歴代開発担当が語る20年「あのマシンで思い出す あの日は、とても、アツかった」エプソンダイレクト20周年記念インタビュー(2/5 ページ)

» 2013年08月27日 10時00分 公開
[PR/ITmedia]

AMDモデル「EDiCube BB100」と大ヒットした「EDiCube MX」、「静音性」と「焼き鳥対策」!?

photo EDiCube MXを生み出した技術部の杉田陽氏。品質面でのこだわりに加えて、いちはやく静音ニーズに注目し、独自設計のアドバンテージを生かして製品に反映した手腕が光る

ITmedia なるほど。確かにSFFに積極的だというのは以前から感じていました。特にPentium 4以降はどんどん消費電力、発熱が大きくなっていきましたから、SFFの制約の中でいかに効率よく放熱するかという点についてはご苦労されたと思います。

エプソンダイレクト 技術部商品技術1グループプロジェクトマネージャーの杉田陽氏(以下、杉田氏) Pentium 4だけでなく、Athlon XPもかなり厳しかったですね(笑) 私も溝口の下でSFFモデルを長く担当しており、はじめて主担当した「EDiCube BB100」(2001年10月発売)というAthlonXP/Duron搭載モデルでいきなり苦労しました。

 もちろん発熱対策です。今でこそCPUには保護回路が付いており、放熱が不十分な場合には動作を停止するので危険は少ないのですが、当時のAthlon XPは許容範囲を超えると……。開発の段階ではかなりのCPUを焼いて(※)しまいました。

ITmedia BB100は、Thunderbird(開発コード名)搭載モデルですね。自作PCユーザーにもCPUクーラーの取り付けミスやグリスの塗り忘れ、オーバークロックで遊びすぎでCPUを壊してしまう人はかなり多いわけですが、メーカーの技術者の方も似たような経験をしているのですね。

 (※開発コード名に由来し「焼き鳥」などと言われていた)

photo メガヒットした「EDiCube MX1700HTV」。当初より主にビジネス向けを中心に展開していたエプソンダイレクトだが、EDiCubeシリーズはコンシューマー向けにスペックを絞り、買いやすい価格帯に押さえたハイコストパフォーマンスシリーズとして展開した。マザーボード、ボディ、電源ユニット、いずれもオリジナルの専用設計で、テレビ機能搭載モデルではテレビチューナーも別途特注した静音設計のファンを利用しているという

杉田氏 その後継として出した「EDiCube MX」(2002年10月発売)ではさらにオリジナル設計の範囲を広げ、品質に加えて、静音性も考慮して設計しました。今でこそ静音をうたうPCは珍しくありませんが、当時はまだ少なかったと思います。価格設定でもがんばったこともあり、おかげさまで大ヒットモデルとなりました。弊社のオーダーシステムではどの機種がどう売れているのかリアルタイムに確認できるのですが、常にこれが1位だったという時期がありました。

ITmedia そんなに売れたのですか。具体的にはどのような部分にこだわって開発されたのでしょう?

杉田氏 マザーボードはボディ内に適切なエアフローを確保すべくコネクタなどのレイアウトを最適化しました。品質面も徹底するため、電解コンデンサを日本製限定で指定、CPUのファンは静音性に定評のあった国内某P社の流体軸受けのファンを採用しました。

 電源ユニットについても、電解コンデンサに日本製を使っていることを厳守しつつ、CPUの消費電力が上がり大容量が必要になっていく中で、電源内の騒音も課題としましたので、冷却ファン選定や回転数をどう制御するかといった部分まで細かく評価し、オーダーした経緯もあります。このモデルはテレビチューナーカード(※)のオプションもありまして、このTVチューナーカードのファンも独自に静音仕様のものに変えていました。

 (※当時はもちろんアナログ放送)

ITmedia 2003〜2004年頃、海外製の不良電解コンデンサが液漏れや破裂などを起こすトラブルが多発しました。電解コンデンサを日本製にするという要求はそれと関係しているのでしょうか。

杉田氏 そうですね。この問題が表面化する以前から社内評価・調査の結果からその情報は得ていましたから、早い段階から対策はとっていました。これは国内メーカーであればどこもそうだったと思います。2013年現在も品質が確かなものを使うよう徹底しています。

