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「VAIO Tap 11」の直販ハイエンド構成と店頭モデルを徹底比較するVAIO Tap 11をもっと知りたい(性能検証編)(2/3 ページ)

» 2013年11月21日 12時15分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

PCMark 7のスコアはVAIO Pro 13の8〜9割程度か

VAIO Tap 11 PCMark 7のスコア

 PCMark 7は、Webブラウズからオフィス文書の編集、動画のエンコードまで、PCの用途全般をシミュレートする内容で、総合スコア(PCMark score)はPCの総合的な性能をざっくりと把握するのに有用だ。

 ただし、ストレージ性能の影響が大きいことと、インテル製CPU内蔵グラフィックスのQSV(Quick Sync Video)への最適化度合いが高いことは意識する必要がある。また、LightWeightとProductivityではタッチパネル搭載機において一部の項目で異常な値が出ており、タッチパネル非搭載機に比べて不利な傾向がある。

 テスト結果を見ると、VOMモデルは店頭モデルに比べて、総合スコアで9.3%、Creativityで12.2%、Computationで6.3%高いスコアだった。ストレージ性能の差が出やすいといっても、System storageではほとんど差がなく、またストレージの影響を受けにくいComputation(主にCPUとGPUの処理性能だが、ハードウェアエンコーダの影響も大きい)でも差が開いているため、Core i7-4610Yのメリットは感じられる。

 Core i5-4200Uを搭載したVAIO Pro 13と比較した場合、Computation、Entertainment、PCMarksと、CPU負荷が高い項目で差が大きい。VAIO Pro 13に対するそれぞれのモデルの総合スコアは、店頭モデルで81.7%、VOMモデルで89.3%だ。CPU単体の性能を計測するCINEBENCHの結果は伸びなかったが、システム全体の性能を調べるPCMark 7ではVAIO Pro 13の8〜9割程度となかなかのスコアが得られた。

3D描画のパフォーマンスはVAIO Pro 13の6割程度

 3DMarkはその名の通り、3D描画性能を計測するテストだ。Ice Stormはモバイル機器(スマートフォン、タブレット)向けでDirectX 9相当、Cloud GateはメインストリームPC(CPU内蔵GPUシステム)向けでDirectX 10相当、FireStrikeはゲーミングPC(外部GPU搭載システム)向けのテストとなっている。

 IceStormのスコアは一応掲載しているが、今のところx86 CPUを搭載したPCでは製品ごとにスコアが大きく変わり、あまり参考にはならない印象だ。ノートPCではCloud Gateを基準に見るのが適切だろう。そのCloud Gateでは、店頭モデルよりVOMモデルのほうがわずかに上だが、VAIO Pro 13との差は大きい。

 3DMark Vantageは3DMarkの2世代前のテストで、DirectX 10ベースで設計されている。Extreme、Performance、Entryの3種類のプリセットが用意されているが、当時はタブレットやモバイルノートPCなどでの動作は想定されておらず、メインストリームPC向けのPerformanceでも3DMarkのCloud Gateより負荷が大きい。ハイエンドゲームPC向けのExtremeは動作させるには処理が重すぎるためここでは省略した。

 傾向としてはやはり3DMarkと同じだが、店頭モデルとVOMモデルの差は、エントリーPC向けのEntryで3.9%、Performanceで11.3%と少しはっきりしている。

VAIO Tap 11VAIO Tap 11 3DMarkのスコア(グラフ=左)。VAIO Pro 13はICE Storm、Cloud Gateのみ計測。3DMark Vantageのスコア(グラフ=右)

 そのほか、FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編とストリートファイターIVベンチマークを実施した。前者は3DMarkと同様にVOMモデルが少し高い程度、後者ではわずかだが店頭モデルがVOMモデルを逆転するスコアだった。いずれもVAIO Pro 13との差は開いている。

VAIO Tap 11VAIO Tap 11 FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコア(グラフ=左)。ストリートファイターIVベンチマークのスコア(グラフ=右)

第4世代Core Yシリーズの性能をどう評価すべきか

 以上のように、パフォーマンステストではスペックから想像するスコアと異なる傾向が散見された。9.9ミリ厚、約780グラムという薄型軽量ボディを実現しつつ、Atom搭載のWindowsタブレットを大きく上回るパフォーマンスを確保しているのは確かだが、第4世代Core搭載Ultrabookに近い性能までは期待できない。

 特にVOMモデル搭載のCore i7-4610Yは最大2.9GHzで動作する第4世代CoreとしてはCPU性能のスコアが伸びず、店頭モデルのCore i5-4210Yにしてもスペックの割に少し物足りない印象を受けた。この理由はSDP(Scenario Design Power)という新しい電力指標とTurbo Boost 2.0にあると思われる。

VAIO Tap 11 インテルの第4世代Core Yシリーズは新しい電力指標のSDPを採用し、高性能かつ薄くて軽いWindowsタブレットの実現を後押ししている

 VAIO Tap 11が採用する第4世代Core Yシリーズは、熱設計の目安としてのTDP(熱設計電力)は11.5ワットだが、2 in 1デバイス向けにSDPという指標が新たに導入されている。これはいわゆるタブレットモードでの使用シーンを想定した電力指標で、Core i5-4210Y、Core i7-4610Yとも6ワットだ。VAIO Tap 11はこのSDPをベースに電力管理を行なっているのだろう。つまり、Turbo Boost 2.0におけるクロック制御の基準にSDPを使っているということだ。

 インテルのTurbo Boost 2.0対応CPUは、システムに高い負荷がかかった際、電力、温度などが「安全な範囲内」において動作クロックを上げることで高速に処理を行う。上限クロックはCore i5-4210Yが1.9GHz、Core i7-4610Yが2.9GHzだ。TDPが11.5ワットのCPUに対して6ワットを電力管理の基準に設定すれば、Turbo Boost 2.0の前提である「安全な範囲内」はかなり狭くなり、クロックの上昇時間が短いことは容易に想像できる。

 実際、CINEBENCHのレンダリングテスト中にCPUクロックをモニタリングしてみると、一度はそれぞれの上限近くまで上がるが、すぐに下がってしまい、ほとんど基本クロックに近い1.5GHz前後でしか動作していなかった。これではCore i5-4210Y搭載機とCore i7-4610Y搭載機で性能差がほとんどなくても不思議はない。

 総じて今回テストしたVAIO Tap 11は、どちらも薄型軽量タブレットとして優れたパフォーマンスといえる。ただし、Turbo Boost 2.0の上限クロックが発揮できるシーンは、上位の第4世代Core Uシリーズに比べてごく限られている点は覚えておきたい。

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