「VAIO Duo 13」を“徹底解剖”したらPCの未来が見えてきたVAIO完全分解&開発秘話(後編)(5/7 ページ)

» 2013年10月04日 12時00分 公開

メモリ、SSD、無線LAN/WANモジュールも最新仕様

 メインボードにオンボードで実装したメモリは、VAIOで初めて新型のLPDDR3(1600Mbps動作)を採用。容量は標準仕様で4Gバイト、VOMモデルでは8Gバイトも選べるが、どちらもメインボードの表と裏に2チップずつ実装し、デュアルチャンネルで動作する。

 LPDDR3は、スマートフォンやタブレットが搭載しているLPDDR2の高速版だ。Ultrabookで採用例の多いDDR3Lより高コストだが、消費電力が大幅に下がり、バッテリー駆動時間の延長やConnected Standby、瞬間復帰の実現にも貢献した。

 土田氏は「スリープ状態で比較すると、LPDDR3はDDR3Lに比べて消費電力が1/6程度で済む。VAIO Duo 13はS0ixの浅い眠りの状態でいかに消費電力を抑え、高速に復帰できるかがポイントなので、それにはメモリの省電力化が大きく影響し、LPDDR3が不可欠という結論に至った。ここでもスマートフォンやタブレットのテクノロジーをPCに取り込んで、省電力化を追求している」と説明する。

LPDDR3のメモリは2チップずつメインボードの表面(写真=左)と裏面(写真=右)にオンボードで実装。デュアルチャンネルでのアクセスにも対応している

 SSDモジュールと無線LAN/Bluetoothコンボモジュール、ワイヤレスWANモジュールは、mSATAやPCI Express Mini Cardではなく、最新のM.2(旧NGFF)タイプを用いている。SSDモジュールは長さ80ミリの細長いタイプ、無線LAN/BluetoothコンボモジュールとワイヤレスWANモジュールは長さ30ミリの短いタイプだ。

 データストレージはSerial ATA 6GbpsのSSDを搭載する。容量は標準仕様で128Gバイト、VOMモデルでは256Gバイトや512Gバイトも選択可能だ。ただし、VAIO Pro 13で採用されている非常に高速なPCI Express SSD(PCIe)は選べず、すべてSerial ATA 6Gbps対応のSSDに限られる。PCIe SSDを見送った背景には、Connected Standbyや瞬間復帰の対応と関係があるようで、ここは少々残念だ。

M.2スロットから取り外したSSDの表面(写真=左)と裏面(写真=右)。Serial ATA 6GbpsのSSDは長さ80ミリの細長いモジュールを採用する

 ワイヤレス通信機能は、IEEE802.11a/b/g/nの無線LANとBluetooth 4.0+HS、NFCを標準装備。無線LAN/Bluetoothコンボモジュールは前述の通り、メインボードと2階建てで配置し、NFCはスライド機構のヒンジの下に内蔵している。第4世代Coreとともに高速な無線LAN規格であるIEEE802.11acを採用した製品も少しずつ増えつつあるが、VAIO Duo 13は非搭載だ。「Connected Standbyや瞬間復帰の対応を確実にするため、今回は登場したばかりのIEEE802.11acではなく、IEEE802.11a/b/g/nを選択した」(笠井氏)という。

 VOMモデルで選択できるワイヤレスWAN機能は、au 4G LTEをサポート。ワイヤレスWANモジュールとMicro SIMスロットのサブボードは、本体側ではなく、液晶ディスプレイ部の裏側に内蔵している。VAIO Duo 11では非搭載だったワイヤレスWAN機能を追加した理由について、笠井氏は「Connected Standbyをフル活用するには、ワイヤレスWAN機能の搭載が必須なので、ディスプレイ側の余ったスペースを使って押し込んだ。LTEと組み合わせることで、VAIO Duo 13の価値はさらに高まるはず」と語る。

 なお、VAIO Duo 11が標準搭載していたWiMAXは省かれてた。VAIO Duo 13が採用するM.2タイプの無線LANモジュールではWiMAXが内蔵されなくなっており、山内氏も「今後のVAIOはワイヤレスWANのニーズに対して、LTEで応えていく方針。WiMAXは別途モバイルルータなどと組み合わせて使っていただくことになるだろう」と述べている。

キーボードモードの使い勝手も大きく改善

本体底面からバッテリーと基板部を取り外した状態。フラットなバッテリーがキーボードを下から支えて剛性を出す構造になっている

 本体側のバッテリーを外すと、キーボードの裏面が現れる。スライド機構やタブレットモードでのペン入力機能に目を奪われがちなVAIO Duo 13だが、キーボードモードでの使い勝手もVAIO Duo 11から大きく進化した。

 VAIO Duo 11のキーボードはキーピッチが約18(横)×15.5(縦)ミリだったが、VAIO Duo 13ではキーピッチが約19(横)×16.5(縦)ミリに広がり、より快適な文字入力が可能だ(キーピッチはいずれも実測値)。キーストロークは約1.1ミリで、VAIO Duo 11とほぼ同じ浅さだが、キーのスイッチは安定しており、長文の入力にも耐える。

 「キーボードは両面テープで接着してあり、ネジで固定していないが、真下に敷いた平らなバッテリーがしっかり支える構造なので、必要な剛性が確保できている」と齋藤氏が語るように、強めにタイプしてもほとんどたわまない。周囲が暗いときに自動で点灯するキーボードバックライトも内蔵している。

ディスプレイ部とタッチパッドを取り外したキーボード面(写真=右)。キーピッチが約19(横)×16.5(縦)ミリ、キーストロークが約1.1ミリのアイソレーションキーボードを採用する。キーボードバックライトも内蔵した(写真=右)

 キーボードの手前に、VAIO Duo 11になかったタッチパッドを追加し、短いながらパームレストを設けているのもポイントだ。代わりに、VAIO Duo 11が装備していた光学式の小型ポインティングデバイス「Optical TrackPad」は省かれた。笠井氏によれば、「液晶ディスプレイにタッチパネルがあっても、キーボードモードではきちんとしたタッチパッドが欲しいという要望が多く寄せられたため、スタンダードなノートPCにより近付ける努力をした」という。

 VAIO Duo 13のキーボード回りはまだパーフェクトとはいい難いだろう。縦方向のキーピッチはやや狭く、タッチパッドは横長(実測で横80×縦25ミリ)で、パームレストも少々短い。しかし、ボディの奥行き1/3ほどがスライド機構に占有されている不利な条件下で、うまく使いやすいバランスにまとめ上げている。「VAIO Duo 11は合わなかったが、これなら許容できる」と感じるユーザーも少なくないはずだ。

狭いスペースに小型のタッチパッドを内蔵(写真=左)。奥行きは短いが、横幅はしっかり確保した。取り外したタッチパッド(写真=右)。金属の細い板が下に敷いてある

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

最新トピックスPR

過去記事カレンダー