「VAIO Duo 13」の“最先端スライドボディ”を丸裸にするVAIO完全分解&開発秘話(前編)(4/6 ページ)

» 2013年09月19日 11時30分 公開

分解したら元通りにするのが困難なVAIO Duo 13

注意!

製品を分解/改造すると、メーカー保証は受けられなくなります。内部で使用されている部品などは取材した機材のものであり、すべての個体に該当するわけではありません。



 それでは、VAIO Duo 13を分解して内部構造に迫っていこう。

 まずは本体を裏返し、底面のネジを外したいところだが、外からはネジが1本も見えない。底面にはNFCやアウトカメラ("Exmor RS for PC" CMOSセンサー搭載で約799万画素)、音量ボタン、ASSISTボタン(メンテナンスツールの「VAIO Care」を起動)、ステレオスピーカーを配置しており、武骨な凹凸や通風口などが一切ない美しい外装だ。

 分解する際は、ゴム足とボタン周囲を覆うスピーカーネット部を手で剥がすと、複数のネジが現れるので、ドライバーで1本ずつ外していく。スピーカーネット部はフィルム状で、一度剥がすと元通りに戻すのは難しい。

底面にはネジが1本も露出しておらず、ゴム足やスピーカーネット部を剥がした後、現れた複数のネジを外していく(写真=左)。VAIO Duo 13を分解する齋藤氏(写真=右)

 背面のネジをすべて外せば、底面のUDカーボン製カバーを開けることができ、内部構造が一望できる。

 内部のレイアウトは、底面から見て右上にメイン基板、上部中央にスライド機構のヒンジ部とNFC、SSD、メモリカードスロット、左上にCPUクーラー、下部に大容量のバッテリーとステレオスピーカーを配置。上部中央にヒンジ部を置いた関係で、メイン基板上のCPUから反対側のファンまで長いヒートパイプを通して冷却するユニークな設計となった。左右と前面を絞って薄く仕上げたデザインなので、これら3面は端までパーツ類を搭載しておらず、余白がある。

取り外した底面カバーの表面(写真=左)と裏面(写真=右)。裏面には音量ボタンとASSISTボタンの基板や、メイン基板のシールドが装着されている

底面カバーを外すと、VAIO Duo 13の内部構造が明らかになる。手前にバッテリー、奥に基板類を配置したレイアウトだ。スライド機構のヒンジは上部中央に小さくまとめられている。そのヒンジ部をまたいでヒートパイプが配置されているのがユニーク。先が薄く絞られている左右と手前には、パーツ類が実装されていない

VAIO Duo 13のスケルトンモデル(開発用)を見ると、手前に向かって薄く絞ったデザインのため、左右と手前にパーツ類が実装できないのが分かる(写真=左)。VAIO Duo 11の内部構造は、左端と右端にスライド機構のヒンジを搭載していた(写真=右)

 通常ならば、ここでバッテリー、基板類の順番で分解作業を進めていくが、今回はVAIO Duo 13で大きく進化したスライド機構から先に見ていこう。

スライド機構のヒンジは強度を維持しつつ、大幅に小型化

ディスプレイ部を持ち上げた状態で下から見ると、ヒンジ内部をケーブルが走っているのが見えるが、通常の利用で目立つことはない

 底面から、上部中央のヒンジ部を固定するネジと、液晶ディスプレイ部につながるケーブル類を外すことで、液晶ディスプレイ部がスライド機構のヒンジ部ごと分離できる。VAIO Duo 11並の大きさと重さに抑えるため、スライド機構はセンターヒンジでコンパクトに作ることが開発当初に決まった。

 しかし、コンパクトなヒンジへの変更は本体の小型化と軽量化に大きく貢献する一方、普通に作ったのでは強度が従来より劣ってしまう。そこで、センターヒンジを採用するにあたって、齋藤氏は「どれくらいの負荷がかかり、どの程度の強度が必要になるのか、シミュレーションをしたうえで何種類か試作品を作り、液晶ディスプレイの開閉やねじれ試験など、VAIO Duo 11と同等の品質試験を繰り返した」という。

 この検証は開発の完了直前まで行い、最終的には強度をもうワンランク引き上げるため、ヒンジ部のアルミダイキャストをより肉厚なもの(厚さ0.9〜2.6ミリ)に変更している。笠井氏は「この最後の変更で重量が増え、VAIO Duo 11より約20グラム重くなってしまった。サイズと重量の目標は9割9分達成したといったが、残る1分がここ。しかし、必要な部分を補強したことで、VAIO Duo 11と同等の品質試験をクリアする高い剛性を確保したうえで、サイズや重量との最適なバランスも得られ、ベストなセンターヒンジになった」と設計の裏話を明かす。

 ヒンジ部はコンパクトになったが、VAIO Duo 11と同様に油圧式の小型ダンパーを内蔵し、液晶ディスプレイがある程度開いたところでショックを吸収することで、ガチャンと下品に開くのではなく、最後にふわっと品よく止まるよう工夫している。

本体から分離した液晶ディスプレイ部の表面(写真=左)と背面(写真=右)。背面を見ると、ヒンジの内部をケーブル類が通っているのが分かる

液晶ディスプレイ部から取り外したスライド機構の表面(写真=左)と裏面(写真=右)。今回分解した機材は最終に近い試作機で、実際の製品はVAIOロゴが裏から透けないくらい厚みを増している。下に掲載したVAIO Duo 11のスライド機構からかなり小型化した

初代機のVAIO Duo 11から取り外したスライド機構の表面(写真=左)と裏面(写真=右)。中央に小さなヒンジを1つ配置したVAIO Duo 13と異なり、左右にヒンジとアームを用意し、その間をマグネシウム合金の板でつないだ大型のものになっいた

VAIO Duo 13の開発時に行った品質試験の様子。液晶ディスプレイの開閉試験(写真=左)。液晶ディスプレイ表面のスクラッチ試験(写真=中央)。落下試験(写真=右)

ヒンジ部のねじり試験も行い、スライド機構の堅牢性を確保した

 液晶ディスプレイを開いたキーボードモードでは、画面のチルト角度が設置面から約135度に固定される。液晶ディスプレイが固定されることで、画面がふらつかずに、しっかりタッチ操作やペン入力が行えるのは便利だが、画面の角度を柔軟に変更できるクラムシェル型ノートPCに比べて、視認性の面で不自由を感じる向きもあるだろう。

 これに対し、笠井氏は「視認性を高めるチルト機構と、タッチ操作をしやすくする画面固定の機構、どちらも搭載するには、スペースも厚さも足りない。現時点ではVAIO Duo 11と同様、画面が固定できるタッチとペンでのメリットを選択した。視野角が広いIPS方式の液晶パネルを採用しているため、チルト角度が調整できなくても、大抵の利用シーンで画面が見づらいと感じることは少ないはず」との回答だ。確かに、チルト機構のために本体が大きく重くなるよりは、現状のスタイルのほうがベターに思える。

キーボードモードではディスプレイの角度が約135度に固定される(写真=左)。筆圧を意識して強めにペンで描いても、画面が固定されているため、後ろに倒れるようなことはない(写真=右)

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