まずはVAIO Tのレスポンスから検証する。レビュー前編で紹介した通り、VAIO Tはソニー独自の高速起動/低消費電力ソリューション「Rapid Wake + Eco」を備えている。
Rapid Wake + Ecoでは、起動中に電源ボタンを押すか液晶ディスプレイを閉じると、スリープに移行するとともに作業状態をストレージに書き込む。これにより、スリープ状態でのバッテリー切れなどに起因するデータ消失リスクを抑えることが可能だ。既存のハイブリッドスリープのように、スリープから一定時間経過してから作業状態のデータをストレージへ書き込むのではなく、スリープへ移行する際に必ずストレージへ記録する。
また、Intel Rapid Start Technologyによる省電力なスリープ機能を利用し、スリープ状態で休止状態のようにバッテリーを長時間持続させながら、電源ボタンを再び押すか、液晶ディスプレイを開くと即座に復帰できるのも特徴だ。この高速復帰にはHDDにキャッシュ用SSDを加えたハイブリッドストレージ構成も不可欠という(もちろん、直販モデルはSSD搭載の構成なので、より高速だ)。
さて、このRapid Wake + Ecoとハイブリッドストレージの実力はどれほどのものか、4台のVAIO Tで起動時間(電源ボタンを押してから、Windows 7のデスクトップが表示されるまで)、スリープへの移行時間(電源ボタンを押してスリープへ移行)、スリープからの復帰時間(電源ボタンを押してスリープから復帰)、休止状態への移行時間(Windowsのスタートメニューから休止状態を選択)、休止状態からの復帰時間(電源ボタンを押して休止状態から復帰)、シャットダウンにかかる時間(Windowsのスタートメニューからシャットダウンを選択)をそれぞれ計測した。いずれも「VAIOの設定」でRapid Wake + Ecoをオンにした状態だ。
テスト結果は、全体的にSSDのみを搭載する直販モデルのほうが高速だが、Rapid Wake + Ecoの効果により、スリープからの復帰は4台とも電源ボタンを押してから約1.7〜1.8秒と非常に高速だった。スリープからの復帰については、ハイブリッドストレージ搭載モデルもSSD単体モデルに匹敵する。
ちなみに、今回のテストでは厳密に計測するため、電源ボタンを押してスリープへの移行とスリープからの復帰を行ったが、液晶ディスプレイを閉じてスリープに移行し、液晶ディスプレイを開いて復帰する場合は4台とも約4.5秒かかった。これでも待たされる印象はなく、すぐに作業を再開できる。
Ultrabookには「ハイバネーション(休止状態)からの復帰時間が7秒以内」という要件があるが、VAIO Tの場合はIntel Rapid Start Technologyとソニー独自の工夫を組み合わせたRapid Wake + Ecoによって、スリープ状態がハイバネーションとほぼ同じ役割なので、スリープからの復帰時間でこれをクリアと見なしているようだ。休止状態への移行と復帰は遅いが、VAIO Tでは休止状態を使う意味がほとんどないので問題ない。
一方、Rapid Wake + Ecoで気を付けなければならないのは、スリープへの移行時間が通常より長いことだ。スリープに入る際、必ずストレージにデータを書き込むため、特にHDD+キャッシュ用SSD搭載の店頭モデル2台で23.3〜23.4秒と、11.6型直販モデルに2倍以上の差を付けられている。
液晶ディスプレイを閉じると、瞬時に画面表示は消えるが、しばらくディスクアクセスが続くため、HDD搭載の構成ではスリープ移行中に持ち上げてバッグにしまうなど、ラフに扱うのは避けたほうがいいだろう。モバイルシーンでの利便性を重視するならば、やはり高速で振動にも強く、省電力なSSD単体の構成をおすすめしたい。
Rapid Wake + Ecoでは、スリープ移行時にストレージへデータを書き込むことで、データの消失リスクを低減しているため、スリープ移行までの遅さはデータ保存の安全性とのトレードオフになる。その代わり、いったんスリープに入ってしまえば、バッテリーを持続しつつ、高速に復帰するといった恩恵が得られるわけだ。
なお、起動、スリープへの移行、スリープからの復帰、シャットダウンについては、13.3型の店頭/直販モデルを2台並べて撮影した動画も掲載したので、合わせてご覧いただきたい。こちらも上記のテスト結果と同様、全体的にSSDを搭載した直販モデル(画面左)が高速だが、スリープからの復帰時間は2台とも変わらない。この傾向は11.6型モデルでもほぼ同じだ。
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