「ARROWS Tab QH55/M」――10.1型“2560×1600”液晶とBay Trail-Tで進化した防水Windowsタブレットを徹底検証最新タブレット速攻レビュー(3/4 ページ)

» 2013年12月10日 15時15分 公開
[鈴木雅暢,ITmedia]

実力テスト:Windows 8.1をストレスなく利用できるパフォーマンス

 QH55/Mが採用するBay Trail-TことAtom Z3770(1.46GHz/最大2.39GHz)は、先代のQH55/Jが搭載していたClover TrailことAtom Z2760(1.5GHz/最大1.8GHz)から、どれくらい性能が向上しているのか気になるところだ。ここからは各種ベンチマークテストのスコアを見ていこう。

 QH55/Mの基本スペックは、Atom Z3770(1.46GHz/最大2.39GHz)、Intel HD Graphics、4Gバイトメモリ(2Gバイト×2でデュアルチャンネル対応、LPDDR3-1066)、64GバイトSSD(eMMC)、32ビット版Windows 8.1という構成だ。一部のスコアは過去に計測したQH55/Jや11.6型Windowsタブレッド「VAIO Tap 11」店頭モデル(SVT11218DJB)の結果と比較した。

 CINEBENCH R11.5のCPUスコアは1.27ptだった。Core i5-4210Yを搭載するVAIO Tap 11店頭モデルに対して約82%のスコアだ。QH55/Jではあまりにも時間がかかりすぎて実行を諦めるほどだったので、Yシリーズとはいえ、Core i5と比較できるスコアが出ているだけでもAtomとしては画期的といえる。ただし、シングルスレッドのみで処理を行なうCPU(シングルコア)は非常に長い時間がかかるうえに停止してしまうことがあり、計測できなかった。

 CrystalDiskMarkでのストレージ性能については、タブレットで標準的なeMMCを採用していることもあり、PCに使われるSerial ATA SSDと差が開いている。QH55/Jと比較した場合、シーケンシャルのリード/ライト性能は少しよくなった程度だが、ランダム性能はリード/ライトともに向上した。

 PCMark 7の総合スコアは2060で、VAIO Tap 11店頭モデルに対して約56%と大きく落ち込んだ。これはストレージ性能も影響しているだろう。QH55/MのスコアはWindows 8環境でPCMark 7のリビジョンが1.0.4と古い(1.4.0よりもWindows 8環境では少しよいスコアが出る)が、それと比べても約46%よいスコアとなった。

 3DMarkのスコアは、Cloud GateでVAIO Tap 11店頭モデルの半分以下となるが、それでもまともに実行できるのだから、Bay Trail-Tにおけるグラフィックス性能の進化は大きい。

 なお、Windows 8.1を搭載しているのでWindowsエクスペリエンスインデックス機能はないが、スコアの元になっているWinSATの実行結果も掲載しておく。Atom Z2760搭載のQH55/Jに比べて、CPU性能は基本的に2倍以上、暗号化処理ではさらに飛躍的なスコアの伸びが見られる。メモリ、描画性能も2〜3倍、ストレージ性能も3倍以上のスコアが出た。

 このスコアの差は、実際に使ったときの快適さに反映されている。日常的な操作において、処理が追いつかずに引っかかるような感覚はなくなり、QH55/Jでは多少モタつきが見られたOfficeアプリの挙動などもかなり軽快になった。

