外観のデザインは、VAIO ZやVAIO Sとの親和性を重視している。梶尾氏によれば、ラインアップ全体でデザインの統一感を出すことで、「VAIOのモバイルノートPCはこうだ」というメッセージを打ち出す意味があるという。
Ultrabookでよく見られるくさび形ボディではなく、前面から背面まで厚みが変わらないフルフラットなフォルムを採用したほか、斜めにカットして薄さとシャープさを演出した前面のライン、液晶ディスプレイを開くと背面のヒンジ部が底面に回り込んでスタンド代わりになる機構といった特徴は、上位モデルのVAIO ZやVAIO Sを踏襲している。
ボディの素材は、天面がヘアライン加工を施したアルミニウム、パームレストと一体化したキーボードベゼルがマグネシウム合金の1枚板、底面から側面のボトムカバーは強化樹脂、液晶ディスプレイのヒンジ部は樹脂に鏡面仕上げのメッキ、液晶ディスプレイのフレーム部は樹脂だ。
天面の高級感はなかなかのもので、明るいシルバーのボディカラーにヘアライン加工のアルミ天板がよく映える。「VAIOのモバイルノートはカーボンやマグネシウム合金を天面に使うことが多いので、こうした明るいシルバーにヘアラインが入ったような仕上げは難しい。なので、ひときわ目立つかもしれない」と梅津氏は語る。
ボトムカバーはコストの関係もあって金属ではなく、強化樹脂を用いているが、見た目はマグネシウム合金のパームレストに近く、チープさは感じない。この強化樹脂はAndroidタブレット「Sony Tablet S」の背面にも使われているものだ。
堅牢性に関しては、VAIO Zから薄型で剛性を保てるボディデザインを継承したことで、それより厚みがあるVAIO Tではかなりガッシリした作りになった。
具体的には、肉厚のボトムカバーが底面から側面(前面を除く3面)まで一体成形で、マグネシウム合金のパームレストも前面で折り曲がって一体成形としている。これを上下からしっかりとかみ合わせることで、剛性を高めた。また、液晶ディスプレイ部も天面から側面を一体成形のアルミニウム板で構成し、背面に分厚いヒンジカバーを装着することで、開閉時にゆがんだりしない頑丈さを実現している。
ボディの剛性について、梅津氏は「VAIO Zのデザインを継承したこともあるが、初期設計段階で、内部の構造、量産時に起こりうる問題や堅牢性をしっかり検証した結果が、剛性の高さにつながった」と説明する。
飛山氏は「この薄型ボディにして、剛性感の高いものを作れたことは満足している。それほど高くない価格帯でこれを実現できたのは狙い通り」と自信をのぞかせた。
製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません
それでは、新生VAIO Tの内部構造を見ていこう。分解した機材は標準仕様の13.3型モデル(SVT13119FJS)だ。実機の分解は飛山氏にお願いした。
まずは本体を裏返し、パームレスト直下に3本のコインネジで固定されたバッテリーパックを取り外す。ノートPCのバッテリーパックは通常、レバー操作でスライドさせて着脱するような機構を採用するが、すき間ができてグラグラしてしまうのと、厚みが増すため、底面カバー部と一体化したバッテリーパックをネジでガッチリと固定し、剛性感を出している。この機構もVAIO Zから受け継いだものだ。
このバッテリーパックは13.3型モデルと11.6型モデルで共通化されており、リチウムイオンバッテリーの容量はいずれも45ワットアワー(11.1ボルト/4050ミリアンペアアワー)を確保する。バッテリー駆動時間は、11.6型/13.3型の店頭モデルで約6.5時間、11.6型/13.3型の直販モデルで約6.5〜約7.5時間(構成によって異なる)とされている。11.6型モデルとしてはやや長め、13.3型モデルとしては標準的か少々短めの公称値だ。
ちなみに、Ultrabookではバッテリーが完全に内蔵され、分解しないと着脱できない製品が多いが、VAIO Tは手元に硬貨さえあれば、簡単にバッテリーを着脱できる。ただし、出荷状態でバッテリーは装着済みで、ユーザーが着脱することは想定していない。交換用バッテリーパックはオプションで提供されず、故障時などの交換はメーカーの保守サービスでの対応となる。
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