一方で難しいのが残り2つの課題だ。Acerや東芝といったベンダーが、Microsoftの提唱する新しいミニタブレットの規格に準じた製品を発表しているが、「Windowsアプリケーションが動作する小型PC/タブレット」の域を出ておらず、何というかどっちつかずな印象があるのも否めない。
また、Windows RTは……(いくつか製品が出はしたが)実質は「Surface(RT)」の1機種に依存している。Microsoft自身が販売ターゲットを絞り込めておらず、手を持て余している感じだ。Windows 8/RTとWindows Phoneのプラットフォームも実質には統合されておらず、AndroidやiOS機器と比べ、ユーザーと開発者を困惑させている点で不利という課題もある。このあたりはWindows 8.1やSurface 2の世代でも解決できないため、Nokiaの携帯部門買収を機に2014年以降の次世代モデルへと持ち越されることになる。
「Windows RTをファブレット(大画面スマートフォン)として活用せよ」という意見・提案もあるようだが、Nokia買収はWindows 8/8.1、RT、Windows Phoneでばらばらに存在する3つのプラットフォームの関係性を見直す好機だというのが筆者の意見だ。
Microsoftの至上命題はクライアントOSの整理ではあるが、同時にビジネスの軸を見直さなければいけない。現在同社はWindows OS(サーバ含む)とOffice製品の売り上げに依存しているが、おそらくこの2軸だけでやっていける期間は残り少ないだろう。同社の将来を握るのはクラウドを含むサービス事業。Xbox Liveを含むコンシューマー向けサービスに加え、今後は企業向け製品もインストールするソフトウェアからクラウドで使用するものへのシフトが進むと想定し、最終的な鍵となるのが「Windows Azure」とその周辺サービス、そしてその導線となるデバイス事業になり、クライアントOSの整理はこのデバイス事業と密接に結びつくことになる。スティーブ・バルマーCEOが掲げる「One Microsoft」戦略で、デバイスとクラウドに注力した会社を目指すというのは、理にかなった選択だといえる。
2013年10月現在、バルマー氏の後任探しの行方が世界の金融業界でのMicrosoftに関するもっぱらの話のタネとなっている。ある程度方針が示されているにもかかわらず、それをうまく実行できない現状。次のCEOに求められるのは、先ほど出された「One Microsoft」戦略を実現することにある。
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