LaVie Zのマグネシウムリチウム合金は金属好きにグッと来る新素材。ただし、これを使用したことでどれだけ軽くなったか──というと、実は16〜17グラムほど(マグネシウム合金比)である。
「この数値だけ見るとたいした軽量化でないと思ってしまいますが、こういうことをほぼすべての部品・部材に適用しています。1グラム、いや0.1グラム単位の積み重ねなのです。1グラム軽量化するのもかなり大変なのですから」(NECパーソナルコンピュータ 商品開発本部の梅津秀隆氏)
LaVie Zは、
を解決し、「ダントツNo.1 Ultrabook」を目指した。
しかしこれらはどれかを高めれば他方が劣ってしまう──それぞれトレードオフの関係にある。前述した超軽量合金の採用のほか、薄型軽量を実現する「筐体一体型LCD設計」「薄型軽量基板」「筐体一体型キーボード設計」などこれまでなかった技術/工夫をLaVie Z専用に開発し、いずれも妥協せずいかに高いレベルでバランスさせるかが技術部門の大きな課題だった。
筐体一体型LCDと筐体一体型キーボード設計は、分かりやすく独特だ。よくあるノートPCの液晶パネルやキーボードは、すでにモジュール化された部品をそのまま組んでいる。これが単体コストや組み立て、修理工程といった部分に大きく寄与してくる。
ただ、LaVie Zは「厚さ0.3ミリ減、重量4グラム減」のためこの筐体一体型設計を採用した。液晶パネルは部品をバラバラにし、モジュールに組まれていた金属フレームを省略。金属フレーム分の強度をマグネシウム合金の外装パネルで補う工法とした。
キーボードも、バスタブ構造と呼ぶ従来キーボードモジュールをボディに重ねる工法ではなく、同じくフレームを省いてキー部のみを外装パネルに直接ネジ止めしてしまう新工法(井桁構造)により「厚さ1ミリ減、重量15グラム減」を果たした。
こちら、同じく井桁構造を採用したマボロシの極薄端末「MGX」の技術を流用した(ちなみにNECには、そんな超魅力的ながらも商品化に至らなかったマシンが何台もお蔵入りになって眠っているという)。64本ものネジで外装パネルにカッチリ装着する工法で、キー操作時の頼りないフカフカ感を完全に排除した。
数グラム単位の軽量化策は、もちろんマザーボードにも及ぶ。LaVie Zは板厚0.8ミリの8層基板を採用するのだが、従来の薄型ノートPCに採用した10層の多層化省スペース志向な基板と違い、層数そのものは少ないのだ。層を減らして表面積を稼ぐことで必要な部品を配置しつつ、薄型化を実現する手法としたわけだ。この結果、12.1型/本体重量868グラムのVersaPro UltraLite タイプVCの基板重量と比べ、約6グラムの軽量化を果たしている(このため、11.6型サイズの小型兄弟モデルもすぐ出してよ──という声もあるが、簡単には実現できないであろうことも分かる)。
ちなみに「11型クラスで軽くするか、13型で使いやすくするか」どちらかを選択すしなければと思っていた商品企画担当の中井裕介氏だが、その魂の開発・技術者は「それなら13型で軽くすればいい」とサラリと述べたという。
「従来、商品企画側が無茶を言い、開発側がそれをたしなめます。でもLaVie Zはそれが逆でした」(中井氏)
LaVie Zのカラーバリエーションもズバリ「軽量化のため」である。
「シルバー1色で、カラーバリエーションないの? と気にする人はいることでしょう。一応マグネシウム合金の天面パネルに適した耐久性のある特殊塗料を用いているので、多色展開──はやや難しく、軽さと先進性とデザインがほどよくバランスさせたよいシルバーに仕上がっていると思います。で、そこに色を重ねると1グラム、2グラムと塗料分の重みが加算されるわけです。このため今回は“軽量化の鬼”に徹しました」(梅津氏)
……こういった軽量化の手法、まるでレーシングカーである。軽くするには、かなりのコスト、手間、時間がかかるのは明白で、その実現に膨大なノウハウも必要。それが10万9830円から(直販モデルLaVie G タイプZの場合)購入できるなら……超お買い得である。
この価値に改めてグッと来る。PCを単なる日用品・暇つぶし機器ではなく、プロの仕事道具・趣味を極めるための道具と考える人なら賛同していただけるだろう。
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