ARROWS Tab QH55/MARROWS Tab QH55/MARROWS Tab QH55/M 左から、CINEBENCH R11.5、CrystalDiskMark 3.0.2、PCMark 7 1.4.0のスコア
ARROWS Tab QH55/MARROWS Tab QH55/M 左から3DMark 1.1.0、FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコア
WinSATのスコア
テスト項目 ARROWS Tab QH55/M ARROWS Tab Wi-Fi QH55/J
CPU LZW圧縮 (MB/s) 167.98 70.65
CPU AES256暗号化 (MB/s) 505.79 23.18
CPU Vista圧縮 (MB/s) 590.42 270.94
CPU SHA1ハッシュ (MB/s) 612.43 211.91
ユニプロセッサ CPU LZW圧縮 (MB/s) 44.42 26.09
ユニプロセッサ CPU AES256暗号化 (MB/s) 134.89 7.55
ユニプロセッサ CPU Vista圧縮 (MB/s) 157.14 94.63
ユニプロセッサ CPU SHA1ハッシュ (MB/s) 163.39 85.45
メモリのパフォーマンス (MB/s) 9985.16 3458.72
Direct 3D Batchのパフォーマンス (F/s) 103.83 45.39
Direct 3D Alpha Blendのパフォーマンス (F/s) 107.64 44.8
Direct 3D ALUのパフォーマンス (F/s) 36.16 12.89
Direct 3D Texture Loadのパフォーマンス (F/s) 34.82 8.35
Direct 3D Batchのパフォーマンス (F/s) 0 0
Direct 3D AlphaBlendのパフォーマンス (F/s) 0 0
Direct 3D ALUのパフォーマンス (F/s) 0 0
Direct 3D Texture Loadのパフォーマンス (F/s) 0 0
Direct 3D Geometryのパフォーマンス (F/s) 0 0
Direct 3D Geometryのパフォーマンス (F/s) 0 0
Direct 3D constant Bufferのパフォーマンス (F/s) 0 0
ビデオメモリのスループット (MB/s) 2746.42 1952.26
Dshowビデオエンコード時間(s) 4.38665 10.30736
メディアファンデーションデコード時間 (s) 0.13676 0.43167
Disk Sequential 64.0 Read (MB/s) 168.29 51.33
Disk Random 16.0 Read (MB/s) 67.37 22.31

 液晶ディスプレイの表示を計測したところ、色温度は6432Kと、業界標準のsRGB(6500K)に近かった。ガンマ補正カーブは黒に近い暗部を除き、全体的に整っており、階調の再現性は高い。色域はsRGBに近い発色が得られているが、sRGBに比べて緑から黄色、赤の領域が広い一方、青から紫の領域が不足している。目視で黄色がわずかに強い印象を持ったのは、この色域にも関係していると思われる。最大輝度の計測値は300カンデラ/平方メートル強で、最近のタブレットとしては特に高輝度ではないが、十分な明るさだ。

ARROWS Tab QH55/MARROWS Tab QH55/M 液晶ディスプレイの計測結果。ガンマ補正カーブを見ると、黒にごく近い暗部が少し乱れているほかは、RGBの各線がほぼ重なって直線を描いており、階調再現性は優秀といえる(画像=左)。色域は、sRGB(下に敷いたグレーの領域)から少しずれているものの、鮮やかな発色だ(画像=右)
ARROWS Tab QH55/M 発熱テストの結果

 Webブラウズとテキスト入力を想定したバッテリー駆動時間テスト(BBench 1.01)を実行したところ、満充電の状態から残り5%で休止状態に移行するまで8時間4分動作した。輝度を40%に固定して計測したこともあり、公称値の約15時間30分の半分近くという結果だが、Windowsタブレットとしては十分に長い駆動時間といえる。輝度や省電力設定を工夫すれば、より長時間のバッテリー駆動も可能だ。

 QH55/Mはファンレス設計なので動作時に騒音は発生しない。3Dゲームなどで高い負荷をかけると、背面の下部、中央付近がかなり発熱するが、自然に横位置で持つぶんには熱い部分に触れることはなく、右端が少しじんわり温かい程度だ。画面側も背面に近いくらいの発熱があるが、長く触れているわけではないので不快な印象はない。うまく使用感を損ねずに発熱を処理しているといえる。

ベンチマークテストの概要

  • パフォーマンステスト
    • CINEBENCH R11.5(CPU性能評価)
    • Crystal Disk Mark 3.0.2(ストレージ性能評価)
    • PCMark 7 1.4.0(PC総合評価)
    • 3DMark 1.1.0(3D性能評価)
    • FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編(3D性能評価)
    • WinSAT(PC総合評価)

※Windows 8.1の電源プランは「バランス」に設定

  • 液晶ディスプレイ表示品質テスト
    • i1Pro+i1Profilerでディスプレイの表示を実測し、ガンマ補正カーブを抜粋
    • i1Proが生成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、色域をsRGB(薄いグレーで重ねた領域)と比較

※液晶ディスプレイは1時間以上オンにし、表示を安定させた状態で中央付近を測定

  • バッテリー駆動時間テスト
    • BBench 1.01

※電源プラン「バランス」+輝度40%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 11を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測

  • 発熱テスト
    • 放射温度計でボディ表面温度を実測(室温22度)

富士通 ARROWS Tab Wi-Fi

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  5. QualcommがPC向けSoC「Snapdragon X Plus」を発表 CPUコアを削減しつつも圧倒的なAI処理性能は維持 搭載PCは2024年中盤に登場予定 (2024年04月25日)
  6. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  7. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  8. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  9. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
  10. AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目! (2024年04月25日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー