy Bridgeはモデルにもよるが、基本的にSandy Bridgeよりも2〜4コアのアクティブ時(=マルチスレッド処理時)にTurbo Boostによる上昇クロック幅が高く設定されており、そのぶん性能が高く、高負荷時の温度も高い傾向にある。温度が高いといっても今回の実測では4度程度で、Sandy Bridgeと同条件では温度や消費電力に余裕があるからこそ、上昇幅を高く設定しているという面もあるだろう。
そしてh8-1290jp/CTは、その少し高めの発熱も十分放熱できていた。オーバークロックで4.2GHzや4.3GHzでも動作させられるくらいなのだから、定格利用においてはより長く安心して使えるだけの余裕があると考えられる。
なお、ワットチェッカーの「Watts Up? PRO」を用いて、PCMark 7(総合テストのみ)実行中の消費電力をCore i7-3770K搭載時と、Core i7-2600Kに載せ替えた場合とで計測し、推移を比較したところ、最大消費電力では4ワットほどCore i7-3770Kのほうが高かったが、800秒間(2600Kの処理が終わって落ち着くまでの時間)の平均消費電力では逆にCore i7-2600Kのほうが1ワット高かった。ちなみに、CPUをCore i7-2600Kに載せ替えた場合のPCMarkスコアは4939で、Core i7-3770Kに比べると6%ほど低い。
HP Directplusの直販価格は、最小構成で7万5810円からと求めやすい。今回テストした構成はハイエンドに近いため、19万7190円とさすがに安くないが、そのパフォーマンスの高さはベンチマークテストでも実証した通りだ。新世代のIvy Bridgeシステムを採用したことで、前世代から大きく進歩している。
ミニタワー型ゆえに内部の拡張性は限られるが、天面と背面にUSB 3.0ポートを搭載するアクセスのよさに加えて、発熱の処理や静音性にも優れており、パフォーマンスだけでなく、さまざまな面で新世代の到来を実感できるはずだ。
自作PCより手間がかからず、信頼性やデザインに優れたメーカー製PCを選択したいが、ノートPCや液晶一体型PCではパフォーマンスに到底満足できないといった方は、最新仕様に生まれ変わったばかりのh8-1290jp/CTに注目してみてはいかがだろうか。
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