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「日本品質」で法人ビジネスを拡大――「MousePro」の挑戦マウスコンピューター社長インタビュー

» 2013年03月01日 00時00分 公開
[後藤治,ITmedia]

3年目を迎えた「MousePro」の野望

MouseProのWebサイト

 マウスコンピューターが法人向けPC市場に本格参入してから約2年が経過した。PC USERの読者には、高性能・高コストパフォーマンスの“尖ったPC”を作るメーカーという印象が強いかもしれないが、その一方で同社は、これまで行ってきた法人ビジネスをPC事業のもう1つの柱にすべく「MousePro」ブランドを立ち上げ、SOHO/中小企業や教育機関を中心に、今では年間1万社を超える企業導入の実績を持つまでに成長している。

 顧客にあわせて最適なPCを提案できるきめ細かいBTOメニューや、CAD/3DCGの製作現場のニーズにも応えられる高性能なシステム、そして長野県飯山工場を拠点とした国内生産による高い品質がMouseProの強みだ。

 マウスコンピューター代表取締役社長の小松永門氏は、法人市場への本格参入にあたって「ビジネス規模を3年で2倍にする」と以前のインタビューで答えているが(法人ビジネスを3年で2倍にする――「MousePro」にかける想い)、もしこの言葉が実現すれば、同社のPC事業で法人ビジネスの占める割合は40%近くまで急拡大することになる。これはかなりアグレッシブな目標と言っていいだろう。2011年のブランド立ち上げから3年目を迎えたMouseProについて今後の展望を聞いた。

顧客ニーズにあわせてラインアップを拡大

マウスコンピューター代表取締役社長 小松永門氏

 MouseProの製品ラインアップは現在6シリーズを数える。当初はスリムデスクトップPC「MousePro iS」と、ミニタワー「MousePro i」の2シリーズで展開していたが、次いで15.6型ワイド非光沢液晶を搭載する「MousePro NB」と、コンパクトサーバ「MousePro SV」が加わり、2012年は超小型ボディの「MousePro M」や、10点マルチタッチ操作に対応した液晶一体型PC「MousePro A」などのユニークなモデルも登場している。

 小松氏は「お客さまが弊社のPCに求める主流はやはりスリムとミニタワーですが、最近はノートPCの出荷も伸びています。特に東日本大震災以降は、緊急時にバッテリー駆動ができる点を重視される方が増えていますね。SOHO/中小企業向けに提案したサーバモデルも、個人的には少し心配だったのですが、期待値を上回る反応をいただけました」と語る。MouseProの成長は、省エネやデータ保全への意識が高まりつつある法人需要にうまく合致した製品を投入できたことも要因の1つだろう。

 一方、ビジネスの拡大には、従来のオフィス向けPCとは異なる新たな分野での取り組みも欠かせない。「VESAマウントに対応したミニPCのMousePro Mは、デジタルサイネージとしての用途やブラウザベースでの事務作業に適しています。また、次のステップとして、タッチ機能の必要性に悩んだのですが、今後普及が期待されるテレビ会議などの用途を見込んでオールインワンのマルチタッチ対応PCを投入しました」と小松氏。「(MousePro Aは)まだシステムインテグレータの検証機として導入されている段階ですが、テレビ会議システムを扱う販売店さんなどに注目して頂ければ」と、新たな需要の掘り起こしにも意欲的だ。

スリム筐体の「MousePro iS」とミニタワー筐体の「MousePro i」。どちらも幅広いBTOカスタマイズに対応し、強力なグラフィックスカードを搭載したハイスペックな構成も選択できる(写真=左)。Windowsサーバ搭載モデル「MousePro SV」と超小型PC「MousePro M」(写真=中央)。非光沢パネルを採用した15.6型ノート「MousePro NB」と、マルチタッチ対応液晶一体型PC「MousePro A」(写真=右)

