「Samsung SSD 840 EVO」徹底検証――“TurboWrite”で下克上の性能を発揮か?もはや普及モデルのSSDではない(2/6 ページ)

» 2013年07月26日 00時00分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]

4K(QD1)ランダムアクセスとライトの性能が大幅向上

 現状でSamsungのコンシューマー向けSSDラインアップは、エンスージアスト/ITプロフェッショナル向けの840 PROと、メインストリーム向けの840の2種類が展開されているが、今回発表された840 EVOはSSD 840の後継であり、840 PROの後継は用意されない。

 Samsungは840 PROのラインも継続するとしているが、インタフェースがSerial ATA 6Gbpsのままでは840 PROから性能を伸ばす余地が少ないことから、今回はひとまずメインストリームモデルのみの投入となった。

 Samsung SSD 840 EVOのスペックは下表にまとめた。比較用に840 PRO、840のスペックも掲載しているので参考にしていただきたい。

Samsung SSD 840 EVOの主なスペック
製品名 Samsung SSD 840 EVO
容量 120Gバイト 250Gバイト 500Gバイト 750Gバイト/1Tバイト
コントローラ Samsung MEX/3コアARM Cortex-R4(400MHz)
NAND Samsung Toggle DDR 2.0(400Mbps)、19ナノメートル
キャッシュ LPDDR2 256Mバイト LPDDR2 512Mバイト LPDDR2 1Gバイト
シーケンシャルリード(MB/秒) 540
シーケンシャルライト(MB/秒) 410 520
4K、QD1ランダムリード(IOPS) 10000
4K、QD1ランダムライト(IOPS) 33000
4K、QD32ランダムリード(IOPS) 94000 97000 98000
4K、QD32ランダムライト(IOPS) 35000 66000 90000
暗号化 AES 256ビット
アイドル時消費電力 0.045ワット(DIPMオン時)
動作時消費電力 0.1ワット
重量 最大53グラム
保証期間 3年間

Samsung SSD 840 PRO/840の主なスペック
製品名 Samsung SSD 840 PRO Samsung SSD 840
容量 128Gバイト 256Gバイト 512Gバイト 120Gバイト 250Gバイト 500Gバイト
コントローラ Samsung MDX/3コアARM Cortex-R4(300MHz) Samsung MDX/3コアARM Cortex-R4(300MHz)
NAND Samsung Toggle DDR 2.0(400Mbps)、21ナノメートル Samsung Toggle DDR 2.0(400Mbps)、21ナノメートル
キャッシュ LPDDR2 256Mバイト LPDDR2 512Mバイト LPDDR2 256Mバイト LPDDR2 512Mバイト
シーケンシャルリード(Mバイト/秒) 530 540 530 540
シーケンシャルライト(Mバイト/秒) 390 520 130 250 330
4K、QD1ランダムリード(IOPS) 9800 9900 7900
4K、QD1ランダムライト(IOPS) 31000 29000
4K、QD32ランダムリード(IOPS) 100000 97000 86000 96000 98000
4K、QD32ランダムライト(IOPS) 90000 32000 62000 70000
暗号化 AES 256ビット AES 256ビット
アイドル時消費電力 0.054ワット(DIPMオン時、DIPMオフ時0.349ワット) 0.046ワット(DIPMオン時、DIPMオフ時0.279W)
動作時消費電力 0.069ワット 0.071ワット
重量 61グラム 62.5グラム 61グラム 62.5グラム
保証期間 5年間 3年間

韓国ソウルの製品発表会で示された、840と840 EVOのコンポーネントの違いを示したスライド。コアクロック400MHzの新型トリプルコアコントローラ「MEX」を搭載し、NANDフラッシュは19ナノメートルプロセスルール製造の3ビットMLCを採用する

 先代の840から比べると、コントローラが従来の「MDX」から「MEX」へと変更された。ARM Coretex-R4をベースにしたトリプルコアという点は変わらないが、クロックが100MHz向上している。もちろん、ファームウェア、信号処理アルゴリズムなども改良し、性能、信頼性の両面を向上させているという。

 NANDフラッシュはSamsung SSD 840同様に3ビットMLCを採用しているが、プロセスルールは21ナノメートルから19ナノメートル世代へと進化している。

 3ビットMLCは、TLC(トリプルレベルセル)という呼び名でも知られ、1つのメモリセルで1ビットを記録するSLC(シングルレベルセル)、1つのメモリセルに2ビットを記録するMLC(マルチレベルセル)に対し、1つのメモリセルに3ビットのデータを記録できる。そのため、大容量化しやすく製造コストを低くできるのが大きなメリットだ。

 一方、電圧を8段階に制御する必要があるため、メモリセルの寿命が短く(書き換え可能回数が少ない)、SLCやMLCに比べると書き込みにも時間がかかる傾向がみられる。

 840 EVOのスペックは、840から比べると、QD1のランダムアクセス性能(単独のランダムアクセス)に加えて、シーケンシャルライトが大きく改善されており、840 PROと互角のレベルに到達しているのが分かる。3ビットMLCを利用しながらこれだけの高性能を実現できた秘密は、この840 EVOから導入された「TurboWrite Technology」にある。

書き込み性能をアクセラレートする「TurboWrite Technology」

 TurboWrite Technologyでは、データ領域とは別に確保した3ビットMLC NANDをSLCシミュレート動作させる(記録容量は1/3になる)。つまり、3ビット記録できるセルを1ビットだけ記録するのだ。そうすることで、SLCと同様に電圧調整は2段階のみで済むため、高速な書き込みが可能になる。これを書き込み時のバッファとして利用することで、データ書き込みの性能を高速化する仕組みだ。

 ただし、バッファに収まりきらないデータの場合は、3ビットMLCの通常領域に直接書き込みが発生するため、その部分はアクセラレート効果がなくなる。下表にまとめた通り、ターボバッファの容量は3Gバイト〜12Gバイト(SLC換算)で、バッファ領域外の書き込み性能は120Gバイトモデルが140Mバイト/秒、250Gバイトモデルが270Gバイト/秒、500Gバイト以上のモデルが420Gバイト/秒だ。後ほど言及するベンチマークテスト結果は、こうした仕様が大きく影響するので注目していただきたい。

TurboWrite Technologyの仕様
TurboWrite領域内/領域外のシーケンシャルライト(Mバイト/秒)性能
SSD容量 120Gバイト 250Gバイト 500Gバイト 750Gバイト 1Tバイト
TurboWrite領域内 410 520 520 520 520
TurboWrite領域外 140 270 420 420 420
モデル別のターボバッファ容量
SSD容量 120Gバイト 250Gバイト 500Gバイト 750Gバイト 1Tバイト
ターボバッファ容量 3Gバイト 3Gバイト 6Gバイト 9Gバイト 12Gバイト

 当然ながら、書き込みはこのターボバッファ領域内のメモリセルに集中することになるが、ターボバッファ領域内のメモリセルに不良が生じた場合、他の領域のメモリセルで代用できず、TurboWrite Technologyは無効となってしまう。しかし、制御がシンプルなSLCシミュレート動作では、書き換え可能な回数も大幅に向上(約10万回)しているため、不良が発生する可能性は低いという。

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