「VAIO Fit 11A」――11.6型“2in1”新モデルを徹底検証 Bay Trail-Mの実力は?最新PC速攻レビュー(3/4 ページ)

» 2014年01月29日 13時00分 公開
[鈴木雅暢(撮影:矢野渉),ITmedia]

実力テスト:Atom Z3770搭載機を圧倒するパフォーマンス

 ここからは各種ベンチマークテストのスコアを見てみよう。今回入手したVOMモデル(SVF11N1A1J)の基本スペックは、Pentium N3520(2.166GHz/最大2.42GHz)、Intel HD Graphics、8GバイトDDR3L-1333メモリ(デュアルチャンネル)、256GバイトSerial ATA SSD、64ビット版Windows 8.1という内容だ。

 テスト結果のグラフには参考として、以前にレビューした2013年秋冬モデルのVAIO Tap 11(Core i5-4210Y/HD Graphics 4200搭載)と、VAIO Fit 13A(Core i5-4200U/HD Graphics 4400搭載)、そして富士通のWindows 8.1タブレット「ARROWS Tab QH55/M」(Atom Z3770/HD Graphics搭載)のスコアも記載した。

 まずはVAIO Tap 11およびVAIO Fit 13Aと比較していこう。CPU処理性能を調べるCINEBENCHの結果は、CPUテストでVAIO Tap 11を上回っている一方、CPU(シングルコア)テストではVAIO Tap 11の半分程度のスコアしか出ていない。ここに双方のCPUアーキテクチャの違いがよく出ている。CINEBENCH R15のCPUスコアは、VAIO Fit 13Aの72%相当と以外に高く、実際にWindows 8.1がストレスなく操作可能だ。

VAIO Fit 11AのCrystalDiskMark 3.0.3スコア

 評価機の256GバイトSSDは、東芝製の「THNSNJ256GVNU」(M.2タイプ、接続インタフェースはSerial ATA 3Gbps)を搭載していた。ストレージ性能を計測するCrystalDiskMark 3.0.3の結果は、VAIO Tap 11とVAIO Fit 13Aのスコアより書き込み性能が優秀な一方、Serial ATA 3Gbpsのインタフェースがボトルネックになっている様子もみられ、シーケンシャルリード/ライトとも250Mバイト/秒前後にとどまる(VAIO Tap 11とVAIO Fit 13AはSerial ATA 6Gbps対応)。

 PC全体の総合評価となるPCMark 7の結果は、VAIO Tap 11の約91%、VAIO Fit 13Aの約74%に相当するスコアで、第4世代Coreとの比較でもなかなか健闘している。CreativityやEntertainementのスコアで水をあけられていることから、グラフィックス性能の差はCPU性能より大きいようだ。

 実際、3Dグラフィックス性能を計測する3DMarkとFINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコアでは、差が開いている。3DMarkのスコアは、VAIO Tap 11の約65%、VAIO Fit 13Aの約42%相当だ。

 次に、Pentium N3520と同じSilvermontアーキテクチャのAtom Z3770を搭載したARROWS Tab QH55/Mと比較しよう。CINEBENCH R11.5のCPUスコアは1.4倍で、これは素直に動作クロックの差が出たものだ。また、Atom Z3770はストレージインタフェースがeMMCのため、ストレージ性能が振るわない。これに対してはSerial ATA 3Gbpsでも決定的なアドバンテージがある。

 PCMark 7でもストレージ性能の差が大きく影響し、総合スコアでは57%上回るスコアをマークした。3DMark/Cloud Gateのスコアは28.8%勝っている。スペックを考えれば当然だが、Atom Z3770搭載タブレットに対しては完勝といえる性能だ。

左から、CINEBENCH R15、CINEBENCH R11.5、CrystalDiskMark 3.0.3(VAIO Fit 11A以外はVer.3.0.2で計測)のスコア
左から、PCMark 7 1.4.0、3DMark 1.2.250(VAIO Fit 11A以外はVer.1.1.0で計測)、FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編のスコア

 液晶ディスプレイの表示も計測したところ、IPSパネルとトリルミナスディスプレイ for mobileを採用したVAIO Fit 13Aとよく似た傾向を示した。複数回計測した色温度の平均値は6266Kと、業界標準のsRGB(6500K)よりわずかに低い程度で、色域もsRGBに近い良好な発色だ。ガンマ補正カーブの結果から、階調再現性もよい。最大輝度の実測値は400〜450カンデラ/平方メートルとかなり高く、目視でもはっきり高輝度で色鮮やかな表示が体感できる。

液晶ディスプレイの計測結果。ガンマ補正カーブを見ると、黒にごく近い暗部が少し乱れている以外、RGBの各線がほぼ重なって直線を描いており、階調再現性は良好だ(画像=左)。色域の広さを見ると、「トリルミナスディスプレイ for mobile」の採用により、sRGB(下に敷いたグレーの領域)にかなり近い色鮮やかな表示ができることが分かる(画像=右)

 Webブラウズとテキスト入力を想定したバッテリー駆動時間テスト(BBench 1.01)では、満充電の状態から残り5分で休止状態に入るまでにちょうど5時間動作した。カジュアルなモバイル利用では十分だろうが、最近のVAIOモバイルノートとしては短いほうだ。Windowsの電源プランを「省電力」に変更したり、液晶ディスプレイの輝度を下げるなどすれば、駆動時間はもっと延ばせる。

 動作音は非常に静粛だ。冷却ファンは内蔵しているが、低負荷時はほぼ無音で、高負荷時でも3DMarkを数回実行する程度では動作していることが分かる程度の音しかしない。季節的に室温が低いことを考えても優秀といえる。ボディの発熱については、底面の中央部が温まるが、手がよく触れるキーボードやパームレストまでは熱が伝わってこない。このテスト結果ならば、暑い時期でもパームレストが不快な熱を帯びることはなさそうだ。

左から、動作音テスト、発熱テストの結果

ベンチマークテストの概要

  • パフォーマンステスト
    • CINEBENCH R15(CPU性能評価)
    • CINEBENCH R11.5(CPU性能評価)
    • Crystal Disk Mark 3.0.3(ストレージ性能評価)
    • PCMark 7 1.4.0(PC総合評価)
    • 3DMark 1.2.250(3D性能評価)
    • FINAL FANTASY XIV:新生エオルゼアベンチマーク キャラクター編(3D性能評価)

※Windows 8.1の電源プランは「バランス」、「VAIOの設定」にあるCPUとファンの動作モードは「標準」に設定、すべてキーボードモードで測定

  • 液晶ディスプレイ表示品質テスト
    • i1Pro+i1Profilerでディスプレイの表示を実測し、ガンマ補正カーブを抜粋
    • i1Proが生成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、色域をsRGB(薄いグレーで重ねた領域)と比較

※液晶ディスプレイは1時間以上オンにし、表示を安定させた状態で中央付近を測定

  • バッテリー駆動時間テスト
    • BBench 1.01

※電源プラン「バランス」+輝度40%固定+無線LAN接続+Bluetoothオン。BBench 1.01(海人氏・作)にて「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」と「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 11を指定し、タブブラウズはオフ。満充電の状態からバッテリー残量が残量5%で自動的に休止状態へ移行するまでの時間を計測

  • 騒音テスト
    • 騒音計で実測(本体から手前5センチ、暗騒音32デシベル、室温19度)
  • 発熱テスト
    • 放射温度計でボディ表面温度を実測(室温19度)


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