職人の元に足繁く通い、作り上げた10周年記念「漆塗り」モデル

ITmedia 個人的には、エプソンダイレクトさんといえばタワー型のハイスペックなモデル(Endeavor Proシリーズ)の印象が強いです。

photo Endeavor Proシリーズを多く担当した技術部課長の茅野匡浩氏と、10周年記念漆塗り仕様の「Endeavor Pro2500 漆塗り限定モデル」。10年が経過した2013年現在もその光沢感を失っていない

エプソンダイレクト技術部商品技術1グループ課長の茅野匡浩氏(以下、茅野氏) Endeavor Proシリーズは創業当時から当社の看板となるべく、最新のCPUやチップセットを採用しつつ、豊富なBTOオプションを用意した最高峰の性能と品質、そして満足をお客様にお届けする使命を持ったシリーズです。

 特に思い入れの強いモデルは「Endeavor Pro2500」(2003年5月発売、10周年記念モデルは同年11月発売)の創業10周年記念モデルです。こちらは200台限定の漆塗り仕様としたもので、サイドカバーはUVコートを施したピアノ塗装を、フロントベゼルは木曽漆器の技法で本漆塗りを施してあります。これを実現するため、サイドパネルとベゼルを持って何度も職人さんのところへ訪れたのを思い出します。


photo 技術部出身で、現在は同社プロモーションを担当する手塚誠氏。Endeavor Pro2500/3500シリーズなどを担当し、ユーモアを交えた軽妙な語り口で職人さんの元へ足繁く通った苦労話を語っていただいた

エプソンダイレクト事業推進部プロモーション推進グループ課長の手塚誠氏(以下、手塚氏) 漆はきちんと磨いて後処理をしないと美しいツヤが出ないのですが、これがまた難しいものなのですね。ベースにちょっとでもスリキズがあると仕上がりに影響しますし、何度もやり直しをお願いしつつ、最低3回は塗って、ガッツリ磨いてこの仕上がりを実現したわけです。

茅野氏 フロントベゼルは200台の予定より多めに275枚の作業をお願いしたのですが、最初はそのうち45枚くらいしか使えるものがありませんでした。何度も職人さんの作業場へ向かい、さらにこちらでいいものを選別して組み合わせて、なんとか限定台数の200台を作り上げました。

溝口氏 帰ってくるとみんなかゆいかゆいと(笑)。

手塚氏 漆職人さんの作業場は、普通の人であれば入っただけでもかゆくなるくらいなんですよ。そこで職人さんと今後の日程など2時間くらい打ち合わせしていると、ほとんどの方はもう(笑)。でも、これだけ苦労したかいがあって、この記念モデルは今でも美しいツヤを維持していますよ。


photo シリアルナンバー入りの記念プレート

茅野氏 実は、この記念モデルは受注開始から2日で200台すべて完売してしまったほど好評でした。今弊社にあるのはシリアルナンバー0番の1台だけです。

ITmedia 特別モデルですから値段もお高かったのでは……。

茅野氏 いえ、10周年のお客様への感謝の気持ちということで漆塗り分の上乗せは行いませんでした(※)。むしろ、BTOメニューをやや絞りつつも、割安な価格を設定させていただいたくらいです。

 (※Pentium 4/3GHz、1Gバイトメモリ、120GバイトHDD、GeForce FX 5600、Windows XPの構成で19万6000円から。当時のハイエンドクラスとしては低価格だった)

手塚氏 実はキーボード、マウスも黒に、マザーボードの基板も特別に黒色にしてあるのです。220枚(200台+予備)だけ。今考えるとよくやってくれたなと思います。

溝口氏 ここ、手塚がベンダーにゴリ押ししたと聞いています。220枚黒いマザーボード作ってくれるまで帰らないとゴネたらしいです(笑)。

茅野氏 後日談ですが、15周年頃に製品フェアを行った際、このモデルを購入してくれたお客様に声をかけていただいて。「まだすごく気に入って使っているが、肝心の中身が遅くなってしまい。どうしようか困っている」と。ならば、10周年モデルユーザー限定で、中身だけリプレースするサービスを実施しようかと真剣に検討したのですが……ごめんなさい、実現はできませんでした。

ITmedia それ、普通のEndeavorシリーズでもうれしいサービスかも。

溝口氏 そういうの毎回考えるんですけれどね。もしお客様から強く求められるような声があれば実現するかもしれません。

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提供:エプソンダイレクト株式会社
アイティメディア営業企画/制作:ITmedia PC USER 編集部/掲載内容有効期限:2013年9月9日

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