QH55/Mが採用するBay Trail-TことAtom Z3770(1.46GHz/最大2.39GHz)は、先代のQH55/Jが搭載していたClover TrailことAtom Z2760(1.5GHz/最大1.8GHz)から、どれくらい性能が向上しているのか気になるところだ。ここからは各種ベンチマークテストのスコアを見ていこう。
QH55/Mの基本スペックは、Atom Z3770(1.46GHz/最大2.39GHz)、Intel HD Graphics、4Gバイトメモリ(2Gバイト×2でデュアルチャンネル対応、LPDDR3-1066)、64GバイトSSD(eMMC)、32ビット版Windows 8.1という構成だ。一部のスコアは過去に計測したQH55/Jや11.6型Windowsタブレッド「VAIO Tap 11」店頭モデル(SVT11218DJB)の結果と比較した。
CINEBENCH R11.5のCPUスコアは1.27ptだった。Core i5-4210Yを搭載するVAIO Tap 11店頭モデルに対して約82%のスコアだ。QH55/Jではあまりにも時間がかかりすぎて実行を諦めるほどだったので、Yシリーズとはいえ、Core i5と比較できるスコアが出ているだけでもAtomとしては画期的といえる。ただし、シングルスレッドのみで処理を行なうCPU(シングルコア)は非常に長い時間がかかるうえに停止してしまうことがあり、計測できなかった。
CrystalDiskMarkでのストレージ性能については、タブレットで標準的なeMMCを採用していることもあり、PCに使われるSerial ATA SSDと差が開いている。QH55/Jと比較した場合、シーケンシャルのリード/ライト性能は少しよくなった程度だが、ランダム性能はリード/ライトともに向上した。
PCMark 7の総合スコアは2060で、VAIO Tap 11店頭モデルに対して約56%と大きく落ち込んだ。これはストレージ性能も影響しているだろう。QH55/MのスコアはWindows 8環境でPCMark 7のリビジョンが1.0.4と古い(1.4.0よりもWindows 8環境では少しよいスコアが出る)が、それと比べても約46%よいスコアとなった。
3DMarkのスコアは、Cloud GateでVAIO Tap 11店頭モデルの半分以下となるが、それでもまともに実行できるのだから、Bay Trail-Tにおけるグラフィックス性能の進化は大きい。
なお、Windows 8.1を搭載しているのでWindowsエクスペリエンスインデックス機能はないが、スコアの元になっているWinSATの実行結果も掲載しておく。Atom Z2760搭載のQH55/Jに比べて、CPU性能は基本的に2倍以上、暗号化処理ではさらに飛躍的なスコアの伸びが見られる。メモリ、描画性能も2〜3倍、ストレージ性能も3倍以上のスコアが出た。
このスコアの差は、実際に使ったときの快適さに反映されている。日常的な操作において、処理が追いつかずに引っかかるような感覚はなくなり、QH55/Jでは多少モタつきが見られたOfficeアプリの挙動などもかなり軽快になった。
WinSATのスコア | ||
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テスト項目 | ARROWS Tab QH55/M | ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J |
CPU LZW圧縮 (MB/s) | 167.98 | 70.65 |
CPU AES256暗号化 (MB/s) | 505.79 | 23.18 |
CPU Vista圧縮 (MB/s) | 590.42 | 270.94 |
CPU SHA1ハッシュ (MB/s) | 612.43 | 211.91 |
ユニプロセッサ CPU LZW圧縮 (MB/s) | 44.42 | 26.09 |
ユニプロセッサ CPU AES256暗号化 (MB/s) | 134.89 | 7.55 |
ユニプロセッサ CPU Vista圧縮 (MB/s) | 157.14 | 94.63 |
ユニプロセッサ CPU SHA1ハッシュ (MB/s) | 163.39 | 85.45 |
メモリのパフォーマンス (MB/s) | 9985.16 | 3458.72 |
Direct 3D Batchのパフォーマンス (F/s) | 103.83 | 45.39 |
Direct 3D Alpha Blendのパフォーマンス (F/s) | 107.64 | 44.8 |
Direct 3D ALUのパフォーマンス (F/s) | 36.16 | 12.89 |
Direct 3D Texture Loadのパフォーマンス (F/s) | 34.82 | 8.35 |
Direct 3D Batchのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 |
Direct 3D AlphaBlendのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 |
Direct 3D ALUのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 |
Direct 3D Texture Loadのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 |
Direct 3D Geometryのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 |
Direct 3D Geometryのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 |
Direct 3D constant Bufferのパフォーマンス (F/s) | 0 | 0 |
ビデオメモリのスループット (MB/s) | 2746.42 | 1952.26 |
Dshowビデオエンコード時間(s) | 4.38665 | 10.30736 |
メディアファンデーションデコード時間 (s) | 0.13676 | 0.43167 |
Disk Sequential 64.0 Read (MB/s) | 168.29 | 51.33 |
Disk Random 16.0 Read (MB/s) | 67.37 | 22.31 |
液晶ディスプレイの表示を計測したところ、色温度は6432Kと、業界標準のsRGB(6500K)に近かった。ガンマ補正カーブは黒に近い暗部を除き、全体的に整っており、階調の再現性は高い。色域はsRGBに近い発色が得られているが、sRGBに比べて緑から黄色、赤の領域が広い一方、青から紫の領域が不足している。目視で黄色がわずかに強い印象を持ったのは、この色域にも関係していると思われる。最大輝度の計測値は300カンデラ/平方メートル強で、最近のタブレットとしては特に高輝度ではないが、十分な明るさだ。
Webブラウズとテキスト入力を想定したバッテリー駆動時間テスト(BBench 1.01)を実行したところ、満充電の状態から残り5%で休止状態に移行するまで8時間4分動作した。輝度を40%に固定して計測したこともあり、公称値の約15時間30分の半分近くという結果だが、Windowsタブレットとしては十分に長い駆動時間といえる。輝度や省電力設定を工夫すれば、より長時間のバッテリー駆動も可能だ。
QH55/Mはファンレス設計なので動作時に騒音は発生しない。3Dゲームなどで高い負荷をかけると、背面の下部、中央付近がかなり発熱するが、自然に横位置で持つぶんには熱い部分に触れることはなく、右端が少しじんわり温かい程度だ。画面側も背面に近いくらいの発熱があるが、長く触れているわけではないので不快な印象はない。うまく使用感を損ねずに発熱を処理しているといえる。
※Windows 8.1の電源プランは「バランス」に設定
※液晶ディスプレイは1時間以上オンにし、表示を安定させた状態で中央付近を測定
※電源プラン「バランス」+輝度40%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 11を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測
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