2週間の旅暮らしで、文章の作成やMicrosoft Officeのファイル修正、Webページや写真、動画の閲覧などにSurface RTは問題なく利用できた。しかし、PCでできることのすべてがSurface RTでできるというわけではない。典型的だったのが、手持ちのコンパクトデジカメで撮影した動画をSkyDriveを経由して関係者に公開しようとしたときだ。この作業をSurface RTで行うには、撮影データをUSBカードリーダーからSurface RTに移し、そのままSkyDriveにアップロードすることになる。だが、撮影データが127Mバイトもあったため、Windows RTのSkyDriveアプリでアップロードしようとしたところ、一回当たりの転送容量制限の100Mバイトを超えたところでエラーが発生して中断してしまった。さらに、アップロードした動画ファイル形式ではSkyDriveからの再生に対応していないため、ファイル形式を変換する必要もでてきた。
しかし、Surface RTが標準で用意するアプリでは、動画の解像度変換、ビットレート変換、そして、ファイル形式変換といった編集ができない。加えて、(後述する理由から)Windows Storeで使えるアプリを探すのも困難な状況にあるため、時間がない旅の途中ではSurface RTだけで動画をSkyDriveで共有することができなかった。
標準のアプリでできないことは、サードパーティのアプリを入手して対応する。これが、従来のPCでは当たり前のようにできていた。Windows RTに関しては、アプリを入手する唯一の場所としてMicrosoftがWindows Storeを用意している。Windows 8とWindows RTの一般販売開始以前こそ、登録アプリの数も少なかったものの、徐々にその数を増やしている。しかし、今度は画面デザインが雑然としていて目的のアプリを探すのが難しい状況になりつつある。先ほど紹介した動画編集アプリが探せなかったのも、そこに理由の1つがある。
こういう事情から、Surface RTに導入しているWindows RTは「PCを趣味としない普通の人」に受け入れられるレベルにはまだ達していない。Surface RTは、コンテンツプレイヤーとしては優秀だが、Microsoftが訴求する「Windowsとして利用できる」という視点では、不便な点が目立つ。その不便を補うだけのメリットとARM搭載デバイスを選ぶ理由を説明するのが、現時点の状態では難しい。特に、Atomを搭載するタブレットPCとSurface RTを比較すると、実売価格とバッテリー駆動時間はほぼ同じで、あえてSurface RTを選ぶ理由を見出しにくい。
なお、“Windows Storeの使いにくさ”とともに気になるのがコンテンツの充実度だ。「コンテンツプレイヤーとしては優秀」と述べたSurface RTだが、特に正式には出荷していない日本で使おうと考えているユーザーには、いろいろと面倒な問題がある。このあたりは、また、別な機会に考えてみたい。
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