「VAIO Duo 13」の“最先端スライドボディ”を丸裸にするVAIO完全分解&開発秘話(前編)(2/6 ページ)

» 2013年09月19日 11時30分 公開

VAIO Proとは違った価値をもたらすフラッグシップモデル

 VAIO Duo 13が想定するメインターゲットは、ビジネスユーザーだ。ここでVAIO Duo 13と同時発表された、タッチパネル付きUltrabookで最軽量を誇る「VAIO Pro 11」および「VAIO Pro 13」との関係性が気になるところだが、VAIO全体のラインアップとしてはVAIO Pro 11/13の上位にVAIO Duo 13が位置する。

商品企画を担当した山内氏

 いずれもビジネス向けのモバイルPCだが、商品企画の山内氏は「従来型のクラムシェル型ボディとゆとりあるキーボードを採用し、資料や文書を効率的に作成するという生産性に特化したのがVAIO Pro。対して、漠然としたアイデアや見聞きしたことをペンとタブレットモードで書きとめ、キーボードモードで資料にまとめるなど、直感的なイメージから最終的な出力までをデジタルでシームレスに行うという、クリエイティブな仕事で最高の道具を目指したのがVAIO Duo」と、明確な違いを示す。

 笠井氏も「我々設計の仕事を例にとると、プログラムの入力やコンパイルにはキーボードを使うが、その前段のフローチャートを書くなどの作業には紙のノートが必須だった。つまり、脳内のもやもやした情報を形にして整理するには紙のノートが便利で、どれだけPCが進化しても手放せないでいた。しかし、VAIO Duoならばこうした頭の中を整理する段階からペンとタブレットモードでカバーできるため、紙のノートとノートPCを使い分ける必要がなく、すべてを1台で網羅することが可能だ。実際、VAIO Duo 11を発売してから、ソニーでも使っている社員は多い」と、VAIO Duoの先進性を強調する。

VAIO Duoはペン入力にこだわり、紙のノートで行っていた筆記と、PCでの作業をすべて1台でカバーすることを想定している(写真=左)。VAIO Proはスタンダードなクラムシェル型ボディを採用し、ゆとりあるキーボードで文書を効率的に作成することに重きを置いている(写真=右)

スライドボディはそのままにデザインを一新

 VAIO Duo 11と同等の小型軽量に仕上げるという目標は、「9割9分達成できた」(笠井氏)としている。VAIO Duo 13の本体サイズは330(幅)×210(奥行き)×9.2〜19.5(高さ)ミリ、重量は約1.325キロ。初代のVAIO Duo 11は319.9(幅)×199(奥行き)×17.85(高さ)ミリ、約1.305キロだったが、横幅が10.1ミリ、奥行きが11ミリ、厚さが1.65ミリ、重量がわずか20グラム増えただけで、実際に見比べてもほとんど同じ大きさだ。

 店頭でVAIO Duo 13だけを見ると、そのすごさに気付きにくいが、初代機から液晶ディスプレイのサイズを11.6型ワイドから13.3型ワイドに大型化し、バッテリー駆動時間を大幅に延ばしていることも考えると、このコンパクトボディはまるで数世代の進化を重ねたかのような驚きがある。これほどコンパクトな設計には、やはりスライド機構の小型化と軽量化が欠かせない。

VAIO Duo 13(左)とVAIO Duo 11(右)。画面を大型化し、バッテリー容量を増やしながら、大きさや重さはほとんど変わらないのが驚きだ

VAIO Duo 13とVAIO Duo 11の比較
製品名 画面サイズ タッチパネル 奥行き 高さ 公称重量 実測重量 バッテリー駆動時間
VAIO Duo 13 (SVD13219CJW・B) 13.3型ワイド 搭載 330ミリ 210ミリ 9.2〜19.5ミリ 約1.325キロ 1.301キロ 約18時間
VAIO Duo 11 (SVD11239CJB) 11.6型ワイド 搭載 319.9ミリ 199ミリ 17.85ミリ 約1.305キロ 1.286キロ 約7時間

デザイナーの田中氏

 VAIO Duoの初代から外装のデザインを務める田中氏は、「VAIO Duo 11はスライド機構の強度を重視し、液晶ディスプレイの左右にアームを埋め込む特殊なデザインになった。さらに、端子類を左右に逃がして配置したため、アームと端子で横幅が結構膨らんだ。このままではタブレットモードでソフトウェアキーボードが打ちにくいので、側面を斜めにカットし、液晶ディスプレイ部と本体部に段差を作ることで、両手で握ってソフトウェアキーボードが使いやすいように配慮した」と、VAIO Duo 11のデザインを説明する。

 これに対して、VAIO Duo 13では第4世代Core(開発コード名:Haswell)の採用でマザーボードが小さくなり、底面積を削れるという想定があったため、スライド機構を根本から見直した。「今回は液晶ディスプレイのヒンジ部や端子類をキーボードの奥側から重ねる形で収納すれば、横に出っ張らずに済むと設計側から聞いていたので、センターにヒンジを1つ置くシンプルなスライド機構に変更し、ボディ全体ではスッキリと1枚の板のように見せることを念頭に置いた。360度どこから見られてもいいように、底面の美しさにもこだわっている」と、田中氏は語る。

VAIO Duo 13(左)とVAIO Duo 11(右)。VAIO Duo 13はセンターにヒンジを1つ置くシンプルなスライド機構に変更することで、ボディの小型化と軽量化を実現している。側面から見た場合に、端子類がないすっきりしたデザインとなり、ディスプレイ部への配線が目立たないのもポイントだ

 また、クラムシェル型のVAIOノートでは、利用時に液晶ディスプレイが背面に回り込むため、背面に端子類を置けないが、VAIO Duo 13のスライド機構は背面と干渉しないことから、背面に端子類を集中させて、前面と左右の側面からノイズを省き、タブレットモードで使う場合は従来よりキーボードモードを意識させないデザインにした。

 さらに、「底面の前と左右を大きく斜めに削り落とし、先端を浮かせて軽く見せつつ、タブレットモードを斜めから眺めたときに2枚の板の重なりが感じられる造形を作った。やや前傾したデザインは、キーボードモード時にパームレストの位置が設置面に近くなり、キーボードを打ちやすくすることも想定している」と田中氏が説明するように、スライド機構を受け継ぎながら、全体の設計を一新することで、VAIO Duo 11並にサイズと重量を抑えつつ、より洗練されたデザインに仕上げているのは見逃せない。

ガラスで覆われたディスプレイ面はフラットな仕上がりで、手前が薄く、奥が厚くなるよう傾斜がついている(写真=左)。背面に端子類を集中し、正面から見た場合はよりピュアタブレットに近い印象となった(写真=右)

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