大解説! Triniryに搭載した“Piledriver”と新技術Trinity=Bulldozer+Northern Islands(2/3 ページ)

» 2012年05月15日 13時01分 公開
[本間文,ITmedia]

VLIW4とAccelerated Video Converterで大幅に性能と機能を向上

 Trinityでは、グラフィックスコアも“Northern Islands”(ノーザン・アイランド)世代の上位モデルで採用されたVLIW4アーキテクチャに進化した。従来のAMD Aシリーズと同じGLOBAL FOUNDRIESの32ナノメートルSOIプロセスルールを採用するTrinityの演算性能を大幅に向上させる役割を担っている。

 AMDは、ユニファイドシェーダを採用したRadeon HD 2000シリーズ以降、依存関係のない複数の命令をまとめて実行できるVLIW(Very Long Instruction Words)アーキテクチャを採用してきた。従来のAMD AシリーズAPUである“Llano”でも、浮動小数点演算、整数演算、論理演算、比較演算を担当する4基の32ビット浮動小数点スカラ演算器と、同社が“スペシャル・ファンクション・ユニット”と呼ぶ指数、対数、三角関数などの複雑な演算機能をサポートする超越関数(Transcendental Function)を担当する演算ユニットの合計5基で構成するVLIW5アーキテクチャを採用し、400コアを統合していた。

 これに対し、TrinityではRadeon HD 6900シリーズで採用されたVLIW4アーキテクチャを採用する。このVLIW4アーキテクチャは、スペシャル・ファンクション・ユニットを省いた4基の演算ユニットで構成することで、スケジューリングやレジスタ管理を容易にし、スレッドの並列処理性能を引き上げ、グラフィックス処理の実行効率を高めている。

 Trinityの最上位モデルとなるAMD A10シリーズでは、このVLIW4演算ユニットを8基(合計64演算ユニット=Radeonコア)で構成するSIMDエンジンを6基搭載することで、384基のRadeonコアを統合する。そのコア数ではLlanoのグラフィックスコアを下回るが、構成をシンプルにしたことで高クロックで動作しやすくなることもあり、ピーク演算性能は614.4GFLOPSと、Llano内蔵グラフィックスコアの480GFLOPSを上回る。これにより、APU全体の浮動小数点演算性能は、Llanoの576GFLOPSに対し、736GFLOPSへと向上した。

Trinityのグラフィックスアーキテクチャ。従来のVLIW5アーキテクチャからスペシャル・ファンクション・ユニットを省いたVLIW4アーキテクチャ変更されたことで、コア数は384コアに減ったが、高クロック化などで最大50パーセントのパフォーマンスアップを実現したとAMDはいう

Fusion APU Aシリーズの基本仕様 Trinity Llano
プロセスルール 32nm SOI 32nm SOI
トランジスタ数 13億300万 11億7800万
ダイサイズ 246平方ミリ 228平方ミリ
CPUコア(アーキテクチャ) Piledriver (Bulldozer) Husky (K10)
CPUコア 4 (2 Piledriverモジュール) 4
2次キャッシュメモリ 4MB(2MB/モジュール) 4MB (1MB/コア)
メモリインタフェース デュアルチャネルDDR3-1866 デュアルチャネルDDR3-1866
TDP(モバイル/デスクトップ) 17、25、35ワット/65、100ワット 35、45ワット/65、100ワット
動作クロック 2.0?3.8GHz 1.4?3GHz
グラフィックスアーキテクチャ VLIW4 VLIW5
Radeonブランド Radeon HD 7000G/D Radeon HD 6000G/D
Radeonコア 384 400
GPUクロック(最大) 800MHz 600MHz
DirectX 11 11
ビデオ支援機能 AVC(UVD3+VCE) UVD3
Display Port 1.2 1.1
Eyefinity ×
ディスプレイ出力 3(4)※2 2

 Trinityのグラフィックス機能では、ビデオ支援機能も大幅に強化した。UVD3に加えてH.264のフルエンコード機能を備える「VCE:Video Codec Engine」を搭載する。AMDでは、この新しいビデオ支援機能を「Accelerated Video Converter」と名付け、同機能に対応したアプリケーションを利用することで、ビデオエンコードや変換の大幅なパフォーマンスアップを実現できると説明する。さらに、Trinityのグラフィックス機能は、4つのディスプレイインタフェースを内蔵しており、3画面構成によるEyefinity出力や、Display Port 1.2のデイジーチェーン機能を利用した4画面出力をサポートする。

TrinityではRadeon HD 7900シリーズなどに採用されたVCEを搭載し、AMD Accelerated Video Converterを実現する(写真=左)。OpenCLアクセラレーションとVCEによるハードウェアエンコード機をサポートしたMotionDSPの「vReveral 3.3」によるビデオエンコード性能比較。Sandy BridgeコアのIntel Core i5-2410Mに比べても、高速なビデオ変換が可能だ(写真=右)

Display Port 1.2に対応するほか、Eyfinityに対応し、最大4画面出力をサポートする

 一方、AMDはグラフィックスコアを利用した並列処理性能を一般アプリケーションでも活用できるようにすべく、ソフトウェアデベロッパに対してOpenCLアクセラレーションへの対応を促している。AMDでソフトウェアデベロッパのサポートを統括するニール・ロビンソン氏は、「一般ユーザーが毎日使っているアプリケーションの多くは、APUによるアクセラレーションが可能だ」とし、2012年はビデオ編集ソフトやゲームタイトルに限らず、さらに幅広いアプリケーションがAPUアクセラレーションに対応する予定であることを明らかにした。

 同氏は、Trinityのグラフィックス機能がサポートする、ホームビデオなどの手ブレ映像を再生時に補正する“Steady Video Technology 2.0”に対応したプラグインが、Internet ExplorerやFirefox、Chrome、Windows Movie Player向けにリリースされる予定になっているほか、Photoshop CS6に加え、オープンソースの写真加工ソフトGIMPもOpenCLアクセラレーションに対応することで、より高速な画像処理ができるようになると説明した。

APU対応アプリケーションの最新動向を説明するニール・ロビンソン氏(写真=左)。一般ユーザーが普段から愛用しているアプリケーションの多くが、APUによるアクセラレーションに対応可能だと説明(写真=中央)。2012年は、幅広いジャンルのアプリケーションでAPUアクセラレーションが可能になる予定だ(写真=右)

Trinityに対応したアプリケーションも続々とリリース予定だ(写真=左)。AMD独自の手ブレビデオを再生時に自動補正するSteady Video Technology 2.0対応プラグインが、主要ブラウザで提供される予定だ(写真=中央)。Chromを使ったYoutubeビデオのSteady Videoプラグインのデモ(写真=右)

Adobe Photoshop CS6やオープンソースの写真加工ソフト「GIMP」は、OpenCLアクセラレーションに対応。Trinityのグラフィックスコアを利用することで、より高速な処理が可能になる

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