それでは、ENVY120のエンジン性能を見ていこう。ここでは出力速度を検証するため、PCからのA4普通紙印刷(モノクロテキスト、カラーチャート&テキスト)、PCからのL判フチなし写真印刷、複合機単体でのL判フチなし写真印刷、A4普通紙カラーコピーをそれぞれ実施して、所要時間を計測した。
測定方法については、PCからプリントする場合はスプール時間を含めず、複合機本体が用紙を引き込んだ瞬間から計測を開始し、排紙と同時に終了とした。ダイレクトプリントとコピーではデータ処理時間も性能の一環なので、スタートボタンの押下と同時に計測を開始している。
印刷/コピー速度のテスト結果 | |
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設定 | 出力時間 |
A4モノクロ(PCから印刷) 普通紙1枚 | |
標準 | 6秒8 |
ドラフト | 3秒3 |
A4カラー(PCから印刷) 普通紙5枚 | |
標準 | 2分7秒6 |
ドラフト | 33秒5 |
A4カラー(PCから印刷) 普通紙5枚/自動両面印刷 | |
標準 | 2分25秒0 |
ドラフト | 51秒9 |
L判(PCから印刷/フチなし) アドバンスフォト用紙1枚 | |
最大dpi | 1分40秒8 |
高画質 | 45秒5 |
標準 | 39秒3 |
L判(メモリカードから直接印刷/フチなし) アドバンスフォト用紙1枚 | |
標準 | 55秒1 |
A4カラーコピー 普通紙1枚 | |
高画質 | 1分17秒9 |
標準 | 39秒2 |
ドラフト | 16秒5 |
まずはPCからのモノクロテキスト印刷だが、データはJEITAのプリントテストパターン「J1.DOC」を用いた。印刷用紙は普通紙、用紙サイズはA4という設定で「標準」と「ドラフト」の2モードで印刷時間を計測している。結果はどちらのモードも十分に高速でいうことはない。ドラフトモードの出力品位は色がやや薄いながらも、判読は十分に可能だ。ただし、この時間差ならば標準モードだけを使ってもよいだろう。
PCからのカラー印刷ではJEITAのプリントテストパターン「J9.DOC」を用いている。カラーチャートとテキストが混在した5ページのデータだ。まずは片面印刷の結果だが、ドラフトの33秒5に対して、標準モードでは2分以上もかかった。カラー印刷でもドラフトの品位がそれなりによいので、用途や原稿によって使い分けるのが賢明だ。一方、両面印刷は良好な結果で、片面印刷の結果に20秒弱ほど上乗せした程度で済んでいる。
写真印刷はオリジナルの写真データをL判フチなしで出力した。PCからの印刷では「標準」「高画質」「最大dpi」の3モードで計測している。結果としては、最高品位設定の最大dpiでもさほど遅くはなく、満足できるレベルだ。モードごとの画質差は微妙にあるが、あまり気にしない人ならば標準モードでも許容できるだろう。画質差は階調表現に出やすいようなので、ハイキーやアンダーなデータは最高dpi、普通のスナップは高画質と、データに応じて使い分けるのがよい。
メモリカードからのダイレクトプリントは、オリジナルの写真データをL判フチなしで出力した。結果は1分弱だ。PC経由のどの印刷品位モードに相当するかは不明ながら、標準モードとして満足できるスコアといえる。
普通紙カラーコピーの速度は、「標準」モードで39秒2だった。1枚のカラーコピーにしては結構時間がかかったが、そのぶん品質は高い。ドラフトモードならば16秒5で済むので、これも状況に応じて使い分けるとよいだろう。
なお、動作音については可もなく不可もなしといったところだ。薄型のボディながら、ガッチリとした作りなので、印刷時のきしみ音などはほとんどない。ただし、他社が用意しているような静音モードを搭載していないため、静かな環境ではモーターやキャリッジの音がそれなりに響く。
公称のインクコストは、A4普通紙へのカラー印刷が1枚あたり約12.9円だ。これはISO/IEC 24711の測定基準によるもので、印刷したデータはチャートとドキュメントが混在したISO/IEC 24712を用いている。
写真印刷のコストは、L判写真が1枚あたり約22.9円(インクとアドバンスフォト用紙のコスト)だ。プリントヘッド一体型のインクカートリッジを採用し、しかもカラー3色のインクは1つのカートリッジにまとめているため、ランニングコストは少し高めとなっている。
この測定に用いられたインクカートリッジは、増量タイプのHP 121XL(ブラックは2982円、3色カラーは3486円 ※いずれもHP直販価格)なので、標準タイプのカートリッジではもう少しコストが上がるだろう。
以上、ENVY120の性能と機能を一通りチェックした。価格はHPの直販価格で2万6880円、ショップによっては2万円台前半で販売中だ。プレミアムブランドのデザイン重視モデルだけあって、家庭向けのA4インクジェット複合機としては高価格帯に位置する。
最後にまとめると、ENVY120はやはり一長一短のある個性的な製品ということだ。長所としては、洗練されたデザインの薄型ボディをはじめ、原稿を確認しながら電子文書化できるシースルースキャン、大画面のタッチパネル付き液晶モニタ、自動で動作してユーザーの手を煩わせない給排紙機構や操作パネル、充実したモバイル/クラウドサービスが挙げられる。
一方の短所は、スリムボディと引き替えになった、価格の割に控えめなプリンタの仕様だ。印刷品位は写真重視でなければ問題ないだろうが、給紙が1系統で容量80枚は少々物足りない。ランニングコストも同社のほかの複合機に比べると割高になってしまう。
とはいえ、個人的にはこのスリムボディで自動両面印刷ユニットを内蔵している(しかも自動両面印刷の時間的なロスが少ない)だけでも、サブ機としてかなり食指が動く。自室や書斎でバリバリ印刷するのではなく、リビングなど目につく場所にインテリア感覚でデザイナーズ家電とともにコンパクトに設置して使いたい、そんなニーズを最も満たしてくれるのは、このENVY120ではないだろうか。
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