アップルが作り出した2つの“魔法”――「iPad mini」と第4世代「iPad」を徹底検証発売直前!!(3/5 ページ)

» 2012年10月31日 10時00分 公開
[林信行,ITmedia]

iPad miniの可愛らしい素顔

 長々と左脳よりの解説をしてしまったが、今やiPhoneが年間1億2000万台ほど売れているのも、iPadがそれを上回る成長率を達成しているのも、CPUのギガヘルツや画面のppiがすごいからではなく、見た瞬間に欲しくなるセクシーさと、触れば触るほどワクワクしてくる快適さを備えているからこそのはず。続いては、iPad miniが持つ魅力の部分を、言葉という非力な道具で筆者が可能な限り試してみる。

 まずは見た目だが、iPod mini同様、「mini」がつくアップルの製品はなんとなく可愛らしく見える。おそらく従来のiPadは、横のフレームがたっぷり取られ、かなりしっかりとした外観であるのに対して、miniでは横のフレームの幅が小さくなったことが最大の要因なのだろう。従来のiPadと比べて“赤ちゃん顔”っぽい愛らしさが漂っているのだ。派手な蛍光色のSmart Coverを着せると、さらにその印象が強まる。

小さくなったフレームに対して、大きな顔(画面)を持つためか、iPad miniは、標準サイズのiPadと比べると、どこかあどけない感じのかわいさを感じさせる

 また、本体背面に向けての傾斜もやや異なる。従来のiPadはなだらかな曲線で余裕を持たせていたが、iPad miniは小さい本体にできる限り大きなバッテリーや基板を入れられるように、わずかに傾斜しながらもほぼそのまま真っ直ぐ下に落ちるトレイのような形状だ。実はこの形状は、初期のiPhone(特に日本では発売されなかった背面がアルミの初代iPhone)を思わせる。世代を超えてもベストを追求した結果のデザイン要素は、繰り返し登場するものなのかもしれない(これはシリーズを通してのブランドアイデンティティ構築の視点でもいいことだろう)。

 さて、可愛らしい半面、頼りない印象も受けてしまうiPad miniだが、実際に手に持つと今度は「思っていた以上にシャープ(鋭い)なヤツなのかもしれない」と思わせる部分もある。本体のエッジ部分がジュエリーのようにダイヤモンドカットされ、きれいに光を反射しており、さらに見た目だけでなくこのエッジ部分が軽く持ってもいい感じで指にひっかかりを作ってくれているのだ。

歴代iPadを重ねてみた。iPad miniの側面の傾斜は垂直に近い。エッジ処理のディテールは、iPhone 5から採用されたきりえな光沢を放つダイアモンドカット。その下はiPhone 3GSや初代iPhoneのような急な丸みがついている

 ただ、それ以上に驚くべきなのは、1枚のアルミ板から削りだした背面のユニボディ部分と、本体正面のガラス部分があまりにもしっくりと自然かつなめらかに融合していることだろう。実はこれだけでもものすごい技術なのだが、アップルの場合は、過去のiPhoneやiPadで、それをあまりにも普通にやり続けてきたせいで、いまではあまり語られることもなくなってしまった。

 iPad miniは、画面サイズが小さなiPhone 5よりも薄いというだけあって、手に持ってみると軽く衝撃を覚える。この薄さのせいで、そうでなくても軽い本体が、さらに軽く感じている部分もあるはずだ。だが、iPad miniの軽さは錯覚でなく、スペックで見ても確実に軽い。例えば7.9型のiPad miniは、7型のNexus 7より一回り大きいが、それでいて重量はiPad miniのほうが軽いのだ。Nexus 7と同条件のWi-Fiモデルでは約308グラム。3G通信機能を備えたモデルですら約312グラムに収まっている。

Nexus 7とサイズ比較。素材にガラスやアルミを用いた、いかにも重そうなiPad miniのほうが、実際は軽いのだ

 Kindleのほうが軽いと思っている人もいるようだが、Kindleで軽いのは6型の白黒表示電子ペーパーを採用したKindle Paperwhiteだけ(約222グラム)。iPad mini同様にカラー表示ができるモデルのKindle Fire HDやKindle Fireは、同じ7型のNexus 7よりもさらに重く、395グラムから400グラムだ。

 もっとも、そんなスペックがどうでもよくなるほどの魅力がiPad miniにはある。その1つが、本体からあふれ出る高級感だろう。これまでのiPadも十分高級感はあったが、ボディ側面のスイッチやボリューム端子部分はプラスチック製だった。iPhone 5の外装が、完全にアルミとガラスだけになったのにあわせるように、iPad miniでも、これらの部分がきれいに角の取られたアルミパーツになっており、さらに高級感が増している。

 ただ、ほとんどのユーザーは普段そんなことを意識しないだろう。それよりも、これで画面が小さすぎないのか? あるいは大きすぎないのか? という点に気が向いてしまうかもしれない。それに関しても、前述した7.9型というサイズがいかに正しいものなのかを証明するように、Webページを開いても、オフィス系アプリを開いても、あるいはゲームをプレイしても、ひしひしと伝わってくる。

 iPad miniは、その軽さと小ささのおかげで、ユーザーの目の位置とかまえた手との距離に大きな柔軟性がある。例えば、両手で本体を横に持ってゲームをプレイしていたとして、その世界に没頭したユーザーの目から画面までの距離感は20〜30センチほどになったとしよう。この状態で標準サイズのiPadでは、周囲から見たとき顔がほぼiPadに隠れてしまってなんだか怪しい人に見えてしまうが、iPad miniであれば、顔が隠れることがない(端末越しに目が見えるだけでも、周囲から見た印象はかなり変わってくるはずだ)。

 一方、手を伸ばして目から50センチの状態で使う状況を考えても、本体が軽いために長時間、その姿勢を保ちやすい。iPad miniの重さは約308〜312グラム。これは本の重さにして新書2冊分。コミック本よりは少し重く、ハードカバー本(500〜600グラム)よりはかなり軽い。ちょうど日経BPやNHK出版あたりから出ているビジネス書くらいの重さだ。ちなみに筆者の家にある本では拙著の「iPadショック」やリード・ホフマン氏の「スタートアップ」が300グラムでほぼ同じ重さだった。これは長時間、片手で持っても十分耐えられる重さだ。

 また、iPad miniにSmart Coverを着せ、テーブルに立てて映画を見ていると、なんだか飛行機の機内スクリーンで映画を見ているような気分になる(ただし、どの飛行機の機内スクリーンよりも鮮明で発色がよく、視野角も広いが)。このなんとも言えないサイズ感が、実は大きな実用性も生んでいる。

iPad miniにスマートカバーをつけたところ。実は標準サイズのiPadと微妙に傾斜が異なっているが、これは画面サイズによって目と画面の位置関係が変わるからだ

アップルは、異なる画面サイズのそれぞれで最適な傾斜を出すために、従来のiPadでは3つ折り構造だったSmart Coverを2つ折り構造にした。1折り足りない状態でも、土台となる三角形の形がしっかりと保たれるように、カバーないの磁石なども追加しているようで、カバーの外端がかなり強い磁力で内端に吸着する。なお、本体とくっつく部分からアルミパーツがなくなっている。画面サイズが異なればキーボード入力をする時の傾斜角も変わってくる。もしかしたら、iPad mini用Smart Coverの三角形の形は、この傾斜で決まったのかもしれない

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