大解説! Intelの“モバイル”SoC戦略をまとめてみたモバイルの進化はムーアを超える(3/3 ページ)

» 2013年04月19日 18時46分 公開
[本間文,ITmedia]
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IntelだからできるCPU性能を使い切れ

 Intelアーキテクチャの優れたCPU性能を、新しいユーザー体験の創出に生かす試みも進めている。中国版YouTubeといえる動画共有サイトの酷土豆(Youku Tudou)では、動画の録画や再生をジェスチャー認識で行うアプリの開発をIntelと共同で行ない、ユーザーの“手を煩わせる”ことなく、動画の撮影とSNSへの投稿ができる環境の開発計画を明らかにした。今後、ナチュラルユーザーインタフェース(または、知覚インタフェースとも呼ぶ)に対応したAppやサービスを充実させることで、IntelのSoCの持つすぐれた処理性能を訴求する考えだ。

Intelは、Androidモバイル環境の整備に1200名のエンジニアを割り当てており、Googleに次いでNo.2の貢献度だと主張する(写真=左)。Youku TudouとIntelが共同で開発したジェスチャーを使う動作再生操作のデモ(写真=中央、右)

 すでにこの報告でも紹介しているが、IntelのSoCロードマップにおいて、2013年内に22ナノメートルプロセスルールを採用するタブレットデバイス向けSoC「Bay Trail」を投入し、2014年前半にスマートフォン向けの「Merrifield」を投入する計画だ。これらのSoCは、ともに開発コード名“Silvermont”と呼ぶ新世代CPUコアを採用する。Intelの関係者によれば、Silvermontは、現行のAtomアーキテクチャやCoreプロセッサー・ファミリーとも異なる、「まったく新しいアーキテクチャになる」という。

 Bay Trailでは、Silvermontをクアッドコア構成で搭載する“Valleyview 2”をCPUコアに採用し、グラフィックスコアには現行の第3世代Coreプロセッサー・ファミリーで採用するIntel HDグラフィックスコアベースになる。一方、Merrifieldは、Silvermontをデュアルコア構成で統合する“Tangier”を採用し、グラフィックスコアはIntel HDグラフィックスベースになるとOEM関係者は証言している。

 Intelとしては、22ナノメートルプロセスルール世代のSoCで、CPUやグラフィックスアーキテクチャを一本化することで、マルチプラットフォームのサポートが容易になるほか、SoCに統合するIntel以外の半導体設計が少なくなれば、2014年に予定している14ナノメートルプロセスルールへの移行もスムーズにできるという考えがあるようだ。

 競合するプロセッサベンダーに比べて、2世代は進んでいる半導体製造技術と、PC向けCPUで培ったリファレンスデザインやソフトウェア開発環境の提供などによって、今後、Intelがモバイル市場で勢力を拡大していけるのか、もしくは、またしても敗退していくのか、しばらく、Intelの生き残りをかけた戦いが続くだろう。

Merrifieldでは、50パーセント以上のパフォーマンス向上と、長いバッテリー駆動時間を両立するという(写真=左)。Bay Trailを採用するタブレットデバイスでは、2倍以上のパフォーマンスアップを実現できるとともに、Windows 8とAndroidをサポートする予定だ(写真=中央)。SoCのCPUコアロードマップ。BayTrailやMerrifieldでは、まったく新しいCPUアーキテクチャを導入するSilvermontコアを採用する(写真=右)

Intelは、モバイル市場向けSoCでは消費電力を維持しつつ高性能化を図り、PC向けのCPUコアでは省電力化を進めることで、よりパワフルなタブレットデバイスが実現できるようにする(写真=左)。Intelのモバイル戦略において、2012年に製品へのSoC採用実績を積み重ね、2014年と2015年でモバイル市場におけるリーダーシップを強化する(写真=右)

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