U3014にはデル独自のソフトウェア「UltraSharp Color Calibrtion」が付属しており、「i1 Display Pro」と組み合わせることで、ハードウェアキャリブレーションが行える。輝度と色空間(sRGB、Adobe RGB、Rec. 709、DCI-P3、UltraSharpネイティブ)を指定するだけで測色から調整、ICCプロファイルの作成まで自動的に行える。映像編集用の色空間に調整できるところもうれしい。
今回はi1 Display Proが手元になかったので、発色についてはX-Riteの測色器「i1 Pro」を用いて測定した。プリセットの画質モードは多数あるが、色再現性を求める用途で使用頻度が高いと思われるsRGBモードとAdobe RGBモードを選択している。
U3011では輝度の下げ幅が小さく、輝度の調整(sRGBは80カンデラ/平方メートル、Adobe RGBは120カンデラ/平方メートル)に苦労したが、U3014ではかなり低いレベルまで下げられるようになった。輝度の調整は0〜100の101段階で設定でき、評価機で輝度の調整幅を調べたところ、最小で36カンデラ/平方メートル、最大で290カンデラ/平方メートルだった。なお、14段階で約80カンデラ/平方メートル、25段階で約120カンデラ/平方メートルとなる。
まずはガンマ補正の測定結果だが、この線は始点と終点が同一であることや、RGBの入力と出力が1:1であることが望ましい。RGBの各線がずれていると、グレーのバランスが崩れ、色かぶりなどの問題が発生しやすくなる。結果はsRGB、Adobe RGBともに芳しいものではなかった。sRGBは赤と青は比較的整っているが、緑が下方向に大きく補正されている。Adobe RGBは緑の補正に加えて、青が暗部で乱れている。
U3014は工場出荷時にカラーキャリブレーションを行い、色補正完了証明書を付属するなど、色再現性にこだわったモデルとされているが、今回の計測ではプロ向けのカラーマネジメント対応液晶ディスプレイとしては、階調再現性が少々物足りない結果になった。
次に測定時に作成したプロファイルを用いて、代表的な色域の規格と各モードの色域を比較した。色の付いている部分がディスプレイの色域、薄いグレーの部分がsRGB規格およびAdobe RGB規格の色域だ。Adobe RGBモードの結果は全体的にAdobe RGBよりもわずかに小さいものの、これだけカバーできていれば実使用で困ることは少ないだろう。sRGBは青、マゼンタ、オレンジの領域がわずかに足りないものの、ほぼ全域をカバーできている。
最後に工場出荷状態に戻してパネルネイティブの状態でも測定を行った。カラーモードはプリセットの標準モード、輝度とコントラストはともに50段階(204カンデラ/平方メートル)となっている。ガンマについてはsRGBモードやAdobeRGBモードよりも良好だが、Gの乖離は小さいとは言えない。一方、色域は広大でAdobe RGBモードを上回る領域をカバーできている。
キャリブレーション結果以外の部分については、目視でもチェックした。階調の再現性は高いが、輝度を落とすと色ムラが目立つ。青と赤が入り混じったようなムラで、表示域全体を使用するようなアプリケーションでは気になるかもしれない。輝度ムラについてはわずかな高低はあるものの全体的に安定している。
従来モデルのU3011はプリセットモードの性能(sRGBやAdobe RGBの再現性)や整ったガンマカーブなど表示品質が非常に高く、特に調整を行わなくても存分に運用できたが、U3014は測色器の測定結果からも、色を扱う作業に用いるには調整を行う必要があると感じた。その分、ハードウェアキャリブレーションに対応することは重要なポイントだろう。
Adobe RGB色域にも対応できるようなディスプレイは価格が高く、選択肢も少ない。ハードウェアキャリブレーションにより長く安定して使えることは仕事で用いるツールとしての安心感につながるはずだ。それだけに、i1 Display Pro以外の測色器にも(せめてi1 Proくらいは)対応してほしかった。
また、測色器を持たないライトユーザーでも、色域はしっかりとカバーできていること、このクラスのディスプレイとしては価格が低めなことから、1画面で広大な作業領域がほしいという用途ならばお勧めできる1台だ。
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