下に掲載した評価機の基本スペックを見れば分かるように、国内向けに販売されるErazer X700は、ケースの独自性が際立つ半面、ゲーミングPCのスペックとしては特に目を引く部分はない。おそらくコストパフォーマンス面を考慮してのことだと思われるが、SandyBridge-E+X79 Expressベースの基本システムを採用しながら、メモリはクアッドチャンネルではなく、グラフィックスもSLI(またはCrossFire)ではないし、性能重視の今どきのPCでシステムドライブにSSDを採用していないのもやや不満だ。
モデル名 | Eraser X700 |
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CPU | Core i7-3820(3.6GHz/最大3.9GHz) |
チップセット | Intel X79 Express |
メモリ | 8GB |
ストレージ | 1TバイトHDD |
光学ドライブ | DVDスーパーマルチ |
グラフィックス | GeForce GTX 660(1.5GB) |
OS | 64ビット版Windows 8 |
価格 | 15万150円 |
とはいえ、そうした部分は(自己責任になるが)将来的に自分でアップグレードすることも可能で、ハイエンド向けの基本システムや、拡張性とメンテナンス製の高いケースなど、ポテンシャルは非常に高い。もちろん、標準構成でもゲームタイトルの推奨PC環境を満たす程度には高い性能を備えており、事実、3月22日発売のPC版「バイオハザード6」の推奨PCに認定されている。将来を見据えたバランスのよいベースモデル、ととらえることもできなくはない。それでは定番ベンチマークテストでパフォーマンスをチェックしていこう。
まずはWindows 8のエクスペリエンスインデックスのスコアだが、CPUとメモリが8.1、グラフィックスがともに7.8、プライマリハードディスクが5.9と、HDDを除き高いスコアでまとまっている。Windows 8を快適に操作できる性能なのは間違いないが、120Gバイト程度でもよいので、できればシステムドライブにSSDを使いたいところ。PCの総合性能を測るPCMark 7の結果も、System Storageの値が影響し、総合スコアは4072にとどまった。
一方、グラフィックス性能を測る3DMark11および3DMark Vatnageの結果は、Performanceの総合スコアでそれぞれ、6703、23211となった。グラフィックスにGeForce GTX 660を採用するため、ゲーミングPCの中ではミドルレンジといったところで、外観デザインからすると性能はやや控えめだ。最新のPCゲームをプレイするのに不足はないとはいえ、ゲーミングブランドを掲げる第一弾の製品としてはやや物足りない印象を受ける。
なお、ゲームタイトルのベンチマークでは、ストリートファイターIV ベンチマーク(1280×720ドット)が40930/平均436.69fps/A、モンスターハンターフロンティアベンチマーク【絆】(1280×720ドット)が19508となった。
Erazer X700は、ポテンシャルの高い基本システムと、静音性と拡張性の高いケース、そしてゲーマー心に訴える優れたデザインが特徴だ。PCゲーム用途だけあって、ビデオ編集などの高負荷な作業も難なくこなせる高いパフォーマンスも備えている。ただしその一方で、超ハイエンドモデルも視野に入れたプラットフォームを採用しながら、それを生かし切れていない印象も受ける。スペックが固定になってしまう国内向けモデルでは、2way-SLIやシステムドライブにSSDを選べない点も惜しい。
そして最大の問題は価格だ。発表当初は17万円前後とアナウンスされていたが、現在は評価機の構成で15万150円と2万円近く下げられている。だがそれでも、コストパフォーマンスを追求したゲーミングPCに比べると割高感は否めない。せめてグラフィックスカードは、グレードの高いGeForce GTX 680にしてほしいというのが正直なところだ。
とはいえ、水冷システムを採用した独特なデザインのケースには、コストパフォーマンスでは計れない魅力もある。将来的なパーツのアップグレードも含めて末永く使えるゲーミングPCが欲しいという人、Erazer X700のデザインに運命を感じた人、「むしろオレは中世騎士の生まれ変わりだ」という人は、是非検討してみてほしい。
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