続いて60GHz帯無線を用いる802.11ad/WiGig(Wireless Gigabit)も、2013年3月にWiGigテクノロジを推進するWireless Gigabit Allianceと統合し、Wi-Fi Allianceが60GHz帯に関する活動──技術と拡張、その認定プログラムの策定作業を実質引き継ぐことで、より実現性が増してきた。
WiGigも802.11acと同じく理論値最大約7Gbps、ギガビットクラスの高速な伝送速度と低レイテンシを特長とする次世代近距離高速無線伝送規格の1つ。非圧縮HD動画のストリーミング伝送や認識できないレベルでの超低レイテンシ性能によるゲームディスプレイ用途など、802.11acよりさらに近距離での利用シーン──一般クライアント機器との高解像度ディスプレイ、あるいはその他周辺機器とのインタフェースケーブルを代替し、高速に無線接続できる規格としての活用が期待されている。Wi-Fiを用いたワイヤレスディスプレイ接続技術としてIntel WiDiなどをサポートする機器はすでに多く存在するが、より高速かつ低遅延制を維持しつつ、周辺機器を隔てなくワイヤレス接続するワイヤレス接続手段として、ベンダーの採用例増加/対応機器の増加とともにコンシューマー層にも自然に普及してくる思われる。
コンシューマー向け対応機器においては、2013年から2014年にかけて5GHz帯802.11a/n/acと2.4GHz帯802.11b/g/nの双方をサポートする「デュアルバンド対応」機器が普及、2014年以降、さらに60GHz帯802.11adも含めた「トライバンド対応」機器が登場する。ミドル〜ハイクラス層向けはトライバンド対応、ロー〜ミドル層向けはデュアルバンド対応にてすみ分けられる感じだ。
ほぼすべての機器において、すでに広く普及する2.4GHz帯の下位互換機能を取り入れる802.11ac対応機器と同様に、802.11ad対応機器も60GHz帯から5G/2.4GHz帯へシームレスなハンドオーバーを実現する機能を持たせる──完全な下位互換性能を確保する計画だという。802.11adのブランド名をWiGigとするかは2013年4月現在未確定だが、技術を示す言葉として活用していくようだ。認定プログラムは2014年にリリースする予定としている。
2012年9月に認定プログラムを開始した「Miracast」、「Passport」も順調に推移している。
Miracastはデータ容量の大きいHDクラスの動画コンテンツを高速かつ遅延なく、かつ簡単な接続設定手順で無線伝送することを目的にした主にAV機器活用シーン向けの統一規格。対応機器は500を超え、そのうち76%がテレビに、10%がスマートフォンに採用されている。既存PCやスマートフォンのアクセスポイント/ルータ類を中継する手段ではなく、機器同士を直接接続(ペアリング)できる点が少し異なる。テレビとスマホ、それぞれが対応していれば、スマホの映像をテレビへ直接無線伝送できる点がこれまでより手軽なところだ。
Wi-Fi Passportは、スマートデバイス/ユーザーの急増により全世界でひっ迫しているLTE/3Gデータ通信をWi-Fi+固定回線へ逃がす──データオフロードのための有効施策として各国の通信事業者への対応を推進、間接的にコンシューマーにもメリットをもたらすとする機能だ。2013年2月にNTTドコモと韓KT、中国移動通信で公衆無線LANサービスでの国際ローミング施策で合意。米AT&Tも2013年後半より23カ国で国際ローミングサービスを開始するなど、各国の通信事業者は、公衆無線LANサービス接続における国際的な合理化施策を積極推進している。
ポイントは、ひっ迫するモバイル通信網から公衆無線LANスポットへ自然にオフロードさせつつ、それを利用者のメリット(国際ローミング利用が可能など)となるよう構築することだ。汎用的な操作インタフェースを持たない機器、デジタルカメラやウエアラブル機器などでも利用できるようにする機能、IDやパスワードの入力なしに切り替える機能、アカウントをその場で新規作成できる機能などを盛りこみ、2013年後半に更新版認定プログラム「Wi-Fi CERTIFIED Passport Release 2」をリリースする。
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