 小松氏は2012年度のMouseProを振り返り、「市況の厳しい中ではありましたが、法人ビジネス全体では堅調な伸びを達成できています」と胸を張る。「まだ2年目が終わっていないので、途中経過の数字にはなりますが、成長率は約1.5倍と目標に向けて順調に推移していると言っていいと思います」。

「日本品質」とサポート強化でリピーターが増加

 MouseProの好調をアピールする小松氏だが、その原動力は新規顧客のリピート率向上にあるという。「初めてのお客さまが弊社の製品を実際に使ってみて、きちんと期待通りお使い頂けること。また、仮に故障があった場合でも、万全なサポートを通して、継続的に利用できることが、結果的に次の取引につながっていると考えています」――そのためにMouseProが今最も注力しているのが、日本で製造して日本でサービスを展開する「日本品質」だ。

 小松氏は「最先端の技術をいち早く提供したり、価格もできる限り努力させて頂いておりますが、何より重視しているのは、品質をいかに上げていくかという点です。弊社が考える“日本品質”とは、いかに故障しないかという『製品品質』はもちろんですが、営業マンが顧客に製品の情報を正しく伝えられる『営業品質』、コールセンターへの問い合わせに対し、的確な対応を行い解決していく『応対品質』、キーボードの使用感など実際に使ってみないと分からない部分の『機能品質』、仮に故障があった際のサポートをしっかりと提供する『修理品質』の全部で5つ。この5つに対して、日本のお客さまの視点で満足できるレベルを達成していくという包括的なものです」と説明する。

 このため、社内で製品に対する勉強会を開いたり、直販サイト内のコンテンツから英語表記を極力省いて分かりやすくする、あるいはキーボードのタッチやファンノイズを改善したり、開発段階でストレージの空き容量が確認できないシステム構成は販売しないといった、単なる故障率を超えた“品質”への取り組みが行われている。

 その中でも特に成果を上げているのが修理工程の品質管理を強化した点だ。具体的には、生産拠点の飯山工場と同様に、埼玉の修理センターでもストレステストを実施することにより、修理依頼から3カ月以内に再び修理センターへ戻ってくる「再修理率」が大きく下がったという。「ただ、品質向上の面で効果がある半面、修理工程が増えているので、短期修理が難しい部分もあります。今後は修理納期に対しても、できるだけお客さまをお待たせしないよう、短期修理を実現していきたいと考えています」(小松氏)。

3年計画の最後の年「奇をてらわず、地道に積み重ねていくだけ」

 冒頭で触れたように、MouseProは今年、「ビジネス規模を3年で2倍にする」という3カ年計画の最後の年を迎える。この目標に対して、今後どういった取り組みを行っていくのだろうか。

 小松社長は「実を言うと、3年目だからといって特に新しい施策はそんなにないんです」と頬を緩ませる。「これまで法人ビジネスに対して心がけてきたことは、マウスコンピューターにMouseProというブランドがあることを知ってもらい、パートナーさまとの展示会などを通じて実際に製品に触って頂き、そして導入して頂いたお客さまの期待を裏切らないようにするということです。そのために、『日本品質』を満たせるよう取り組んできました。ただ、その一方で、先ほど触れた修理納期など、まだまだ磨けるところはあります。そうした細かい部分を徹底的にやっていき、『MouseProなら安心して使って頂けます』というメッセージを発信していくことが、お客さまとの信頼を築くうえで最も重要なことだと思っています」。

 3年目は地道に積み重ねていくだけ――そう話す小松社長の言葉は、法人ビジネスをPC事業全体の柱に成長させるという目標への確かな自信を感じさせる。“MouseProの野望”が結実するのか、2013年のマウスコンピューターを見守りたい。

 なお、MouseProのWebサイトでは、「誕生2周年キャンペーン」(2月4日〜3月22日)を実施中だ。キッティングサービスを無料で提供したり、製品到着後30日以内なら返品・返金が可能など、全部で5つの特典が用意されているので、PCの導入を検討している企業は要チェックだ。

MouseProは2月4日から3月22日まで「誕生2周年キャンペーン」を実施中だ

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