シンガポール最大のデジタル家電イベントと主催者が紹介するSITEX 2012だが、その実態は、シンガポール最大のデジタル家電“即売”イベントだった。出展者の目的は製品の売り上げであって、製品をより多く売るために人気の高いPCメーカーのロゴを大きく掲げ、製品の特徴(それは、搭載するCPUの種類や採用した新しい技術とかではなく、コストパフォーマンスと無料で付属するサービス品だったりするが)を紹介するという、ある意味、とても正直な動機に基づくイベントになっている。
このような即売イベントを多くのユーザーが支持しているのは、日曜日の夜というのに、歩くこともままならないほどに通路を埋める来場者の数が物語っている。夜も遅いのに人が増える一方なので、「ああ、そうか、シンガポールはきっと大型連休期間に突入したんだ」と勝手に思い込んでいたら、SITEX 2012のスタッフが「いえ、普通の月曜日ですよ」と答えてびっくりしたりする。「な、な、な、なんで、日曜の夜で、明日は仕事なのに、こんなに人が多いんですか?」「SITEXはシンガポールで一番有名なイベントで、みんな、家電やPC、デジタルカメラ、プリンタなどを、この機会に購入するのです」
SITEXは、ユーザーにも「シンガポールで最大のデジタル家電“お買い物”イベント」として認識されている。ちなみに、PCやスマートフォン、タブレットにデジタル家電は、シンガポールの中心部にある電脳街(というよりデジタル製品専門ショップが多数入居するショッピングビル)で、いつでも購入できる。SITEX 2012の物販ブースで示す実売価格は、電脳街の価格と変わらないばかりか、電脳街では値引き交渉も可能なので、SITEX 2012の物販ブースで購入するメリットはそれほどない。SITEX 2012期間中の電脳ビルも、訪れる人は多い。
それでも、シンガポールの人は、大挙してSITEX 2012の会場に足を運んで、40型液晶テレビをお持ち帰りする。来場者の数とイベントの盛り上がり、そして、たぶん、出展企業が望む成果(製品の売り上げという、とても直接的で分かりやすい指標があるだけに)という意味で、SITEX 2012は、それぞれに参加する意味のある「デジタル家電イベント」といえるのだろう。
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