「VAIO Duo 11」の“上質なスライドボディ”を丸裸にする完全分解×開発秘話(前編)(2/7 ページ)

» 2012年12月19日 10時30分 公開

スライド機構が最優先、だが薄さにはこだわり

 VAIO Duo 11の本体サイズは319.9(幅)×199(奥行き)×17.85(高さ)ミリ、重量は店頭販売向けの標準仕様モデルで約1.305キロ、ソニーストア直販のVAIOオーナーメードモデルで約1.290キロ以上(構成によって異なる)だ。11型クラスのモバイルノートPCとしては奥行きが短い一方、横幅がやや長く、重さもそれなりにある。とはいえ、後述する複雑な変形機構とそのメリットを獲得してこのサイズという点に注目したい。

スライド機構の高い完成度を最優先して開発が進められたVAIO Duo 11。横幅がやや長めのボディデザインとなっている

 薄型軽量モバイルノートPCの開発では、厚さ何ミリ以下、重量何キロ以下という目標を最初に決め、そこに向かって薄型化と軽量化を追求していくことが多いが、VAIO Duo 11の場合は違っていた。「新しいフォームファクタとなるSurf Sliderデザイン(スライド型ボディのデザイン)を満足できる品質に仕上げることが非常に高い壁だったため、まずはスライドの機構を完成させたうえで、全体のバランスとスペックを確保するという優先順位で開発を進めた」と金森氏は語る。

 ただし、VAIOのモバイルノートPCらしく薄さには強くこだわった。インテルが掲げるUltrabookの要件として、14型未満の製品は厚さ18ミリ以下という基準があるが、タッチパネルを搭載したハイブリッド型の製品は厚くなるため、厚さが2ミリ増してもUltrabookを名乗れることになっている。だが、VAIO Duo 11はこの2ミリぶんの妥協を許さず、通常のタッチパネルが付かないクラムシェル型Ultrabookと同様、18ミリを切る17.85ミリに厚さを抑えているのだ。

 実際にどのような薄型化の工夫を行ったかは分解して見ていくが、浅見氏の「機構設計としてはこの2ミリを有効に使うことも含めて検討していたが、『緩い基準に従って満足できるのか?』と相当いじめられた(笑)。もっとも、そこは同意できたので、タッチ対応のスライドボディで厚さ18ミリを切れるよう努力した」とのコメントには、薄型化への苦労が垣間見られる。

 鈴木氏は「ほかの厚さ20ミリ程度のタッチパネル付きハイブリッド型モバイルPCと見比べると、VAIO Duo 11の17.8ミリは確実に薄くスマートな印象が出ている。私の立場では、これはメカ屋さん(機構設計の担当)をいじめてよかった(笑)。おかげでカッコイイものができた」と薄さへの自信をのぞかせた。

左がVAIO Duo 11、右が同じ画面サイズを採用したUltrabookであるVAIO Tの11.6型モデルだ。本体サイズはVAIO Duo 11が319.9(幅)×199(奥行き)×17.85(高さ)ミリ、VAIO Tの11.6型モデルが297(幅)×214.5(奥行き)×17.8(高さ)ミリ。全体の厚さはほぼ同じだが、VAIO Duo 11の本体部は10.5ミリと薄く、液晶ディスプレイ部は7ミリあった(いずれも実測値)。VAIOのモバイルノートPCでは、液晶ディスプレイ部が非常に薄い製品も見られるが、VAIO Duo 11は特殊なヒンジ部を搭載し、タッチパネルの強度を確保するためのガラスが表面に貼り付けてあるため、やや厚めの作りだ。それでも全体の厚さは17.85ミリと、18ミリを切る薄さに仕上がっている

適材適所の素材で組み上げられたスライド型ボディ

 ボディ各部に使われる素材も、ほかのVAIOモバイルノートと異なる。VAIOモバイルノートの上位機種は剛性と軽量を高いレベルで両立するため、何層にも重ねたカーボンファイバー素材を天面や底面に用いることが多いが、今回はどこにも採用していない。これは単に製造コストの削減というわけではなく、設計上の理由がきちんとある。

 VAIO Duo 11の天面はタッチパネルを備えた液晶ディスプレイの表面になるため、強化ガラスを貼り付けたうえで、タッチやペンの操作感がよくなるコーティングを表面に施している。一方の底面にはNFC(Near Field Communication)を内蔵したことから、金属ではなく、あえて電波を通しやすいガラス繊維入りの強化ナイロン樹脂を選択した。底面はマットな塗装で指紋や皮脂が付きにくく、質感が劣るようなことはない。

 そのほかの主な部分は、液晶ディスプレイのガラス内側で画面を囲むフレーム部が樹脂、側面のヘアラインが入っている部分はアルミニウム、ディスプレイ部の背面はマグネシウム合金だ。液晶ディスプレイのヒンジ部にはマグネシウム合金を多用し、一部にアルミニウムも使っている。PC本体部のキーボード面から側面も、ヘアライン加工のアルミニウムだ。

 「天面は硬度の高いガラス、底面は強化樹脂で剛性を確保しつつ、キーボード面や側面といった目立つ部分はヘアライン処理のアルミニウムで質感にも配慮した。内部のフレームやヒンジなどは軽さと強さを両立できて加工しやすいマグネシウム合金も多用するなど、全体のバランスを考えて適材適所の素材を選択している」と金森氏はまとめる。

液晶ディスプレイの表面には強化ガラスを貼り付けており、側面はヘアライン加工を施したアルミニウムを採用する(写真=左)。本体側も側面からキーボード面は縦にヘアラインが入ったアルミニウムで質感にこだわっている(写真=右)

液晶ディスプレイ部の背面と、スライド機構を支える大きなヒンジを支えるプレートはマグネシウム合金だ(写真=左)。背面には鏡面仕上げのVAIOルミナスロゴ、レーザー刻印によるWindows 8とIntelのロゴも見られる。背面は梨地の強化ナイロン樹脂で指紋が付きにくく、さらっとした触感だ(写真=右)

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