“プロ級の色再現性”は安価な23型液晶でも健在か?――EIZO「ColorEdge CS230」を試す(後編)約6万円の“カラマネ”液晶を徹底検証(2/5 ページ)

» 2013年04月15日 19時30分 公開

初心者向けの簡単フォトカラーマッチングソフトウェアも用意

「ColorNavigator Elements」は、ColorNavigatorの簡易版というより、まったく異なる初心者向けのフォトカラーマッチングソフトウェアだ。OSはWindows XP/7/8、Mac OS X10.6.8〜10.8に対応する

 ColorEdge CS230には、独自のフォトカラーマッチングソフトウェア「ColorNavigator Elements」も用意されている。こちらはColorNavigatorが付属しないディスプレイ単体モデルでも無償で利用可能な初心者向けソフトウェアだ。ColorNavigatorとは排他利用になるので、ColorNavigatorを導入した環境では不要となる。

 ColorNavigator Elementsは、外付けのキャリブレーションセンサーを使わずに、4ステップの簡単な手順で写真プリントに合わせてディスプレイの表示を調整できるのが特徴だ。EIZO独自の写真データもしくはユーザー自身で撮影した写真データをソフトウェアに取り込み、プリントした同一の写真データと見比べながら、ソフトウェア上で写真データの見た目の明るさと色味を調整することで、プリントとディスプレイの表示を近づけることができる。

 4月1日に新バージョンの1.0.2が公開され、調整目標の数が3つまで設定できるようになったほか、色合い調整の作業にアンドゥ機能が加わるなど、使い勝手が向上した。調整結果についてはColorNavigatorと同様、本体内蔵のコレクションセンサーで定期的な輝度と白色点の自動補正が可能だ。

 ColorNavigator Elementsはまったくカラーマッチングに対する知識がなくても、見た目だけでプリントとディスプレイの表示を近づけられるため、初心者には有用だろう。しかし、色再現にクセがあるプリンタの出力にディスプレイの表示を合わせることにもなりかねないので、調整後の表示でフォトレタッチなど色を扱う作業をする場合は、元画像データも保存しておくことをおすすめする。そうしないと、プリンタを買い換えたら発色傾向が大きく違っていて、レタッチした画像の色味がおかしくて使い物にならない、といったトラブルの発生も予想されるからだ。

 また、EIZOがColorEdge以外のディスプレイ(FlexScanの一部機種やFORIS FSシリーズ)向けに提供してきた簡易カラーマッチングツール「EIZO EasyPIX」よりも機能は絞られており、輝度や色温度、ガンマの調整目標を指定するような機能が一切ないことから、ディスプレイのキャリブレーションを少しでもかじったことがあるユーザーには物足りないだろう。

 やはり、ColorEdgeならではの性能と機能を最大限に生かすには、ColorNavigatorとの組み合わせがベストだ。

ColorNavigator Elementsを開始すると、まずはディスプレイの表示を写真用設定にすることを確認するダイアログが表示される(画像=左)。プリントとのカラーマッチングに使う画像は、EIZOが提供するデータとユーザーが用意したデータから選べる(画像=中央)。EIZOが提供する画像データをドラッグ&ドロップで取り込んだところ(画像=右)

取り込んだ画像データとプリントした紙を見比べながら、画面右に表示される色合いと明るさのメニューを調整し、見た目を近づけていく(画像=左)。色の変化が目立ちやすい肌色と空色は個別にバーで調整できる(画像=中央)。調整が済むと、本体に内蔵された「コレクションセンサー」が自動で計測を開始し、以後は輝度と白色点を保持する表示補正が自動的に行える(画像=右)

充実した調整メニュー、目の疲れを抑えるPaperモードも

 基本的にColorEdgeシリーズは、用途に応じた表示の調整目標を定め、ハードウェアキャリブレーションを行って常用する製品だ。したがって、通常のディスプレイのようにOSDメニューを設定する機会は少ないだろうが、操作ボタンとOSDメニューの機能についても触れておこう。

 操作ボタンは液晶ディスプレイ部の右下に横一列で並ぶ。電源ボタンをはじめ、入力信号を選択する「SIGNAL」、用途別のカラーモードを切り替える「MODE」、そしてOSDメニュー操作用の「ENTER」「↑」「↓」「EXIT」と、7つのボタンで構成されている。ボタンを押すと、すぐ上の画面に押したボタンの内容を示すボタンガイドが表示されるので、薄暗い場所でも使いやすい。

 用途別のカラーモードは、キャリブレーション結果が割り当てられる「CAL」モードのほか、sRGB規格に近い表示になる「sRGB」モード、輝度と色温度、コントラストが低下して紙の見え方に近い風合いになる「Paper」モード、そして各種設定をカスタマイズできる3つの「User」モードと、計6つから選べる。使わないモードは、MODEボタンを押した際に非表示にする設定も可能だ。

 色を扱う以外の作業、例えば文書の閲覧や作成では、明るさやブルーライトを抑制して目に優しい表示とするPaperモードが役立つ。Paperモード利用時には、周囲の明るさに応じた自動輝度調整機能「Auto EcoView」も併用するのが効果的だ(CALモードでは自動的にオフになる)。

操作ボタンは液晶ディスプレイ部の右下に横一列で並ぶ(画像=左)。ボタンを押すと、すぐ上の画面に対応するボタンの機能を表示するボタンガイド機能が用意されている。カラーモードは6つから選択可能だ(画像=右)

 エントリーモデルとはいえ、さすがはColorEdge。OSDの調整項目は豊富だ。輝度は50〜300カンデラ/平方メートル、色温度は4000〜10000Kまで100K刻み、ガンマは1.6〜2.7と数値で細かく指定できるため、実際の値とは少し誤差が生じる場合があるにしても(数カンデラ程度の誤差があるにしても)、目標とする値に合わせやすい。

 さらに、3色(RGB)のゲインに加えて、6色(RGBCYM)の個別調整、色相、濃度、コントラスト拡張、輪郭補正、オーバードライブ(オン/オフ)、スケーリング表示(ドットバイドット、アスペクト比を維持して拡大、アスペクト比を無視してフル拡大)、HDMI設定のノイズリダクション、カラースペース(オート、RGB、YUV 4:2:2、YUV 4:4:4)、省電力設定などのメニューを用意している。

 また、発色の仕方を2パターン(階調表現重視か、sRGBの再現性重視か)から選べる「クリッピング」設定や、画面表示の均一性設定を2パターン(輝度と色の均一性重視か、高輝度と高コントラスト重視か)から選べる「DUE Priority」設定といった、カラーマネジメント対応ディスプレイらしいマニアックなメニューも持つ。

 なお、EIZOは製品内部の電気部品の動作を安定させるため、起動後30分以上経過してからの調整を推奨している(これでも輝度ドリフト補正回路により、起動から表示安定までの時間は通常より短縮されている)。

輝度(ブライドネス)や色温度、ガンマは数値で指定できる(画像=左)。色合い、色の濃さ、コントラスト拡張、輪郭補正、6色調整など、非常に細かな調整にも対応する(画像=中央)。画面のスケーリング方法やオーバードライブのオン/オフも選択可能だ(画像=右)

内蔵の外光センサーを利用した自動調光機能「Auto EcoView」(画像=左)や、電力/CO2削減量を表示する機能「EcoView Index」(画像=中央)も備えている。普段使わないカラーモードは、MODEボタンを押したときに表示しないよう設定することもできる(画像=右)

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