“青”が席巻する中国スマートフォン勢力図山谷剛史の「アジアン・アイティー」(2/2 ページ)

» 2012年12月28日 10時13分 公開
[山谷剛史,ITmedia]
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一点豪華主義で台頭する中国の小規模メーカー

 「新渇望」シリーズのように、「動作クロックが1GHz以上のCPUと4型以上のディスプレイを搭載したスマートフォン」は2012年の後半に、大手通信事業者3社が積極的に行った「3Gプラン長期契約で実質無料」キャンペーンの対象機種となった。そのおかげで、「最近、地下鉄やバスやレストランでスマートフォンを使う人が増えていたから、私も、とりあえずスマートフォンを買ってみるか」という多くの人々が通信事業者のショップで契約し、無料のスマートフォンを手に入れた。

 それぞれの通信事業者が実施したキャンペーンの内容は、省によって異なるが、ファーウェイやZTE、そして、レノボといった中国大手メーカーの機種が対象になったケースが多い。この3社は、2012年の中国携帯電話市場においてシェアが急上昇したという報告もある。デジタルガジェットにそれほど関心を持たない中国人にとって、沿岸部の大都市から内陸部の小都市まで中国全土に存在する通信事業者のショップは、スマートフォンを購入する“定番”だ。中国では、ファーウェイ、ZTE、レノボを「問題なく動く廉価な大衆向けスマートフォン」と認識しているが、ZTEは、高級ブランド「nubia」を立ち上げて、イメージアップを図っている。

 電脳街のスマートフォンフロアで青をまとうスタッフを抱えている中国メーカーの1つに「魅族」(MEIZU)がある。中国には、数え切れないほどの小規模スマートフォンメーカーが存在するが、2012年の中国では、「デュアルコアで動作クロック1.5GHzのCPUを採用した高性能でいて、日本円で3万円を切る思いきった低価格のモデルを全力でプロモーションする」メーカーが台頭した。魅族は「狭小ベゼル」を訴求した「魅族MX2」を投入し、これがガジェットフリークの支持を受けて台頭した中国小規模スマートフォンメーカーの典型的な例だ。同様なケースでは、本体の厚さが6.65ミリで世界最薄を訴求する「OPPO Finder」をリリースしたOPPOも認知度を上げている。

狭小ベゼルモデルを全力で宣伝したおかげで認知度が上がった小規模スマートフォンメーカー「魅族」の専門店(写真=左)。地方都市では、「尼彩」というメーカーも専門店の数を増やしている(写真=右)

量をあきらめて質に転戦するSonyとNokia

 “青のスタッフ”が目立つスマートフォン販売フロアで、依然として“黒”を主張するのがSony Mobileだ。「Xperia S LT26i」や「Xperia neo L MT25i」は、SIMロックフリー版が中国で登場している。客入りはそれほどでないが、Sony Mobile Greater Chinaの総裁は、中国メディアに対して「量から質へ。目標は、世界一シェアの獲得から、ミドルハイエンドで先端を行くブランドの確立に変更する」とコメントしている。Sony Mobileの専門店は中国各地の電脳街にあるが、その数は、AppleやSamsungの代理店よりずっと少ない。

 かつて、携帯電話の代名詞だったNokiaは、専門店はもちろん、蘇寧電器などの大型家電量販店の携帯電話フロアに依然として専門ブースを設けるものの、シェアの低下は止まらず、店舗に客も少ない。しかし、ラインアップには、4100万画素のCMOSセンサを搭載したPureViewテクノロジー採用の「808」(OSはSymbianを導入する)、Windows Phone 8を導入する「Lumia」ブランドのNokia 820とNokia 620、そして、Windows Phone 8を導入した最上位モデルでPureViewテクノロジーを採用する「Nokia 920」など、興味深いモデルが並ぶ。

 中国におけるスマートフォン市場は、AppleとSamsungの2強をHTCをはじめとする海外メーカーが追い、中国の大手メーカーは、三大大手通信事業者のキャンペーン効果で普通の人々に広まり、特徴的なモデルを全力でプロモーションした小規模メーカーもマニアの支持を受けて台頭した。その一方で、Sony MobileやNokiaは、量より質を重視する方針に変換した。

 “青”が席巻するスマートフォン販売フロアで、2012年のスマートフォン勢力図は大きく変わった。この流れは2013年になってさらに加速するのか、それとも、新しい潮流が生まれるのか。ただ、その動きは、依然として激しいことは間違いないだろう。

いまや、内陸の小さな町まで専門店が出現するようになり、中国でもスマートフォンは、ごくごく当たり前の道具になりつつある。2013年の“中華”スマートフォン勢力図は、どのように変わっていくのだろうか

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