「ARROWS Tab QH77/M」――“Haswellでも防水”の2in1デバイスを徹底検証最新タブレット速攻レビュー(4/5 ページ)

» 2013年12月29日 18時45分 公開

実力テスト:クレードル接続時でパフォーマンスアップを確認

 QH77/Mは、第4世代Core Uシリーズ搭載機として、通常のタブレットスタイルで処理速度を抑えている一方、オプションのターボモード用拡張クレードルを接続すると、パフォーマンスが向上するというが、実際の性能がどうなっているのか気になるところだ。ここからは、各種ベンチマークテストのスコアを調べていこう。

 基本スペックは、CPUがCore i5-4200U(1.6GHz/最大2.6GHz)、グラフィックス機能がCPU内蔵のIntel HD Graphics 4400、メモリが4Gバイト(オンボードだがデュアルチャンネル対応、LPDDR3-1600)、ストレージが128GバイトSSD(mSATA)、OSが64ビット版Windows 8.1だ。

 今回は本体のみのスコアに加えて、ターボモード用拡張クレードルの試作機も入手できたので、装着時のスコアも併記した(試作機なので、テスト結果は参考として見ていただきたい)。また、QH77/Mと同じCPUを搭載した10.6型WindowsタブレッドのSurface Pro 2、Core i5-4210Y(1.5GHz/最大1.9GHz)を備えた11.6型Windowsタブレッド「VAIO Tap 11」店頭モデル(SVT11218DJB)の結果とも比較している。

 CPU性能を計測するCINEBENCH R15のスコア(CPUマルチコア)は、タブレット本体のみでほぼ同スペックのSurface Pro 2に比べて約65%という結果だった。やはり、Core i5-4200U搭載機としては抑えた性能だが、Core i5-4210Y搭載のVAIO Tap 11と比較すると約17%上回っており、第4世代Core Uシリーズによる性能面での強みはある。さらにクレードル接続時はCPUマルチコアのスコアが約24%向上し、Surface Pro 2の8割程度まで近づいた。前バージョンのCINEBENCH R11.5も同じ傾向だが、クレードル接続時の性能上昇幅は小さい結果だ。

 QH77/MはストレージにSerial ATA 6Gbps対応のmSATA SSDを採用し、今回の評価機はSamsung製「MZMTD128HAFV」を内蔵していた。ストレージ性能を調べるテストのCrystalDiskMarkでは、CPUなど他のスペックがスコアに影響しにくいこともあり、QH77/Mがリード速度でSurface Pro 2を上回り、トップに立った。シーケンシャルライトとランダム512Kライトでは後れをとっているが、Atom Z3000シリーズ搭載タブレットが内蔵しているeMMCとは段違いの速さだ。

左から、CINEBENCH R15、CINEBENCH R11.5、CrystalDiskMark 3.0.2のスコア

 システム全体の性能を評価するPCMark 7のスコアもCINEBENCHと似た傾向だが、このテストではクレードル接続時の性能向上が見られなかった(数回テストしても同様の結果)。クレードルがタブレットの放熱を強化するとはいえ、外気を積極的に吸い込んで送り込んでも、本体の厚さは11.9ミリに限られ、高負荷の環境では長時間に渡って性能が向上し続けるわけではない。本体内部の発熱などの影響によって、CPUにターボがかからず、1.0GHz前後にクロックが下がるケースもある。PCMark 7はCINEBENCHや3DMarkに比べて、長時間システムに負荷がかかり続けるテストなので、性能の差が出にくかったようだ。

 一方、3Dグラフィックス性能テストの3DMarkとFF14ベンチでは、クレードル装着時にスコアが伸び、その恩恵が得られた。全体の傾向はやはりCINEBENCHに似ている。3D描画の負荷が低いゲームならばプレイ可能だが、第4世代Core Uシリーズ(Intel HD Graphics 4400)採用の標準的なUltrabookに比べて、グラフィックス性能が抑えめな点は注意していただきたい。

左から、PCMark 7 1.4.0、3DMark 1.2.250、FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコア

 液晶ディスプレイの表示を計測したところ、輝度は平均400カンデラ/平方メートル弱と明るく、色温度は平均6450KとsRGB基準の6500Kに近かった。ガンマ補正カーブは暗部から中間階調にかけて少しだけ上振れしている(実際は入力された映像信号に対して、暗めに黒が締まって表示される)が、RGBの各線が重なって直線を描いており、階調再現性は良好だ。色域はsRGBと比較して狭く、Ultrabookでは標準的な発色といえる。

 実際の見た目は、表示がかなり高輝度で、視野角も広く、グレーバランスと階調性もよいほうだが、色鮮やかさは最近の広色域パネルほどではない、といった印象だ(見比べなければ目が慣れて、十分鮮やかに感じるだろう)。

液晶ディスプレイの計測結果。ガンマ補正カーブを見ると、暗部から中間階調で少しだけ上振れしているが、RGBの各線が重なっており、階調再現性はよい(画像=左)。色域の広さを見ると、sRGB(下に敷いたグレーの領域)より狭く、ノートPCとしては標準的な発色といえる(画像=右)
バッテリー駆動時間テストの結果

 Webブラウズとテキスト入力を想定したバッテリー駆動時間テスト(BBench 1.01)も実行したところ、満充電の状態から残り5%で休止状態に移行するまで、タブレット単体で7時間15分、スリムキーボード合体時で6時間45分という結果だった。

 バッテリー駆動時間の公称値はタブレット単体で約16時間(スリムキーボード接続時で約13時間)なので、半分にも満たない結果だ。ただし、テスト時のWindows電源プランは「バランス」、輝度は40%に設定した状態で、画面が結構明るい。電源プランを「省電力」にして、輝度を下げれば、より長時間の駆動も行える。タブレットとしてみるとやや短めだが、実用レベルだろう。

 動作音については、CPUの負荷に応じてファンが細かく制御され、かなり頻繁に回転数が変わる。低負荷の状態でもアプリの起動やファイルの展開、画面の切り替わりなどでは瞬間的にファンの回転数が上がることがあり、高負荷の状態では高速回転し続けるファンの風切り音が気になった。

 ボディの発熱は、排気口のある左側面が発熱しやすく、SD動画再生くらいの負荷でも左手で持っていて、じんわり熱を感じる(ただし、右半分は熱くならない)。高負荷時は手で持てないほどではないが、左のフレーム付近の温度がかなり上がる印象だ。

 ファンの回転音とボディの発熱は、第4世代Core Uシリーズの搭載と防水・防じんを両立したことのトレードオフとなり、こうしたバランスを取るのに苦労したことがうかがえる。

左から、動作音テスト、発熱テストの結果。ちなみにクレードルを装着し、30分ほど3DMark/ICE Storm Extremeを実行し続けたところ、騒音レベルは56.5デシベル、左側面の表面温度は42度まで上昇した(室温22度)

ベンチマークテストの概要

  • パフォーマンステスト
    • CINEBENCH R15(CPU性能評価)
    • CINEBENCH R11.5(CPU性能評価)
    • Crystal Disk Mark 3.0.2(ストレージ性能評価)
    • PCMark 7 1.4.0(PC総合評価)
    • 3DMark 1.1.0(3D性能評価)
    • FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編(3D性能評価)

※Windows 8の電源プランは「バランス」に設定

  • 液晶ディスプレイ表示品質テスト
    • i1Pro+i1Profilerでディスプレイの表示を実測し、ガンマ補正カーブを抜粋
    • i1Proが生成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、色域をsRGB(薄いグレーで重ねた領域)と比較

※液晶ディスプレイは1時間以上オンにし、表示を安定させた状態で中央付近を測定

  • バッテリー駆動時間テスト
    • BBench 1.01

※電源プラン「バランス」+輝度40%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 11を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測

  • 騒音テスト
    • 騒音計で実測(本体から手前5センチ、暗騒音32デシベル、室温22度)
  • 発熱テスト
    • 放射温度計でボディ表面温度を実測(室温22度)

富士通 STYLISTIC QH

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