ビットコインの仕組みとMt.Goxの事件――仮想通貨に未来はあるか信用できる? できない?(5/5 ページ)

» 2014年03月12日 09時30分 公開
[瓜生聖,ITmedia]
前のページへ 1|2|3|4|5       

信用できる? できない?

 結局のところ、ビットコインが信用できるのかどうかを簡潔に述べると、「流通システムとしては現時点では信用できる。ただし、貨幣価値は不安定であり、信用できない取引所もある」ということになるだろうか。

 ここでいう「流通システム」は、一般にはあまりにも当たり前すぎて「そこを議論していたの?」と驚くくらいのレベルかもしれない。それは例えば、「送金したお金が途中でなくなったりしない」とか、「パスワードを知らない他人が勝手に自分の財布からお金を抜き出したりしない」とか、そういったレベルだ。

 また、中央機関・公的機関が入っていない以上、そこでのプレイヤーはすべて「勝手にやっている人たち」だ。マイナーは手数料や新規発行のビットコインを目当てに承認作業を行っているし、取引所を立ち上げるにも金融庁等の認可は必要なく、トレーディングカードの取引所と実質的な違いはない。事実、Mt.Goxはビットコイン以前はカードゲーム「Magic the Gathering」のオンライントレーディングカード取引所だった。

 このような貨幣をとりまく複数の要素(流通システム、貨幣価値、プレイヤー、法整備など)を混同して「あやしい」とされているのが現状ではないだろうか。

 大石氏は今回の取材で次のように語っている。

「“ビットコインは詐欺商品”という見方をする人もいるが、それはプロトコルとビジネスプレイヤーを混同しているためだ。ビットコインの仕組み自体はあやしいものではない。とはいえ、取引所などのプレイヤーにうさんくさい業者がいるのも事実。そこがもっと健全化されないとビットコイン自体のイメージは向上しないだろう。また、投機的な注目を浴びた件も同様で、投資プレイヤーが健全であることも非常に大事。流動性を保つために投資家は必要だ」(大石氏)。

 中央機関を持たないビットコインのプロトコルは、低額な手数料を実現する画期的なものであることは間違いない。しかし、それを信頼できるものとして利用するには力不足なプレイヤーが多すぎる、というのが現状のようだ。

 ビットコインに関する一連の事件はまだ収束を見ていないが、そこを正しく認識したうえで、過剰に反応することがないようにしたい。ビットコインのみならず、オープンソース発の仮想通貨の未来が、誤った知識による社会的な不安を反映させる形で法的に潰されたり、停滞することもありうるのだから。

前のページへ 1|2|3|4|5       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2024年04月26日 更新
  1. ワコムが有機ELペンタブレットをついに投入! 「Wacom Movink 13」は約420gの軽量モデルだ (2024年04月24日)
  2. わずか237gとスマホ並みに軽いモバイルディスプレイ! ユニークの10.5型「UQ-PM10FHDNT-GL」を試す (2024年04月25日)
  3. 「社長室と役員室はなくしました」 価値共創領域に挑戦する日本IBM 山口社長のこだわり (2024年04月24日)
  4. 「Surface Go」が“タフブック”みたいになる耐衝撃ケース サンワサプライから登場 (2024年04月24日)
  5. QualcommがPC向けSoC「Snapdragon X Plus」を発表 CPUコアを削減しつつも圧倒的なAI処理性能は維持 搭載PCは2024年中盤に登場予定 (2024年04月25日)
  6. 16.3型の折りたたみノートPC「Thinkpad X1 Fold」は“大画面タブレット”として大きな価値あり (2024年04月24日)
  7. あなたのPCのWindows 10/11の「ライセンス」はどうなっている? 調べる方法をチェック! (2023年10月20日)
  8. アドバンテック、第14世代Coreプロセッサを採用した産業向けシングルボードPC (2024年04月24日)
  9. AI PC時代の製品選び 展示会「第33回 Japan IT Week 春」で目にしたもの AI活用やDX化を推進したい企業は要注目! (2024年04月25日)
  10. ロジクール、“プロ仕様”をうたった60%レイアウト採用ワイヤレスゲーミングキーボード (2024年04月24日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー