「VAIO Tap 11」――ソニー入魂の“Haswellで9.9ミリ厚”Windowsタブレットは買いか?最新タブレット速攻レビュー(3/4 ページ)

» 2013年10月09日 18時45分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

注目ポイント(2):VAIO Duo 13と同じ筆圧対応ペンが付属

筆圧対応のデジタイザスタイラスと、それを生かすアプリも搭載している

 筆圧感知に対応したデジタイザスタイラス(ペン)も付属する。「VAIO Duo 13」と同じペンで2つのボタンを搭載し、上は消しゴム、下はクリックおよびクリッピングアプリの起動に対応する。摩擦の強さの違う2種類のペン先が付属し、好みによって使い分けられる。

 また、座標をペンの内部ではなくペンの先で検知する仕組みを導入していることから、書きたい位置と実際に書かれる位置の視差を最小限に抑えているのもうれしい。液晶パネルとガラスの間にクリアな樹脂を挟み空気層をなくした「オプティコントラストパネル」も視差の低減に貢献している。

 確かにペンの書き味は良好だ。高摩擦のペン先でもまだツルツルと滑る感じを受けるのでもう少し摩擦があってもよいように思うが、タブレットのペン機能としてはよくできている。ちょっと慣れれば違和感もほとんどなくなり、スムーズに書けるはずだ。ペン先の描画の追従性はVAIO Duo 13ほど高速ではないと感じるがそれでも高いレベルで、視差の少なさもはっきりと感じられる。

 製品には専用のペンフックも付属し、これを左側面に装着すれば、フックにペンを差したまま持ち運べる。ただし、ペンフックを装着したままでは左側面のUSB 3.0ポートとMicro HDMI出力が使えない点は注意が必要だ。また、VAIO Duo 13ではフックからペンを外すと同時に自動でスリープから復帰する「Pen Wake」機能を備えているが、VAIO Tap 11はこれに対応しない(Windows 8のConnected Stanbyにも非対応)。

付属のペンフックをタブレット本体の左側面に装着すれば(写真=左)、ペンを差したまま持ち運べる(写真=右)

 ペンに関しては朗報がある。VAIOブランドはこの秋からユーザーのクリエイティブ活動を支援する「VAIO Inspiration Stream」というコンセプトを掲げており、その一環としてアドビシステムズとの協業を進めている。これまでアドビシステムズのクリエイティブツールではVAIOが採用するペンの筆圧検知が非対応だったが、今後はPhotoshopやIllustratorで使えるようになるという。

 また「VAIO Inspiration Stream」の一貫として、ペンを活用し、発想のデジタル化を支援する独自アプリ「VAIO Inspiration Suites」も提供される。内蔵カメラをスキャナ代わりにして書類などをきれいに取り込める「CamScanner」、画面上の好きな部分をペン操作で囲んでクリップして活用や共有が行える「VAIO Clip」、手書き対応ノートアプリの「VAIO Paper」がこれに含まれる。

「VAIO Inspiration Suite」を構成する「CamScanner」(画像=左)、「VAIO Clip」(画像=中央)、「VAIO Paper」(画像=右)

 なお、プリインストールOSは64ビット版Windows 8だ。Windows 8.1をプリインストールしない理由としてソニーは「購入後に無償アップデートするか、Windows 8のまま使うか選択できる仕様にした」と説明している。

実力テスト:Atom Z系タブレットとは一線を画す高性能を実証

 定番ベンチマークテストの結果を見ていこう。今回入手した店頭モデル(SVT11218DJB)のスペックは、Core i5-4210Y(1.5GHz/最大1.9GHz)、Intel HD Graphics 4200(CPU統合)、メモリ4Gバイト(デュアルチャンネル/DDR3L)、128GバイトSSD、64ビット版Windows 8という内容だ。参考までに「VAIO Pro 13」(SVP13219CJB:2013年夏店頭モデル)とスコアを比較している。

 目新しいCPUの性能が注目されるところだが、Windows 8のWindowsエクスペリエンスインデックスでは「6.2」というスコアだった。Core i5-4200U(1.6GHz/最大2.6GHz)搭載のVAIO Pro 13のスコアは「6.9」なので、この9割程度のパフォーマンスということになる。

 VAIO Tap 11の評価機とVAIO Pro 13(SVP13219CJB)の評価機は、Serial ATA 6Gbps対応SSDも東芝製の同世代製品だった。VAIO Tap 11はmSATA、VAIO Pro 13はM.2のモジュールだが、CrystalDiskMark 3.0.2の結果は似たようなスコアで、最近のSerial ATA 6Gbps対応SSDとしてはシーケンシャル書き込み性能が少しだけ低い。それでもAtom Z2760タブレットに搭載されているeMMCとは比べものにならない速さだ。

Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア(画像=左)。CrystalDiskMark 3.0.2のスコア(画像=右)

 ほかのテストのスコアについて、VAIO Pro 13(SVP13219CJB)を「100」として算出してみると、PCMark 7の総合スコアは「84」、3DMark/Cloud Gateは「60」、CINEBENCHのCPUは「64」、CPU(シングルコア)は「72」という結果になった。SSDが実質同じなので、この差は純粋にCPU(と内蔵GPU)の差とみていい。

 この結果から分かるCore i5-4210Y(1.5GHz/最大1.9GHz)の暫定的評価(あくまでも暫定である)としては、Core i5-4200U(1.6GHz/最大2.6GHz)と比較して、CPU/GPU負荷の高い処理では6〜7割、比較的負荷が軽い処理では8〜9割といったイメージだ。それでも、Atom Z2760搭載のWindows 8タブレットとは比べものにならない高性能を持っていることは間違いないといえる。

 もっとも、Atom Z2760の後継としては性能を大幅に強化したAtom Z3000シリーズ(開発コード名:Bay Trail-T)がリリースされており、年末に向けて搭載するタブレットも登場してくる。パフォーマンスでCore iシリーズを上回ることはないにせよ、さらに向上した省電力とのバランスは注目したい。こうしたAtom Z3000シリーズ搭載タブレット(富士通の「ARROWS Tab QH55/M」など)についても入手でき次第、性能検証を行う予定だ。

 なお、PCMark 7のLightweight、Productivityのスコアはタッチパネル搭載機では不当に低く出る傾向があるので注意していただきたい。また、3DMarkのIceStormスコアはこれまでの経験上、第4世代Coreではつかみどころのない傾向を見せており、参考にしづらいことも付け加えておく。

左から、Windowsエクスペリエンスインデックス、CINEBENCH R11.5、CrystalDiskMark 3.0.2のスコア
左から、PCMark7 1.4.0、3DMark 1.1.0、FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコア

 Webブラウズのバッテリー駆動時間テスト(BBench 1.01)も実行したところ、満充電の状態から残り5%で休止状態に移行するまで5時間50分動作した。バッテリー駆動時間の公称値は約8時間とされている。タブレットとしてみるとやや短めだが、それでも実用になる水準はクリアしている。

 動作音についてはほとんど気にならない。低負荷でも耳を近づけるとファンはかなり回っていることが分かるが、音自体は静かで、高負荷時もそれほど大きくはならない。発熱は排気口付近を中心に熱を持つ。動画再生くらいであれば気にならないが、ベンチマークテストなどで高負荷をかけると左上のSONYロゴがある辺りとその裏面は持ち続けるのがつらいレベルまで高温になる。もっとも、この辺りを持たなければ特に影響はなく、位置的に通常利用で持つ必要もないので大きな問題ではないだろう。

左から、動作音テスト、発熱テストの結果

ベンチマークテストの概要

  • パフォーマンステスト
    • Windowsエクスペリエンスインデックス(PC総合評価)
    • CINEBENCH R11.5(CPU性能評価)
    • Crystal Disk Mark 3.0.1(ストレージ性能評価)
    • PCMark 7 1.4.0(PC総合評価)
    • 3DMark 1.1.0(3D性能評価)
    • FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編(3D性能評価)

※Windows 8の電源プランは「高パフォーマンス」に設定

  • バッテリー駆動時間テスト
    • BBench 1.01

※電源プラン「バランス」+輝度40%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 10を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測

  • 騒音テスト
    • 騒音計で実測(本体から手前5センチ、暗騒音32デシベル、室温27度)
  • 発熱テスト
    • 放射温度計でボディ表面温度を実測(室温27度)

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