AMDが次世代APUを発表、タブレットや薄型ノートPC向けに省電力化を加速第2世代の省電力CPUコア“Jaguar”でIntelを追撃(1/2 ページ)

» 2013年05月23日 13時01分 公開
[本間文,ITmedia]

“Jaguar”を採用した次世代省電力APUを発表

同社のAPU戦略について語るリサ・スー上級副社長

 AMDは5月23日、次世代省電力APU(Accelerated Processing Unit)として、タブレット端末向けに“Temash”(テマシュ)を、ノートPC向けとして“Kabini”(カビニ)を開発してきた。この両APUのCPUコアには、同社にとって第2世代の省電力CPUコアとなる“Jaguar”(ジャガー)を採用し、アーキテクチャを刷新している。

 Jaguarは、同社が「Catシリーズ」と呼ぶx86省電力CPUコアの第2世代製品で、現在AMD EシリーズやZシリーズで採用されている“Bobcat”(ボブキャット)コアの後継だ。このことは、これまでエントリーモデルとして展開してきたCPUコアを、メインストリーム市場にも展開することを意味する。

 同社で製品戦略などを統括するリサ・スー上級副社長は、その狙いを「PC市場に新たに加わり、著しい成長が予想されるデバイスに注力するため」と説明している。つまり、タブレットや、クラムシェルタイプのノートPCにもタブレットにもなるハイブリッド機、タッチスクリーンを備えた小型のノートPCなどをメインターゲットにすべく、APUの省電力化を加速した形だ。

 同氏はさらに、IntelのCPUも半導体エリアにおけるグラフィックス機能の割合を増やし続けていることを引き合いに、「これらの新しいデバイスでは、グラフィックス機能の重要性が増している」として、同社の持つ優れたグラフィックス技術を生かし、変革期に差しかかったPC市場における勢力拡大を図っていく意向を示す。

AMDの成長戦略。タブレットやハイブリッド型端末など、PC市場における新しいデバイスをターゲットとしたAPUの投入や、ARMベースの省電力サーバ向け製品などを掲げるが、その中核となるのは、同社の優れたグラフィックス機能をウリにするAPUだ

現在のPCマーケットのデバイス別シェア(IDC調べ)。AMDは、今後急成長が見込まれる新しいクライアントデバイスにフォーカスしたAPUを展開することで、シェア拡大を図る

Intelもグラフィックス統合CPUにおけるグラフィックスコアの比率を高めており、グラフィックス機能の重要性が高まっていることは明白だとアピール(写真=左)。AMDがターゲットとする新デバイス群。スー氏は、APUの優れた演算性能とユーザー体験によって、これらの新デバイスにおいてトップの地位を確保できるはずだと語る(写真=右)

新しいモバイルAPUを紹介するケヴィン・レンシング氏

 “Temash”は、おもにタブレット端末やハイブリッド型端末向けに省電力性を追求したAPUだ。その最上位モデルとなる「AMD A6-1460」は、CPUにJaguarコアを4基搭載し、2Mバイトの2次キャッシュを共有。グラフィックスコアには、現行のRadeon HD 7000シリーズと同じGCN(Graphics Core Next)アーキテクチャを採用したCompute Unitを2基搭載し、128コアを統合しつつ、そのTDPは8ワットに抑えている。また、同社は同APUのカットオフ版として2 CPUコアモデルも用意し、特に「AMD A4-1200」は、グラフィックスコアの動作クロックは225MHzに下げられるが、TDPを3.9ワットにまで引き下げている。

 同社でモバイルAPUの製品戦略を統括するケヴィン・レンシング氏は、「従来製品である“Hondo”(開発コード名、AMD Zシリーズ)に比べて、CPUコアでは最大20%、グラフィックスコアの3D性能では最大100%、演算性能では最大75%のパフォーマンスアップを実現し、タブレットでもジェスチャー認識や顔認証といった、最新のユーザーインタフェースを実現できる」と、その基本性能の高さをアピールする。

 ライバルとなる“Clovertrail”ことIntelのAtom Z2760とのパフォーマンス比較を披露し、グラフィックス性能のみならず、暗号化方式であるAES(Advanced Encryption Standard)のハードウェアアクセラレーション、OpenCL、Webアクセラレーションなどでもアドバンテージがあると説明した。

新しいAMD APUがターゲットとするのは、タブレットやハイブリッド型端末、超薄型ノートPCなどの、新しいクライアントデバイスだ

TemashベースAPUのラインアップと、製品のポジショニング

Temashは、タブレットやハイブリッド型端末をターゲットとしたクアッドコアAPUで、グラフィックス性能は従来製品に比べ、最大100%のパフォーマンスアップを実現(画面=左)。Temashの仕様。USB 3.0やDisplayPort 1.2対応などの強化も(画面=右)

TemashベースのAPUと、従来製品の電力効率比較。TDPが大幅に下がったこともあり、消費電力あたりのパフォーマンスは大幅に伸びている(画面=左)。TemashベースAPUとIntel CPUのパフォーマンス比較。いずれも、AMD APUが得意とするジャンルばかりではあるが……(画面=右)

Clovertrailは、DirectX 11やOpenCL、AESアクセラレーションに非対応など、Temashのほうにアドバンテージがあるとアピール

グラフィックスパフォーマンスや描画品質については、Clovertrailのみならず、PentiumやCore i3に対してもアドバンテージがあると、比較デモを披露

TemashとClovertrailのパフォーマンス比較

 また、Temashではプラットフォーム機能も強化されており、USB 3.0に対応するほか、DisplayPort 1.2に対応し、最大2560×1600ピクセルの2画面表示をサポートする。さらに、レンシング氏は「AMD Turbo Dockテクノロジに対応したドッキングステーションで、タブレットの冷却性能を向上させることにより、最大40%のパフォーマンスアップを可能にする」として、台湾のCOMPALと共同開発したAMD Turbo Dockテクノロジ対応システムも公開した。

COMPALと共同開発したAMD Turbo Dockテクノロジ対応システム(画面=左)。同社はAMD Turbo Dockテクノロジの詳細を明らかにはしなかったが、展示されたシステムを見ると、タブレットの側面に排熱機構を持ち、ドッキングステーション側に備えられたファンで、熱を上方に押し出す仕組みのようだった(画面=中央/右)

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