前編 妥協なきデザインのUltrabookから富士通を変えていく「FMV LIFEBOOK UH75/H」完全分解&開発者インタビュー(5/5 ページ)

» 2012年09月07日 16時00分 公開
[前橋豪,ITmedia]
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Windows 8を踏まえたデザイン変更も

スクロールパッドは省き、タッチパッドは左右のボタンを一体化している

―― FMV LIFEBOOKシリーズ全体のデザインとしては、タッチパッドの右隣に配置していた独自のスクロールパッドをなくしたほか、タッチパッド自体が左右のクリックボタンを統合した、いわゆるクリックパッドになっていますが、これもデザイン性の向上を追求した結果ですか?

藤田氏 確かにデザインをすっきり見せるという意図もありますが、一足早くWindows 8での操作に配慮した結果でもあります。Windows 8ではタッチパッドの右端から内側に向かってスワイプすると、「チャーム」と呼ばれるメニューが表示されますが、タッチパッドの右にスクロールホイールがあると、この操作と干渉しやすく不便なので、検討を繰り返した結果、外すことに決めました。スクロールパッドはFMV LIFEBOOKだけのアイコンだったので、省くのは苦渋の選択でした。

 クリックパッドを採用した理由は、スクロールパッドがなくなり、マルチタッチジェスチャーでWindows 8を使う場合、センサー領域が広いほど快適だろう、との判断です。タッチパッドの大きさも選択肢がいろいろとあって、モックアップではもう少し小さかったのですが、最後の最後で大きくして操作性をさらに高めました。総合的に判断して、従来機種に操作性が劣ることはないはずですし、Windows 8にアップグレードしても使いやすいでしょう。

―― FMV LIFEBOOKだけのデザインといえば、キートップの側面を別の色で着色したサイドカラードキーも珍しいです。今回は特にサテンレッドの赤が映えますね。

小中氏 実は今回、約1ミリという浅いキーストロークでこれを実現するため、製造方法を変えました。これまではサイドカラードキーを作る際、キーボードの樹脂を成型した後に薄皮を敷いてマスキングし、その上から色を重ねていたのですが、キーストロークが1ミリしかないと樹脂を重ねる厚さが残らないので、赤く着色したキートップを黒く塗ることで、ツートーンにしています。そこから文字をインクジェットで印刷し、その上に耐久性を上げるコートを施すことで完成です。

藤田氏 サイドカラードキーも実用でのメリットを追求したデザインです。キーボードの主流がキー間隔を離したアイソレーションタイプになって、どんどん薄型化していくと、キーボードのキャップも厚みが取れなくなり、キーの押下感がスポイルされがちになります。

 しかし、サイドカラードキーを採用することで、各キーがどこに配置されているのか視覚的に分かりやすくなり、キートップが沈んだときに押しているキーも確認しやすくなります。キーの動きをしっかりよく見せるという意味で、非常に効果的な役割を果たしているデザインです。また、これがUH75/H特有のデザインとうまく融合していて、店頭で一目でFMVだと分かってもらえる強いアイデンティティになっていると思います。

キーボードはアイソレーション型だ(写真=左)。キートップの側面を着色したサイドカラードキーにより、視認性を高めつつ、印象的なデザインを演出している(写真=右)

短期間での開発が優れたデザインを守った?

―― それにしても、デザインだけでこれだけ語れるUltrabookというのは、ほかに見当たらないのではないでしょうか? それがFMVというところに新しさや今後の期待を感じずにはいられません。

岡本氏 デザインに注目していただき、うれしい限りです。UH75/Hのデザインではあらゆる部分をこだわり抜きました。製品を発表した後でも、ユーザーの方々にそうした印象を持っていただいていると実感していますし、今後もこれに劣らず、デザインに注力していきたいです。

藤田氏 PCがここまで普及して一般化した今、形に強くこだわることに対して、どこかさめている人もいるかもしれませんが、我々としてはデザインによって一瞬でメッセージを届けるということを大事にしたいですし、Ultrabookのような製品ではプロダクトデザインの役割がもっと見直されるべきだと強く感じます。こだわり抜いて、ただの箱ではないコンセプトが伝わるようなデザインを今後も目指したいです。

小中氏 ユーザーの身近なところに情報端末が増えている中、その中心となるPCのデザインは以前より重要度を増しているのではないでしょうか。これは個人向けのPCに限らず、企業向けのPCもデザインの訴求がもっとあるべきと思います。今後も富士通FMVのイメージを刷新するくらいの勢いで、見た目も中身もズンズン攻めていきたいです。

藤田氏 今回は短期間で可能な限りのこだわりを詰め込んだ開発でしたが、時間のなさがデザインによい影響を与えた面もありました。企業で1つの製品を作るとなると、長期間の開発過程でいろいろな声が入ってきます。その中で当初に掲げた理想のデザインから外れ、次第に変わっていったり、別物になってしまうことも少なくありません。

 UH75/Hは開発の初期段階で「このモックアップこそが富士通のUltrabookなのだ」と決めた通り、デザインも設計もひたすら突き進むだけという、後から振り返ってみても、実に気持ちのいい開発でした。

モックアップ通りの美しい薄型デザインは、想像以上にこだわりの塊だった


 インタビュー後編(内部構造の秘密)に続く。

→・後編 MADE IN JAPANの“360度こだわりUltrabook”を解剖する

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