「VAIO Duo 11」の“上質なスライドボディ”を丸裸にする完全分解×開発秘話(前編)(6/7 ページ)

» 2012年12月19日 10時30分 公開

高画素密度のIPS液晶でハイブリッド型PCをより高い完成度へ

11.6型ワイド液晶ディスプレイは、1920×1080ドットの高解像度とIPS方式による広視野角が特徴だ

 ディスプレイは1920×1080ドット表示の11.6型ワイド液晶パネルを採用する。モバイルノートPCでは少し小さめのサイズながら、フルHDの高解像度に対応し、約190ppi(pixel per inch:1インチあたりのピクセル数)の画素密度を誇る高精細なディスプレイだ。

 この液晶パネルを選択した理由について金森氏は、「モバイルノートとしての高い携帯性、タブレットモードでの持ちやすさ、しっかり打てるキーボードのサイズ確保、ペンで手書きするのに狭くないキャンバスの広さ、Windows 8のスタート画面やWindowsストアアプリを精細で美しく表示できることなど、総合的にハイブリッド型モバイルノートに最適な画面を突き詰めた結果」と説明する。

 ドットピッチが狭いことから、デスクトップUIで利用する際に文字が小さくなりすぎないよう、初期状態ではWindows 8のスケーリング設定が「中(125%)」に設定されており、精細な表示と視認性のバランスにも配慮した。

 金森氏は「これまでのユーザーのフィードバックや内部のテスト結果から、11.6型ワイド画面でフルHDの高画素密度でも不快感はなく、高精細な表示によるメリットのほうが大きいと判断した。デジタイザスタイラスのペン先が細いため、フルHDでも十分快適にペン入力ができる」と補足する。

初期状態ではWindows 8のスケーリング設定が「中(125%)」に設定されている(画面=左)。デスクトップUI(画面=中央)でもスタート画面(画面=右)でも文字やアイコンが小さくなりすぎず、ドットのギザギザを意識させない高密度な表示が得られる

 また、視野角が広いIPS方式の液晶パネルを採用するのも見逃せない。Windows 8搭載のハイブリッド型モバイルノートPCでは、標準的なTN方式の液晶パネルを装備する製品も見られるが、タブレット形状で使う場合は本体を縦位置にしたり、さまざまな角度から表示を見たりするので、画面を見る角度によって表示品質がほとんど変わらないIPS方式は断然有利だ。

 そもそも、VAIO Duo 11はキーボードモードで液晶ディスプレイの角度が固定されるため、ユーザーの体格や姿勢、設置場所の高さによって、画面を見る角度が変わってくることから、広視野角のIPS方式液晶パネルは必然だったといえる。

 画質面ではソニーの液晶テレビ「BRAVIA」やAndroidタブレット「Xperia Tablet S」で使われている「オプティコントラストパネル」の採用も触れておきたい。通常は空気層となっている液晶パネルとガラスの間に透明な樹脂を流し込んで埋めることで、外光の反射を抑え、黒浮きのない深く締まった黒を表現できるというものだ。そのため、液晶パネルモジュールは表面のガラスに接着されており、取り外すことはできない。

液晶ディスプレイの表面コートや書き味も追求

 液晶ディスプレイ自体の品質に加えて、指でのタッチ操作やペン入力にもこだわった。タッチパネルは10点マルチタッチに対応した静電容量式を採用し、これに電磁誘導式のデジタイザスタイラスを組み合わせた構成だ(ペン自体は電磁誘導式のものを使っているが、電磁誘導で電力供給をしておらず、電波でペンの座標を認識しているため、正確には電磁誘導で駆動しているわけではない)。

 使い勝手に配慮し、液晶ディスプレイ表面に貼った強化ガラスの上には、タッチやペンの操作感がよくなるようなコーティングを施している。鈴木氏は「いろいろな種類のコーティングを試し、実際に指で触れて、ペンで描いて評価した。例えば、指が引っかかると使い心地が悪いと感じるが、指の滑りを優先すると、今後はペンが滑って書きにくくなってしまう。指の触り心地とペンの書き味、この2つの最適なバランスを追求したコーティングはVAIO Duo 11だけ」と強調する。

