キーボードに関しては既存のモデルと同様のアイソレーションデザインだが、ここもVAIO T専用に設計し直した部分だ。当初はVAIO Zと同じキーボードユニットを流用する案も出たが、VAIO Tではボディの厚さに若干の余裕を残していたので、VAIO Zより0.2ミリストロークが深い1.2ミリストロークのキーボードを新たに作り上げている。
梅津氏はその工夫について、「1.2ミリの浅さで打ち心地がいいようにキーキャップを調整したり、カーソルキーを少し下げて使いやすくしたり、内部の構造を強化することで入力時のたわみを抑えるなど、今回のVAIO Tでチャレンジした部分の1つ」とアピールする。
VAIO Tを含むVAIOの2012年夏モデルでは、左右のクリックボタンをタッチパッドに一体化した、いわゆるクリックパッドを積極的に採用しているのも特徴だ。
その理由を梶尾氏は「モデルによってユーザビリティが違うのは避けようと思い、今回は一斉に導入した。ボタンをなくしてセンサー領域を広くしながら、マルチタッチのジェスチャー機能を増やすことで、従来より快適に使えることを目指している。海外の手の大きなユーザーでも、これなら狭く感じないと思う。来たるWindows 8での操作性向上にも貢献するはず」と述べる。
VAIO Tのクリックパッドは、真下から金属板を当てて4隅をネジでしっかり固定している。クリックパッドではパッド全体が指で押されてクリック動作となることから、この部分の剛性を高めて安定した押下感を出すために、金属板を当てているのだ。
しかし、クリックパッドの積極的な採用は苦労の連続だった。マネジメント層を含む社内では操作性が大きく変わることに賛否両論で、実際に最初の試作機に触れたときは「個人的な見解では、もうクリックパッドはやめよう、と考え直したいくらいの状態だった」と竹中氏は笑う。
そこから、底の固さによって押し心地がどれくらいであるべきかのパラメータを作り、夏モデルのクリックパッド搭載機種をすべて並べて関係者でチェックし、よくないものは機構設計の担当にフィードバックして修正をかけ、ドライバの設定も最適化を進めていくことで、「最終段階では改善でき、従来のタッチパッドに比べて、よいエクスペリエンスを提供してくれるようになったと思う」と梶尾氏は評価する。
また、竹中氏によると「ホームポジションの位置から右寄りにクリックパッドがあるVAIO Tでは、右の手のひらがキーボード入力時に触れやすいので、誤動作しないようパームチェックの部分を何度も作り直した」とのことで、VAIO Tならではの作り込みも行っている。
PC本体に続いて、液晶ディスプレイ部も分解してもらった。ツメで固定されたディスプレイのフレーム部を外すと、液晶パネルの上部にHD Webカメラ("Exmor for PC" CMOSセンサー搭載、有効画素数131万画素)と無線LANのアンテナを内蔵してある標準的な設計だ。ディスプレイ部の厚さは5ミリと、VAIO Zより少し厚いだけだが、天面にアルミを採用しているため、開閉時にゆがんだりしない剛性感ある作りになっている。
液晶ディスプレイの解像度は、13.3型モデルも11.6型モデルも標準的な1366×768ドットで、VAIO ZやVAIO Sのように高解像度のオプションは用意していない。「VAIOノート全体のラインアップで上下を区別する意味もあり、より精細な表示を好まれる方には、VAIO ZやVAIO Sを提案している」とは梅津氏のコメントだ。
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