Intelによれば、Research@Intel(以下、R@I)がスタートしたのは2003年で、2012年は、イベント開催10周年にあたるという。Intelによると、筆者が初めて参加した2007年のR@Iは、「イベントのスタイルを変更した仕切り直し」の年であったが、そのときは、サンタクララにある米Intel本社の会議室を用いた小さなイベントだった。これは、当時CTOに就任したばかりのジャスティン・ラトナー氏の意向によるもので、より広い意見交換と、報道陣や関係者を通して技術成果を対外的に紹介していくアイデアによるものだった。
初期のR@Iは、基礎研究をそのまま持ってきたような展示が中心で、一般のユーザーに紹介するには、展示内容が難しかったように記憶している。だが、展示スタイルを年々見直してきており、場所をマウンテンビューにあるComputer History Museumに移してからは、技術内容を具体的に示しやすい動態デモを増やし、また、生活に密着したソリューションを中心に展示して一般ユーザーにも理解しやすい内容にしている。サンフランシスコに会場を移した2012年のR@Iでは、どういった発表が行われるのだろうか?
R@I 2012の基調講演に登場したラトナー氏は、イベントの概要を説明するとともに、Intelの研究開発における最新の成果を紹介した。ラトナー氏は、イベントが参加者のフィードバックを受けて年々進化していくことを強調し、2012年は、テーマを絞って内容をコンパクトにまとめることに努めたと説明した。これは、展示内容を見逃すことなく、研究者と対話できる時間を増やすことを重視した結果という。また、メインの展示とは別に、軽食やコーヒーブレイクコーナーを設けたYBCAのメインロビーでは、「Hall of Fame Technologies」と題した過去10年にIntel Labsの研究から派生して製品化した“10大テクノロジ”を紹介するコーナーを用意した。
ここではまず、ラトナー氏が選ぶHall of Fame Technologiesを紹介していこう。
AppleがMacBookシリーズのラインアップで大々的に採用して一般のユーザーにも知るようになった技術で、現在では、Ultrabookを含む多くの製品で採用が進んでおり、高速伝送技術の1つとしても広く知られるようになっている。開発コード名がLight Peakであったように、開発当初では「光ファイバによる高速伝送」が検討されていたものの、量産化における技術ハードルとコスト的な問題で、通常のメタル配線に落ち着いたとみられている。だが、現在も光ファイバを用いた高速な機器間接続の計画は続いており、2012年に台湾で開催したCOMPUTEX TAIPEI 2012では、光ファイバをベースとしたThunderboltのケーブルを展示するなど、次のステップにむけて開発が進んでいるのが伺える。
超低消費電力による動作を可能にするインテルアーキテクチャCPUとして登場したAtomは、それまでのCPUと比べてダイサイズが86パーセント小型になり、電力消費も91パーセントの抑制が可能だったという。トランジスタ数を減らして同時に消費電力も減らす、それまで肥大化しつつあったインテルのCPUとは逆のアプローチで開発したCPUだった。登場した当初は、PCや小型機器以外にも、通信機器や家電など、組み込み用途へのアプローチも模索していたが、実績としては苦戦しており、さらに現行モデルで採用するプロセスルールが、最新CPUの1〜2世代前であった。だが、最近では最新のプロセスルールを導入する開発計画を発表するなど、組み込み市場や小型携帯デバイス向けのCPUで競合できる戦略カテゴリーの役割を与えられつつある。
「Intel VT」の名称でプロセッサ仮想技術の総称となっているが、VT-x、VT-d、VT-cと複数の派生バージョンがあり、用途に応じてプロセッサのリソースを分割して独立動作させることが可能だ。現在、多様な仮想化技術が企業向け用途を中心に利用されつつあるが、インテルのプラットフォームを採用するシステムでは、その中核技術となっている。
Patmosのコード名は把握していなかったが、これはMcAfeeのDeepSAFEでベースになっている技術だという。CPUとOSの間にあるTrusted Memory Services Layerに位置し、OSから見えない位置で活動するマルウェアの挙動を監視し、McAfee Deep Defenderなどのフロントエンド側のアプリケーションと連携して悪意のある行動をブロックすることが可能となる。IntelによるMcAfee買収後のコラボレーションの成果の1つといえるだろう。
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