 デジタイザスタイラスのペン先にも独自の工夫を凝らした。液晶ペンタブレットではディスプレイの表面とペンの当たる部分がどれくらいの摩擦係数になるかで書き味が変わってくるが、「液晶ディスプレイ表面のコーティングと、ペン先の形状、素材、硬さの組み合わせのベストマッチングを追求した」(鈴木氏)とし、社内での試し書きによる調査を経て2つのペン先を選出している。

 デジタイザスタイラスのペン先は2種類が標準添付され、軟らかいグレーのペン先はゴムのような弾性を備えたエラストマー、硬いブラックのペン先は摩擦係数が少なく(滑りがよく)、耐磨耗性に優れたポリアセタール(通称POM)を採用する。これをアルミボディのしっかりしたペンに装着して利用する仕様だ。好みや用途に応じて2種類からペン先が選べるのは気が利いている。

デジタイザスタイラスは直線的でシンプルなデザイン。長さが117ミリ、直径が9.5ミリ、重量が電池込みで約15グラムだ(写真=左)。硬さが異なるペン先が2種類付属し、グレーが柔らかめ、ブラックが硬めになっている(写真=中央)。電源は単6形電池1本を採用し、アルカリ乾電池を使用した場合、公称の電池寿命は約18カ月(1日4時間で週7日使用した目安)とされている(写真=右)

ペン先は非常に細く、繊細な線が描ける。また、画素密度が高いフルHDの表示を正確にタッチできる

 ペン先はいずれも先端が非常に細く、対応アプリでは繊細な線が描けるほか、画素密度が高いフルHDの画面でも細かい部分をタッチ操作しやすいため、操作補助のツールとしても役立つ。「フルHDの高精細な表示だからこそ、細いペン先が生きてくる。ウィンドウの小さな“×”マークも指より正確に押しやすい。静電容量式のタッチパネルと通常のスタイラスでは線が太くなり、筆圧検知も困難なので、書き味も操作補助ツールとしてもアドバンテージがある」と鈴木氏は語る。

 こうした高精度なペン操作の実現には、前述のオプティコントラストパネルも貢献している。通常のタッチパネル付き液晶ディスプレイと比較した場合、液晶パネルとガラス面(タッチパネル)の間の距離が縮まるため、ペンで触れた場所と実際に点が描かれる場所の見た目のズレ(視差)が小さく、細かなペン操作がしやすいのだ。

 なお、純正アクセサリには画面を保護しつつ、映り込みも抑える液晶保護シート「VGP-FLS10」(実売2000円前後)が用意されているが、これも書き味によい効果をもたらす。「液晶保護シートは表示を遮るため、輝度や発色に多少影響は出るが、表面のザラザラ感が紙により近い書き味を実現するので、ペン入力を重視する方に使っていただきたい。社内では“書き味向上シート”と呼んでいるほど(笑)」と鈴木氏はいう。

画面を保護し、映り込みも抑える液晶保護シート「VGP-FLS10」を純正アクセサリで用意(写真=左)。液晶保護シートを付けていない状態(写真=中央)と、装着した状態(写真=右)。液晶保護シートを付けると、外光の反射や映り込みが低減される一方、輝度や発色も少し抑えられる

 書き味の追求はそれだけにとどまらず、ドライバまわりのチューニングも製品の完成間近まで行った。「ペンでスッと線を書いたときに遅延せず直線で引けるか、クルクルと円を書いたときに正しく再現されるか、といった部分はドライバのチューニングが必要な領域になる。ペン入力はPC本体から発せられるノイズの影響も受けるので、ソフト的にノイズを回避するなどの改善も行っている」と鈴木氏は解説する。

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2024年04月19日 更新
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