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「UPS」を正しく選ぶコツ――容量の計算方法は? 給電方式とは?SOHO/中小企業に効く「UPS」の選び方(第2回)(2/3 ページ)

» 2014年03月28日 10時45分 公開
[山口真弘,ITmedia]

給電方式と出力波形を正しく選ぶ

 ここまで紹介した手順で目的のUPSはおおむね選定できるはずだが、あと2つの条件を追加すれば、さらに正確に候補となる機種を絞り込める。その条件とは「給電方式(運転方式)」と「出力波形」だ。

 UPSの給電方式には「常時商用」「ラインインタラクティブ」「常時インバーター」の3種類があり、さらに出力波形は「正弦波(せいげんは)」と「矩形波(くけいは)」の2種類に分かれる。この方式の多さ、用語の耳慣れなさがUPSを選びにくくしている一因なのは間違いない。技術的な話は下の図をご覧いただくとして、ここでは選び方を中心に説明する。

 まず給電方式だが、3つの選択肢のうち、常時インバーター方式はデータセンターなどで使われる大規模な方式なので、本連載でターゲットとするSOHOや中小企業の環境ではひとまず除外する。残る選択肢は2つだが、停電時のバックアップ時間確保に加えて電圧を安定させる機能が必要ならばラインインタラクティブ、特に必要がなく停電への備えだけでよければ常時商用というのが結論だ。価格については、プラスアルファの機能があることからも明らかだが、ラインインタラクティブのほうが高価だ。

 出力波形は正弦波と矩形波のどちらを選ぶかだが、現在多くのPCやNASが採用しているPFC(力率改善)回路搭載の電源(PFC電源)は矩形波に対応しないとされるので、PCやNASを接続する場合は正弦波を選ぶのが望ましい。実際には矩形波でも問題なく動作するケースも多いのだが、いかんせん実機で検証しない限り分からないので、メーカー側としては非対応とせざるを得ない事情がある。

 買う側としても、せっかく容量の計算をしてまで購入しておきながら、停電時にUPS駆動に切り替わった瞬間にシャットダウンされてしまうのでは意味がない。あらかじめ実機での動作確認が取れていれば別だが、機器構成の中にPCやNASが含まれている場合は正弦波の製品を選ぶようにしよう。ちなみにラインインタラクティブはすべて正弦波なので、正弦波か矩形波かを考慮する必要はない。

APCブランドのUPS製品ラインアップ。「常時商用」はSOHOや小規模ネットワーク向け、「ラインインタラクティブ」はPCに加えてLAN/WAN機器なども含む主に中小企業向け、「常時インバーター」は高い信頼性が要求されるサーバなど、中〜大規模システムやデータセンターでの利用を想定している
APCのUPS製品情報より常時商用給電方式の例。オフライン方式やスタンバイ方式とも言われる。通常時は商用電源(コンセントからの電源)のAC(交流電流)を、サージ抑制器、フィルターを経由し、負荷機器(UPSに接続してバックアップしている機器のこと)に出力する。電源障害時はスイッチが切り替わり、UPSの内蔵バッテリーから負荷機器に電力が供給される。バッテリーから出力されるのはDC(直流電流)なので、インバーターでACに変換してから負荷に出力される仕組みだ
APCのUPS製品情報よりラインインタラクティブ給電方式の例。常時商用と常時インバーターの中間レベルに位置する。通常運転時はサージ抑制器、フィルター、インバーターを経由して負荷機器にACを供給し、電源障害時やフィルターで除去できない電圧波形の侵入時になると、バッテリー運転に切り替わる。通常運転時にもインバーターを経由するため、切り替え時間が常時商用より短い。通常時にインバーターを利用してバッテリーを充電するため、充電器が不要となり、回路がシンプルになっている
APCのUPS製品情報より常時インバーター給電方式の例。オンライン方式とも呼ばれる。インバーターを2つ搭載するのが特徴だ。通常時は商用電源のACをインバーター経由でDCに変換し、再度インバーターを経由してACに変換してから負荷機器に電力を供給する。2つのインバーターの間にはバッテリーが配置され、常に充電される仕組みだ。常にバッテリーに通電しているため、電源障害時にバッテリーからの出力へ切り替える際、瞬断が発生しない
UPSの給電方式
給電方式 常時商用 ラインインタラクティブ 常時インバータ
メリット 小型・軽量、低コスト、通常時の消費電力が低い 高機能だが比較的小型で低コスト、通常時の消費電力が低め、電圧調整機能がある、出力は正弦波 切り替え時に瞬断が発生しない、電圧・周波数は常に一定、ノイズやサージの吸収効果が高い、出力は正弦波
デメリット 切り替え時に瞬断が発生、設定範囲内の電圧変動は補正しない、矩形波のものが多い 切り替え時に瞬断が発生(常時商用と比較して短い) 比較的大型で高コスト、通常時に電力ロスが発生し、消費電力が高め
出力波形の違い。正弦波は制御が複雑で高コストになりやすいが、コンセントからの商用電源と波形が近いため、幅広い機器で利用できる。矩形波タイプは制御が比較的容易で低コストだが、商用電源と波形が異なり、高調波でノイズが乗っているため、PFC回路搭載のPCやNASなど、精度が求められる機器では利用できない

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