dynabook T954/89Lは、単に解像度(画素密度)が高い液晶ディスプレイを搭載しているわけではない。3840×2160ピクセル(4K)表示の15.6型ワイドIGZOディスプレイは、液晶パネルの配向にIPS方式を採用し、広視野角を実現している。
さらに製造工程で1台ずつ個別に色調整を行い、ハリウッド映画などに採用されているTechnicolorの基準色に最適化するという手の込みようだ。出荷前の個別色調整はdynabook KIRAでも行われていたが、dynabook T954/89Lではそこから1歩進んで、Technicolorの認証を得た色調整がなされている。
Technicolorの簡易カラーマネジメントツールである「Chroma Tune for TOSHIBA」もインストール済みだ。これは使用するアプリケーションや作業環境に合わせて、色温度やガンマを変化させるユーティリティで、Technicolor(出荷時基準色)、Cool(色温度高め/ガンマ2.2)、Warm(色温度低め/ガンマ2.2)、Rec.709(HDTV規格/ガンマ2.4)、Full(ガンマ補正なし)の5つのモードから選択可能だ。
表示色は約1677万色、リフレッシュレートは60Hz(HDMI出力による4K表示は30Hz)に対応する。色調整済みで出荷されることもあり、カラーやモノクロのグラデーション表示は自然だ。色域のスペックは非公開だが、後述する測定結果ではsRGBに近かった。写真編集などの用途を考えると、Chroma TuneにHD動画向けのRec.709だけではなく、欲をいえば、sRGBの設定も用意してほしかったところだ。
ちなみにディスプレイの表面は光沢処理で発色が良好な半面、映り込みは発生する。また、LEDバックライトはノートPC用のエッジライト方式なので、画面端には輝度ムラも散見される。この辺りはさすがに外付けの高品位なディスプレイと同じユニフォミティ(表示均一性)というわけにはいかないが、通常の利用では気にならないレベルだろう。
エックスライトのカラーキャリブレーションセンサー「i1Pro」とソフトウェア「i1Profiler」を使用し、実機のガンマ特性と色域を確認してみた。測定時のディスプレイ設定はTechnicolorモードだが、i1Profilerでの測定前にChroma Tuneによる色設定はリセットされるため、どのモードでも結果は変わらなかった。
まずはガンマ特性だが、測定結果に表示されるRGBのガンマ補正カーブが3本とも重なり、入力と出力が1:1の関係、グラフでいえば右上がりの直線になるのが望ましい。結果はノートPCの液晶ディスプレイとしては良好だ。中間階調が少し下向きに補正され、青がわずかに離れているが、RGBの3本線がほぼ重なって直線を描いており、目視での自然な階調表現を裏付ける結果となった。
複数回計測した最大輝度は約330カンデラ/平方メートル、色温度は約6700Kという計測値で、明るく色温度も標準的な6500Kに近い。
この計測で作成したICCプロファイルをMac OS XのColorSyncユーティリティで表示し、色域を確認した。色の付いた部分がdynabook T954/89Lのディスプレイで再現できる色の範囲で、薄いグレーの部分がsRGB規格の色域だ。結果を見ると、緑と赤の色域が少し足りないが、全体としてsRGBに近い色域を確保しており、ほとんどsRGB相当の発色といえる。カラーマネジメントに配慮したディスプレイとはいえ、さすがにAdobe RGBの広色域まではカバーしていない。
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