―― Xperia Tablet Sは本体がずいぶん薄くなりました。
三浦氏 薄型化は最大のテーマでした。先代機は持ちやすさを優先し、あえて厚みを持たせたボディデザインを採用していたのですが、第2世代を設計するにあたっては、競合他社の動向などトレンドも考えて、薄くなければいけないという要望が、企画の城重からも強くありました。
従来からの雑誌を折り返したようなラップデザインの踏襲、強度と質感の確保(裏面の素材を樹脂からアルミニウムに変更)、防滴仕様の追加と、要素が多数ある中で、試行錯誤を重ねて進めてきました。少しずつの積み重ねで薄型化と軽量化を追求しています。
特にIPX4相当の防滴仕様ということになると、本来なら水が浸入しないような構造を付け加えていく必要があるのですが、逆に薄くしなければならないということで、この辺りはかなりトライ&エラーを繰り返した部分です。
―― 防滴はどのように実現しているのでしょう。
青木氏 実はかなりシンプルに、この部分(カバーのフチを指差して)に接着紙を使って密閉することで実現しています。本体が薄くなっているだけでなく、デザイン上の絞り込み部分があるので、メカの構造として付け加えることは大変難しく、最終的にこういう方法で落ち着きました。
―― 相当な精度が要求されるのではありませんか?
青木氏 その通りです。ちょっとでもズレていると防滴になりません。ここでしっかり密閉するために設計もそうなのですが、製造のほうにも大変ご協力いただきました。その過程では品質試験のために台湾の施設に行っていた三浦が行ったきり……。「まだ帰ってこないの?」というようなこともありました。
三浦氏 部品自体の工作精度の管理はもちろんですが、治具(カバーを接着する際に正確な位置に合わせるためのサポート工具)の調整も入念に行い、高い精度で組み上げることができるようにしています。改善を重ねて、最終的に満足できる工作精度になったのですが、累計ではゆうに100回以上……120回くらいは作り直してテストを行いました。
―― 今回は本体のデザインに最適化されたアクセサリも豊富です。
城重氏 実はアクセサリのチームとも設計の段階から密にやりとりして作業してもらいました。本体がある程度できてからカバーやドックなどのアクセサリを作ると、どうしても固定具が大きくなったり、不格好になったりして美しくなりません。本体を薄く軽くしても、その魅力が半減してしまいます。
三浦氏 本体をギリギリまで薄く、かつ見えるところに穴を開けず、いかにスマートに収めるかは難しいテーマでしたが、結果としてラップデザインの折り返し部分を使ってカバーなどを固定する仕組みにして、うまく処理できたと思います。
―― 薄型化にあたってターゲットとなる数値はありましたか?
三浦氏 バッテリー駆動時間、防滴、強度、まずそういう条件を満たしながら、できるだけ薄く、ギリギリのところを狙うというアプローチで進めてきました。おおまかなイメージとして10ミリは切らなければダメだという意識は持っていましたが、具体的な数値は決めていません。
城重氏 世界最薄最軽量といったことは目指していません。まず薄さありきではなく、あくまでもどのように使いたいか、どれくらい長く使いたいか、エクスペリエンスを重要視しながら薄くするという優先順位です。今回はバッテリー駆動で10時間のWebブラウジングというのが譲れない条件でした。
田中氏 そもそもXperia Tablet Sの開発を始めるときには、まず画面サイズとして9.4型がベストなのか、そういう部分から改めて見直していきました。結果として9.4型に落ち着きましたが、決めるまでにはアンケートも取りましたし、モックもいろいろと作りました。
また、画面を囲む額縁の広さもさまざまな検討をしました。複数のモックを作って自由に触ってもらい、どう持ってどう使うか、持ち手が画面に触れるか触れないか、ビデオに撮っておいて確認するということもやりました。やはり額縁が狭いとどうしても意図せずに画面を触れてしまい、使いにくいだろうという結論に至りました。
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