iX500ではハードウェアのみならずソフトウェアも改善されている。その1つが検索可能なPDF作成の高速化だ。今まで画像処理を終えてからOCR処理、といったようにシーケンシャルなフローになっていたものを順次画像処理をしつつ、OCR処理を行うといったパラレルなフローになったため、S1500との比較で45%短縮、つまり半分ほどの時間に高速化されている。だが、短縮された時間の定量的な比較よりも重要なのは「通常のPDF作成とほとんど変わらない時間でOCR処理までできる」という点だ。
HDDなど大容量ストレージの低価格化もあり、「画質は深く考えずにスーパーファインを選んでおく」という使い方をしている人も多いと思われるが、今回のiX500ではこれに「用途は深く考えずに検索可能なPDFにしておく」というのが加わるかもしれない。
そのほか日本語、英語ほか11言語に対応した名刺管理用ソフト「CardMinder V5.0」も付属する。従来の名刺ファイリングOCRも同梱されているので、そちらを使い慣れている人は継続して使用することもできる。
iX500に触れて感じたのは「融合的な新機能」の実現である。新画像処理エンジン「GI」プロセッサによって画像処理までScanSnapで可能になった、さらにWi-Fiがしゃべれるようになった、そこでスマホからも直接利用できるようにした、というように、副次的なメリットを多く得られる設計が特徴的だ。機構についても省スペース、省電力な等倍光学系CISを導入することで省電力化を果たすとともに、重送防止策を盛り込んだ紙送り機構を搭載している。
読取り速度については、S1500の時点ですでに解像度不問の高速読取りを実現しており、これ以上の高速化はかなり厳しいだろうと見ていたのだが、iX500はさらにスキャン全体の所要時間を縮めてきた。ドラスティックに高速化できる部分はもはや残っていないだろうが、じりじりと時間の短縮を積み上げていくメーカーの姿勢は非常にストイックで好感が持てる。
3年9カ月の間じっくりと熟考を重ねて打ち出された今回の一手は、奇をてらったり、形だけの無意味な新機能などは一切ない。それどころか、わざわざ喧伝していない細かな改善点なども多く見られる。元祖にして定番のドキュメントスキャナ、ScanSnapならではの確実な一歩が頼もしい。
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