価格を重視するHPの開発戦略――「革新的なデバイスでも、安くなければ“イノベーション”ではない」多くの人が使えてこそ(1/2 ページ)

» 2013年06月26日 14時30分 公開
[池田憲弘,ITmedia]

タッチ、2-in-1デタッチャブルに注力、でもやはり価格も大事

photo アジアパシフィック・ジャパン プリンティング・パーソナルシステムズグループ コンシューマPC ディレクターのスー・イン(Su Yin)氏

 中国・北京で開催した米Hewlett-Packard(以下、HP)の事業戦略説明・新製品発表イベント「HP World Tour 2013」では、今夏発売予定のPCを紹介するとともに、同社アジアパシフィック・ジャパン プリンティング・パーソナルシステムズグループ コンシューマPC ディレクターのスー・イン(Su Yin)氏が開発の方針などを説明した。

 イン氏は「これまでHPは本当に数多くのバラエティに富んだ製品を投入してきたが、ハードウェアやソフトウェアを投入するときは、ときどき間違うこともあった。特に今は技術が進化する動きが早く、次の時代を予測することが難しい」と述べ、製品開発の難しさを語る一方で、タッチによるイノベーションは必ず起きると明言した。

 本イベントで紹介したマシンは、ほぼすべてタッチパネルを内蔵しておりマルチタッチ操作に対応する。Tegra 4搭載の10.1型Androidタブレット「HP Slatebook 10 x2」を紹介する際に「タッチ操作によるユーザー体験を飛躍的に高めるマシン」と述べ、液晶一体型PCではタッチを使ったゲームを複数人で遊ぶ例を挙げ、「子どもたちのコミュニケーションに革新をもたらす。特にアメリカ、日本、韓国では需要があるはずだ」とアピールしたことからも、タッチ操作を重視する姿勢が伺える。

 しかし、タッチ操作によるイノベーションは技術革新のみでは実現しないとイン氏は指摘する。「もちろん我々も早くからタッチ操作に目をつけており、医療用のデバイスなどを開発してきたが、当時は端末の価格が高く、多くの人に使ってもらうことができなかった。HPはタッチ操作を使いやすくするとともに、価格を下げることにも注力してきた」という。

 「人々の生活を変えるためには、革新的な製品を適切な価格で出さなければならない。どんなに革新的な製品でも、多くの人に渡らなければ、それは本当の意味でのイノベーションとは呼べない。特にアジア地域ではこの考え方が重要になる」とイン氏は言う。ワールドワイドで展開するHPらしい考え方だ。

photophotophoto 新製品の紹介では、タッチ機能によるイノベーションをアピールする場面が多かった。製品紹介でも「HP Slatebook 10 x2」(写真=左)や「HP ENVY Rove 20 Mobile All-in-One」(写真=中央、右)では、タッチ機能を生かした使い方を積極的に説明していた

 では、同社はアジア地域の市場をどのように捉えているのだろうか。本イベントではデタッチャブル型のデバイスを2機種紹介したが、10.1型AndroidタブレットのHP Slatebook 10 x2をノートPCスタイルにすると1.25キロ、13.3型Windows 8タブレットの「HP Split x2」をノートPCスタイルにすると2.26キロと、やはり国内メーカー製のUltrabookなどと比較すると重いと言わざるを得ない。アジア地域向けに軽量なPC(特にUltrabook)を投入する予定はあるか、イン氏に聞いた。

 イン氏は「もちろんそういったニーズがあることは把握している。小型軽量なマシンというのは開発が難しい。ボディを小さくすればストレージの容量やCPUといったスペックが犠牲になってしまう。ここのバランスが難しい。しかしアジア地域は規模が大きくHPにとって重要な市場。軽量なマシンの開発も進めていく」と答えた。もちろん高性能な低電圧CPUや大容量SSDなどを使えばスペックの問題は解決するが、今度は価格が跳ね上がってしまう。

 「コンシューマー向け製品では、ユーザーにさまざまな選択肢を提案することが重要だ。ユーザーもHPにそれを期待している」とイン氏は語る。地域ごとの普及価格帯で、革新的な要素を取り入れた製品を多数展開する――これがHPの基本的な戦略なのだという。

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