ガームス氏への質問時間は非常に限られていたが、いくつかの疑問は答えてくれた。
ひとつめは「Windows RT版にまで、本当にデスクトップが必要なのか?」という疑問だ。確かに社内向けに開発したアプリケーションを、Windows RTでも使えるようにといった配慮はあるのかもしれないが、昨今はユーザーインタフェースにWebブラウザを用いることが多いはずだ。
デスクトップユーザーインタフェースのほうが使いやすいアプリケーションに関しては、その多くがパフォーマンス指向のインテルCPU搭載PCに向いている。果たして「Surface」のようなピュアタブレット型端末に、デスクトップは必要なのだろうか?
ガームス氏の回答は、「それはデベロッパーが選択することだ。Windowsとしては、従来と同じようなアプリケーションも、全画面表示とタッチパネルを前提にしたものも両方ともサポートし、アプリケーションごとに選ぶほうがよいと考えている。もっとも、デスクトップアプリは、ストアでの流通がないので、大半はMetroアプリになるだろう。最終的にはユーザーが選ぶことだが、もともとWindows 8には組み込まれている機能なので、わざわざ動かさない、ということはしていない」というものだった。
もうひとつは「マルチディスプレイでの操作性」だ。Mac OS Xの場合、マルチディスプレイ環境で全画面アプリケーションを使うと、メイン以外のディスプレイは壁紙に切り替わる。これでは、マルチディスプレイでの操作性は上がってこない。
これに対してガームス氏は、「Windows 8は全画面のMetroアプリをタスクスイッチ時に左右分割で並べるのと同じようにスナップすれば、各画面に割り当てられるよう作っている」とのことで、マルチディスプレイでも全画面アプリケーションを使い分けることができるという。
また、「異なる画面解像度(物理的なdpi)が混在するケース」の振る舞いも気になるところだ。今後は手元の端末が240ppi越えの高精細タイプ、外付けのディスプレイは通常の高精細ではないタイプ、といったマルチスクリーン環境も出てくるだろう。デスクトップアプリケーションが、Windows全体を1つのdpi値で管理することになるのは致し方ないが、Metroアプリの場合はどうなるのだろうか?
ガームス氏によると、「Metroアプリは画面サイズと解像度の両方を意識して、アプリケーションの画面レイアウトを設計できるようになっているので、高dpiディスプレイと一般的なディスプレイが混在しても問題ない」としている。
むしろ、ポイントは物理的な画面サイズとのことで、「48型のテレビに映しているときにタッチパネルで操作はしたくない。24型ディスプレイでも同じだ。しかし、15型くらいの画面サイズならば、画面を直接触りたくなるかもしれない。異なるサイズ、異なる距離感のディスプレイに対して、タッチとキーボード/マウス、好きなほうを使ってアプリケーションとユーザーのインタフェースを扱えるように作っている」と述べた。
最後に「日本語でのブラウザ表示やスタートスクリーン画面のレンダリング品質、レイアウトの細かな美しさなどに配慮してほしいが……」といった話をし始めたところで時間切れ。
日本語が少しできるガームス氏は、2台持ち歩いているWindows 8マシンの片方を日本語設定にしていたため、それを見ながら少し説明しようとしてみたが、彼のところに届くメールや彼がアクセスするページは英語ばかり。
この部分は日本のスタッフに「引き続き、“日本語を美しく”について議論してね」とお願いをして、次回の再会時の議論再開を誓ったのだった。
インタビュー後、マルチディスプレイの動作を確認したところ、以下のような振る舞いになった。結論から言うと、Mac OS Xの全画面アプリケーションの実装よりも使いやすいが、まだ不完全という印象だ。任意のディスプレイに、特定アプリケーションを固定しておく、あるいはアプリケーションごとに使うディスプレイを指定する、といったことができればベストなのだが……。
デスクトップ上に何かの資料やWebページを表示しておき、Metroアプリケーションで作業を行う(あるいはその逆)が行えるぶん、Mac OS Xよりは使いやすい(Mac OS Xでは全画面アプリケーション表示時、セカンドディスプレイには何も表示されなくなる)が、表示画面が頻繁に切り替わるので、決して褒められたものではない。
製品版までに変更になる可能性もあるため、またマルチディスプレイ環境での振る舞いについては追試をしたい。
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